きふみ句会抄

               第14回


「うさぎ」さんの紹介

大阪でデザイン事務所を主宰するキャリアウーマン。和歌山の自宅から毎日、大阪の事務所へ出稼ぎ。俳句のほうは、詩情豊かな、鮮烈な句で、紀三井寺、ふた月とともに、天の常連。

第14回 きふみ会 1997・1・16 於/じだい屋風
 

天  真冬野の夕焼け明日を孕みて赤      うさぎ

地  漬物を娘がほめて霙降る          波路

人  切株の雪の満月欠け始む          三椒

   釣人の竿眠らせる小春かな        ふた月

   福笹や巫子の笑顔も添えて売り       団地

   心打つ葉のなき枝に冬芽あり       かめ女

   冬岬サーファー気質帆をあげん     紀三井寺

   照れながら家族で写す初写真      こうかい

   門口の犬もあくびの淑気かな         六

   たゆたふて三が日すぎ風邪癒えり      橋丁
 

   賑わいに見え隠れする恵比寿かな      団地
   雪ぐもり蛍光色の町あかり           三椒
   東京がまた重くなる今年かな         ふた月
   焼芋や抱えて帰路の暖となる          橋丁
   ひしゃく持て立ちすくむ人冬の海       かめ女
   達郎のクリスマスソングに抱かをり           うさぎ
   足袋こはぜ慣れぬ手つきの二十歳      波路
   セメントの象やきりんや時雨くる      紀三井寺
   あゝうまい娘の彼と飲む屠蘇のあじ    こうかい
   二日酔いつもながらの三ケ日                    六
   昨日からずっとおでんを待ってをり
   突っついて海鼠の固さ確める
   踊り降りはかなく消へし霰かな
   簪のぽたぽた落ちて成人式 
   福笹の恵比寿大黒ワッハッハ
   子等去りて若菜かぞへる廚ごと
   ローソンのビルの階段おでん香
   元日やめかした話の輪に入る
   寒椿落ちゆく果ては太平洋  
   枯葉ふむ胸に小さき秘密あり   
 

席題/賀状

天  姉の手に代はりて母の賀状かな      ふた月

   「元気です」賀状にいつもはげまされ   かめ女
   年賀状薄き厚きもゴムでとめ         団地
   五つなる吾子も筆真似年賀状        うさぎ
   賀状繰り一喜一憂中学生           波路
   余りたる返信用の年賀状           三椒
   年賀状はるか彼方へ飛んで行け        六
   いちいちに顔うかべてや年賀状     紀三井寺
   古き友自筆の賀状あたたかし         橋丁
   ほほえまし工夫のあとの年賀状      こうかい


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