E-イブ(12歳) & R-リック(9歳) & S-say-umi

9月の本棚
ほとんどの本を借りてきたのは8月でしたが、8月に私が読めたのは1冊のみでした。今月はずいぶん読めたので嬉しい反面、ページをつくるのが大変です。どこまでご紹介できることやら..。
 以前お話したかもしれませんが、漫画の『項羽と劉邦』を読み終えた後、新たに『三国志』を読み始めています。家にその手の漫画がある限り、リックは四六時中読みふけっています。何度も繰り返し読むので、一度しか読まない私とは違って細かいところまで覚えており、その記憶力には脱帽です。しかし、視力がかなり悪くなってきたし、他のことを何もやらなくなってしまうため、夏休みには『三国志』を家から追放していました。しかし9月に入り、また少しずつ職場から『三国志』を借りて帰るようになりました。しばらくの間、リックはそちらに夢中になることでしょう。もちろん私も、通勤電車は『三国志』三昧です。

アルプスの猛犬 選者
作・椋鳩十 (ポプラ社)
 「ね、面白いでしょう?」リックが何度も私に確認をしていました。感動を分かち合いたかったようです。動物の世界はなぜこども達に感動を与えるのでしょう。それは、生きる厳しさの中に、命の燃える美しさをも見せてくれるからのように思います。本の中の動物の命は、共感するこども達にとって、同時に自分自身の命の美しさにも感じられるはずです。
 先日、リックはおばあちゃんといっしょに本屋さんへ行き、好きな本を買ってあげると言われて『シートン動物記』を選びました。動物の本を選ぶとき、椋鳩十とシートンの作品ならば間違いありません。

夜の神話 選者
作・たつみや章 絵・かなり泰三(講談社)
 題名に惹かれたのでしょうか。リックは大量にたつみや章さんの作品を借りてきました。しかし読んではおらず、自分で借りる本がみつからなかったイブがもっぱら読んでいるようです。
 『夜の神話』という題名とその装幀から、深刻で静かな物語を想像しましたが、テーマは深刻なのに実際にはとてもテンポのよい現代っ子向けファンタジーです。時は現代、都会っ子である少年が突然理由もわからず田舎に引っ越しをさせられるところからお話は始まります。主人公が新しい環境へ送り込まれ、そこから思いがけないファンタジーが始まるのはよくあるパターンで、『千と千尋の神隠し』を始めとして古くはあの『ナルニア国ものがたり』でも同様の始まりです。結果はわかりきっているのでたいくつかしらんと思ったのも束の間、原子力発電所に勤める父親とその友人が登場することによって、ピリリとお話が引き締まりました。
 人類は太陽を手に入れたかに思えたけれど、実は手に負えない代物であることに気がつきつつある現代。進み始めた時代は加速度を増し、戻るに戻れない薄気味悪さを人はみな見て見ないふりしている。でも、実は人ごとではないこと、未来は自分自身で変えていくのだということを明確にこの本は教えてくれます。過去に戻ることはできない、先に進むしかない、でもその進む道を人はまだ見いだせずにいます。作者のもつ強い未来への思いが、こども達へのメッセージが、生き生きと伝わってきました。

オーロラのひみつ 選者
文・上田洋介 絵・つだかつみ(偕成社)
 これは大人でも面白い。オーロラを研究する作者が、自分の体験を通してオーロラについて語っている。だからオーロラについての科学本というよりは、作者によるオーロラへのラブレターのようなものだ。彼のオーロラへの熱い思いは半端でなく、読んでいるとこちらまでがときめいてくるほどです。多くの研究者達が、こんな風に研究に打ち込んでいるとしたら、本当にステキなことだと思いました。もちろん科学的にも充実した内容であり、この本が書かれた時点で最新の研究結果も載っています。
 小学校高学年から中学生あたりでこの本に出会えたら本当に幸せです。自分の将来を夢多きものとしてシミュレーションするのに、きっと役立つことでしょう。

 リックは一言、「北極か南極に行きたいなぁ」。私も誰かさんと「オーロラ見に行きたいね。」とよく言いあったものでした。こうなったら、リックと行くかなぁ。(これまたふられちゃいそうですが...!)

