きふみ句会抄

               第7回

 
第7回 きふみ会 1995・9・13 於 田舎茶屋 
 

天  稲光り瞬時の街はわれのもの        勝司

地  風止んで蝉の時刻の落下する        真莉子

人  名月の光こぼしてトタン穴           三椒

   何もなきことの幸せ梨をむく        智子 

   電線の雀あしふむ暑さかな         朋子

   草引きも寡黙になりて蝉時雨        波路

   手を放し駆け出し先に地蔵盆        団地

   漂いしビーチサンダル秋の海        沙世

   朝顔やあなた好みの白と紅         正修

   桟橋と一緒にゆれる五十路         幸和

   空高く雲流れ行き去りし人  
   夾竹桃うまずなほ晴れや日々 
   雨音と汽笛枕に夢の中     
   銀行の皮がはがれて夏終う
   切られゆくけやき通りの銀杏の木
   腰かけて腹タプタプと船のうえ
   電話線伝わら恋秋夜更け
   行列の先はと見れば土用餅
   わが暮しすこしつましく十三夜
      保育園送り迎える夏の実存
   鳥追いをはりめぐらせて秋の田に
   空よりのオーナメントよ赤とんぼ
   郊外に眠らぬ街や月天心
   目が醒めてクーラーのタイマ入れなおし
   黄信号つくつくぼうしにせかされる
   萩の露写りて消ゆる月の影
   老犬が日だまりに寝る今朝の秋
   人眠り月に抱かれて萩は舞う
   松たけも秋刀魚もかつおもみな旨い
   ドンとして競技大会夏の雲

席題/虫

天  幸福と納得すべし虫時雨          真莉子 

街の灯を遠くにおいて虫しぐれ       勝司
終バスを降りたところで虫の声       朋子
想いはせ寝つかれぬ夜虫の闇        智子
虫の音の日に日に増える散歩道       波路
聞きなれぬ音もまじって虫の宵       正修
一人旅虫すだく月夜かな          沙世
しのび足オーケストラの気を使い      団地
虫の音に耳かたむけて猫二匹        幸和
ソプラノもトレモロもあり虫の秋      三椒

 

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