ファンタジーの世界というのは、この現実の世界と全くの別世界なのではなく、現実の世界と密接な繋がりをもって存在している。この世界がなくては、ファンタジーの世界は存在し得ない。
 だからファンタジーがファンタジーとして完結したお話というのは、本当はあり得ないのかもしれないね。いくら独立させようとしたって、ファンタジーは必ずこの現実の世界とのつながりを持とうとするはずだからね。本の中でそのつながりを示唆しない場合、つまりファンタジーをファンタジーのままで完結させたお話の場合、読み手が自分で現実の世界とのつながりを紡ぎあげていかなければいけない。書き手は、自分の中で明確にみえているその紡ぎ方を、つい読者に提示したくなってしまうのではないかな。それは、書き手にとってそのファンタジーが存在する根拠、つまり書き手にとって、一番伝えたい大切なことだと思うからね。書き手がそれを書かずに終えることは、とても勇気のいることなんだろうと思う。読み手を信じていないと、できないことだから。


 ファンタジーは、読み手が現実の世界でしっかりと実在していればいるほど、生き生きと呼吸を始める。
そしてね、ファンタジーを楽しむ人達も、ファンタジーの世界の存在によって、現実の世界をより生き生きと生活できるんだと思うな。

 私だってファンタジーが好きだけれど、だからといって空想癖があるわけではない。ロマンチストでもない。おそろしく現実的だと思う。それでも、ファンタジーが好き。