流星と火球と隕石と 選者
文・H.R.ポベンマイヤー 訳・河越彰彦、渡部潤一 他(地人書館)
 こちらは星が好きな人向けの本です。リックが科学本を借りてくることはあまりないのですが、この本は「ママが読んで、あとで教えてもらう」ために借りてきたそうです。というのも、先日、本物の火球を見たからです。言われるがままに読んでみましたが、星に疎い私には少々本格的すぎました。しかし、星が好きな人だったならば、具体的に星空を観察するときに必要なことが事細かに書かれており、大変面白く読めるのみならず、参考書にもなりうると思います。
 あなたの家の小さい天文学者さんに、生涯を通しての友となりうる一冊だと思います。(中高校生以降向きです)

化石 過去の生物の探求 選者
文・増田孝一郎 (評論社)
 こちらも化石に興味をもった小学校高学年から中学生向き以上の科学本です。以前にもご紹介して、後でも紹介する『きょうりゅうたんけんたい』シリーズとともに借りてきました。2冊は見かけも内容も、ずいぶんと違いがありますが、リックはどちらも楽しんでいる様子。子どもと大人の間にある不安定な時期なのでしょうが、見ている私は面白いです。

4年生のきょうりゅうたんけん隊
きょうりゅうだって病気になる 選者
文・たかし・よいち 絵・小泉澄夫 (理論社)
 リックがずっと読み続けているきょうりゅうたんけん隊シリーズの4年生版。きょうりゅうの謎について、発掘の歴史や論争の経過などが物語で紹介されています。読んでいてわくわくするのは上で紹介しているオーロラのひみつ同様で、どちらも研究にとことんとりつかれた研究者について書かれているからだと思います。
 このような本ばかり読んでいると、研究者とはなんて面白そうな職業だろうと思ってしまいます。

ロビンソン・クルーソー 選者
作・デフォー 訳・阿部知二(岩波書店)
 夏休みの本としてリックが学校から借りてきましたが、結局夏休みに読み終えられず、9月に再び借りなおしてきました。なにしろ、この本は長編なのにもかかわらず、「寝る前に読んでもらう本」に任命されてしまったのでした。しかし、私が読んであげられる日はそうそうないし(読んでいると寝てしまうので、どうしても起きていなくてはならない時は読んであげられない)、とうとう半分も読み終えることができませんでした。
 さて、私はこの『ロビンソン・クルーソー』を小学生の頃に読んだはずです。それは、私が小学生の頃に意地で全部読んだ新潮文庫名作セットの中にきっとあったはずだと思うからです。が、例に漏れずさっぱり覚えていませんでした。そして、これほどまでにキリスト教の色濃いお話なのには驚かされました。小学生の頃、私はこの物語を読んでも、何も学ばなかったのでしょう。私も親元を飛び出し、ロビンソン・クルーソーのように無鉄砲な冒険に出、多くの成功と失敗を繰り返し、辛うじて孤島にたどりつき、なんとか命を繋ぎつつも未だにその孤島から脱出できていない人生ですから...。
 思春期を前にした子をもつ親として、今こうした本に再び出会えたのは幸せなことだと思います。自分の過去を思い返し、失敗と、そのときには成功と思えたみじめな失敗の話を子どもにすることは、良いことなのか悪いことなのかはわかりません。でも、子どもから見ていつでも成功しているようにしか見えていなかった親も、実は失敗を繰り返し、未だに成長の過程であることを知るのはもうまもなくです。親自身が身の程を知っておく必要は、十分にあると思います。

ねこが見た話 選者E
作・たかどのほうこ 絵・瓜南直子 (福音館書店)
 イブが借りてきた数少ない本の中の一冊。星新一のショートショートを彷彿させる、ちょっと不思議でトゲの隠れた短編集...。と思ったが、読み終えてみれば短編集ではなく、一匹のねこが見た世界をもとにしたひとつの物語としてちゃんと完結していた。あっぱれ。

Background photo: Portulaca grandiflora(まつばぼたん2003.9.8ベランダにて