E-娘(11歳) & R-息子(8歳) & S-say-umi(ママ)

11月の本棚
 今月の本棚は、シリーズものである「フレディ」の3冊目がある他、やはり動物好きなが選ぶだけあってどれもが動物にまつわる本です。しかし、その中でも異色だったのは「オオカミのようにやさしく」です。これは童話といえるのでしょうか。大人の小説に限りなく近い印象です。ファンタジーの要素はなく、真っ正面から現実と向き合います。また、この本は登場人物や舞台背景の説明が一切なく始まります。読み始めは、書かれていることの意味がまったくわかりません。それでも頭の片隅に疑問をおきながらがまんして読み進めると、最後にようやく意味が分かる構造になっています。が「オオカミのようにやさしく」を読み切ったことは、私にとって衝撃でした。彼女の理解力、思考力は、少しずつ子どもを離れつつあるように思います。本との関わりにおける最近のめまぐるしい成長には、驚かされます。
 なお、興味深いことに、『ジップ...』と、『オオカミ....』とは、ともにイギリスのアイルランド紛争にからむ内容となっています。

ジップはゆうれい犬? ES
作/E・リッチモント 訳/長滝谷富貴子 絵/津尾美智子 (文研出版)
 小3の息子は、この本を読んで以降「犬、飼いたい!」を連発しています。読み始めより、現実の世界とファンタジーの世界とが折混ざり、重なり、掛け合い、不思議な協奏曲を聴いているようです。最後には両者の世界がひとつとなり、大きなクライマックスへと向かいます。
 
オオカミのようにやさしく ES
作/G・クロス 訳/青海恵子(岩波書店)
 現実とはなにか。ごく普通と思われる祖母との暮らし、突拍子もない母との暮らし、まったく異なる価値観で暮らす人々に翻弄され、ごく普通の少女は混乱し、それでも自分自身を見つけていく。プラスチック爆弾、テロ、スクォッター、慣れない言葉が並ぶ中、それを現実として生きる少女がいることは、同年代のにとって衝撃だっただろう。オオカミという動物が物語にうまく絡んでいる。
 
フレディ3 ハムスター救出大作戦 ES
作/ライヒェ 訳/佐々木田鶴子 絵/しまだ・しほ(旺文社)
 危機が迫っているとき、どういう行動をおこしたらよいのか。その行動は、今まで自分が慣れ親しんだ方法ではないかもしれない。すみかが工場の建設予定地となり危機せまった野生のハムスターを救出すべく、フレディが奮闘する。
 
星のひとみ ES
作/サカリアス・トペリウス 訳/万沢まき(岩波書店)
 は同じ題名の絵本(アリス館)を何度も読んでいるので、何気なく借りてきたのでしょう。トペリウスの短編がたくさん入っています。キリスト教の精神があちこちに息づいているけれど、キリスト教徒でない私が読んでも決して鼻につくことはない。どの物語も透明な氷細工のように繊細で、この世のものとは思えぬ美しい音色がまさに聞こえてくるように感じられ、大自然の息吹に囲まれている疑似体験ができます。トペリウスの作品はどれも好きです。この機会に、おのちよさんの絵本版『星のひとみ』を、もう一度読みたくなりました。私はあの絵本の表紙の絵が大好きなのです。
 
クジラが浜にあがった朝 S
作/A.コールリッジ 訳/定松正(さ・え・ら書房)
 一人の少年が、打ち上げられたクジラを発見し、そのクジラを海にかえすまでの2日間を描いている。クジラ保護の立場から、クジラが浜に打ち上げられていた場合、どのように対処したらよいかを広く知ってもらいたいために書いた本だということです。
 私たちがそのような現場に居合わせることはまずないとは思うけれど、それらの知識は多くの人が当然のこととして知っていて良いとも思いました。
 ただ、主人公の少年が助けたいと思った一頭のクジラも、違う文化で育った別の少年であったならごちそうだと考えたかもしれないことも、こども達には伝えておきたい。
 
雨ふり横丁はいつも大さわぎ ES
作/こんのとよこ 絵/国井節(講談社)
 小さな商店街に住む猫が、ひょんなことから言葉を話せるようになる。ずいぶんと設定には無理があるものの、のんびりと暖かな人々の繋がりにはホッとさせられた。
 
アマンダ、勇気をだして! ES
作/リリアン・ムーア 訳/岡本さゆり 絵/本庄ひさ子(文研出版)
 田舎に住むネズミが都会に遊びに行った後、田舎は恐ろしいと思っていた都会ネズミのアマンダが田舎に遊びに来る。
 
ぼくは王さま S
作/寺村輝夫 絵/和田誠(理論社)
 このシリーズは私が子どもの頃に好きだったため、リクエストして借りてきてもらいました。絵本版はこども達によく読んであげていたのですが、私が幼い頃に読んだものとはなにか違う気がしていました。これを読んで納得。やはり絵本版ではなく、この「ぼくは王さま」こそが、私の好きだった王さまシリーズです。王さまはわがままで嘘もつくけれど、素直で心優しいのです。純粋なこどもの姿をよく捉えているなぁと思います。