E-娘(13歳) & R-息子(10歳) & S-say-umi

8月の本棚

6,7,8月とたくさんの本が我が家を出入りしました。あまりにも多すぎて紹介しきれないので、記憶に残る数冊のみのご紹介です。
 ここ一ヶ月、息子は『シェーラひめのぼうけん』シリーズに夢中でした。図書館で借りられる限界の10冊をすべてこのシリーズで揃えてくるほどの入れ込みよう。今は『椋鳩十まるごとどうぶつ物語』シリーズに夢中です。息子の場合、今までも様々なシリーズものをはじから制覇していく読み方が多いのです。他には、以前借りてきたときには結局読まずに終わった『月神の統べる森で』シリーズをが再び借りてきたのをきっかけに読み始め、「めちゃくちゃ面白かった!」と全巻一気に読み終えました。このシリーズは我が家の人気本、我が家では、めずらしく3人揃って大絶賛です。
 一方のも相変わらずで、動物の出てくる読みやすい本を選んで借りてきます。息子の読む『シェーラひめのぼうけん』シリーズには批判的で、「私、読もうと思ったけれどダメだった。なんだか文章がセリフばかりだし、幼稚園の子が読む絵本みたいなのよ。」とのこと。でも、息子の強力な勧めに応じて、私も読んでみることにします。

月神の統べる森で E
作/たつみや章・絵/東逸子(講談社)
 全四巻のこの大作は、縄文から弥生期へと移行していく日本を舞台に、少年が大人へと成長していくものがたりです。焦りや思い上がり、大人になる過程で誰もが経験するであろう感情をもつ少年に、読む者が感情移入することは容易である。少年に心を重ねて読み進むうちに、読者は、この地に人として生きることの意味を深く問わずにはいられない。さらに、少年が生きたその物語が、最終巻の『裔を継ぐ者』において、次世代に生きる少年へと繋がっていくとき、自らの生きた物語が時空を超えて再び生きる感動を味わうことになる。この世に生きるということは、確実に未来へとバトンを渡していくことであり、何者であっても、過去と無関係に生きることも、未来と無関係に生きることもできないのだ。それを知ることこそが、生きる理由、生きる道を決める起点となるのだろう。

 たつみや章の作品は、どれもが作者自身の強い意図を感じさせる。この作品も例外ではない。物質的な豊かさに反して心の豊かさを失い、生きる支えを欠き、よりどころのない不安定な現代に生きる少年たちに、日本人の古くから持つ自然観や信仰心を正面から投げかけてきた作者の意図は、正確に的を射ている。自らの根元をたどることは、自らの未来が見えない現代に生きるには、非常に強い原動力となるにちがいない。

茂吉のねこ E
作/松谷みよ子・絵/辻司(ポプラ社)
 茂吉のねこは、おばけたちの使い走りをしている。茂吉はそれを知り、ねこをさりげなく救ってやる。
 たったそれだけの話なのに、なぜこれほどまでに惹かれるのでしょうか。実は、この絵本は、娘も私も大好きなのです。きっと茂吉は、私たち親子にとって、あこがれの父親像
なのでしょう。頼りがいのある一家の主、たとえ飲んべえだろうが働かなかろうが関係ない、愛情すらも感じさせないさっぱりとした男親なのだと思います。
 残念ながら私には、茂吉のように、ねこを連れ帰ることはできません。母親は、ねこと一緒に泥沼に入り込み、一緒にもがくことしかできないのです。