E-イブ(12歳) & R-リック(9歳) & S-say-umi

8月の本棚
久しぶりにこのページをつくることができました。お休みしている間にイブは12歳となり、あと1日で小学校生活最後の夏休みも終わりをむかえます。
 イブはこのところ借りる本、読みたい本がみつからないそうで、先日はたった3冊しか借りてきませんでした。そのうちの一冊はクッキーづくりの本です。
 リックは相変わらずたくさんの本を読破しています。最近借りる本には、狼にまつわるものが多くみられます。以前、イブにもその類の本ばかり借りてきた時期がありました。狼、野生犬は群れで生活します。群れの強い団結と力強い父性。掟と戦い、生き抜く力。現代の家族が失いつつあるものでしょうか。思春期を前にして、彼らの目は厳しさを求めているようにも思えます。心の旅立ちは、すでに始まっているのでしょう。

太陽の牙 選者
作/浜たかや 絵/建石修志 (偕成社)
 鉄の山を守る種族とそれをとりまく種族間の確執、そこに生きる各種族の少年少女達の成長と新しい時代の幕開けを描いた躍動感溢れるファンタジー。
 ファンタジーと認識せずに読み始めた私は、狼の死によって起きる、現実には決して起こり得ない出来事に出鼻をくじかれた。もちろん、ファンタジーだと認識して読み始めたとしても同様に、あまりに唐突の出来事に後ずさりしただろう。もとより、ある本を読み始めるときに、その本に合った心構えが必要なのだとしたら、その本はきっと面白くないのだ。本は何気なく読み始めて、ごく自然に引き込まれていくべきものだ。
 しかし、この「太陽の牙」は出鼻をくじかれつつも、その後はぐんぐんと読ませてくれた。一方でこども達は出鼻をくじかれることなく、一気に読み進めたようだ。どうやら大人となった私の心が固定観念に毒され、突拍子もない出来事を受け入れるだけの柔軟さが足りなかったことこそが、出鼻をくじかれた原因だったようだ。
 逆に、私が気づかずにいて、こども達が納得いかなかったのはこの本の題名だった。「どうしてこんな簡単な題名にしたのかな。太陽の牙のことって出てくるけれど、ほんのちょっとしか書いていないよ。」と最初につぶやいたのはリック。しばらくして別の時に、イブも同様のことを言いました。
 ちなみに私は「太陽の牙」を、物語に書かれているその物自体(剣)ではなく、これまた象徴的なくびかざりの牙を言うのだと勝手に解釈していた。リックに指摘されて初めて題名の意味を考え、本を読んでしばらくたっていたその頃にはすでにそういう名の剣が登場し、その名が「太陽の牙」だったということすら覚えていなかったのだ。読み返してみると、「太陽の牙」とは単なる物としてではなく、この物語で大きなテーマとなるあることを象徴しているようだ。しかし、この本を読んだこども達に、その象徴性は理解できなかった。そもそも私ときたら理解どころではなく、まったくの問題外だったわけで、それは私たちの読む力に問題があるにしろ、もう少しわかりやすくしてくれてもよかったように思う。
 他にも、この本にはもう少しこなれればよくなるだろうに、と思いあたる部分がいくつかありました。しかし扱うテーマは十二分に興味深く、3ヶ月休んだ後の最初に紹介するにふさわしい一冊になったと思います。
 姉妹本『遠い水の伝説』を、近いうちに読んでみたいと思います。

やたら・カラス 選者E
作/ひろかわさえこ (あかね書房)
 おふざけみたいでいて、きちんとカラスの生態がわかる本。ユーモアたっぷりで楽しい。