きふみ句会抄

               第12回



第12回 きふみ会 1996・9・26 於/じだい屋風
 

天  稲光いずこへ恋を投げつけし       うさぎ

地  あかとんぼ自転車ほどの軽さかな    紀三井寺

人  テルするよ彼のひとこと待つ電話     かめ女

   秋鯖の歯ごたえまさに律儀なり       橋丁

   ビー玉の音も飲みこむラムネかな      団地

   窓に月みんな無口なバスの客        三椒

   秋蝉を猫くわえ来て自慢顔       こうかい

   田を分けて赤きふちどり彼岸花       波路

   いがぐりの小さき実よと嘆く父       泰子

   このあたりから足ならむ鶏頭花      ふた月

   二学期の途端の自転車風をきる        六

   こんなこ言ってばかりで秋の夜半
   分け入れば鬼火のごとき彼岸花
   いちめんに黄金色めく稲田かな
   影ぼうしふと気がつけば長くなり
   穂すすきに風たわむれて銀波かな
   園児等の赤帽白帽稲を刈る
   軒下に祭の看板横たへり
   うるさくてみれんがましい秋の蝉
   黄金の棚田天まで曼珠沙華
   たぽたぽと宅急便は新酒かな 
   蜩や飛行機一丁とほりぬけ
   夜半すぎ冷えた窓から虫の声
   大家族となりし日秋彼岸
   地ビールの旨しと聞いて秋涼し
   天高し飛行機雲の涯に月
   秋暑し履かずじまひの赤い靴 
   父母の愛受けて育つや墓参り 
   もしかして夏にまぎれて生かされて
   熱燗が急に売れだす秋の夜
   手のひらにかすかな重み彼岸花 
   陸橋の花火見物の客となる 
   新米の待ちこがれたるうまし膳
 

席題/曼珠沙華

天  彼岸花水路に空の深さかな       紀三井寺

   ふり向けば呼びとめる花あり曼珠沙華   うさぎ
   またひとり友失へり曼珠沙華       ふた月
   ルーズソックス携帯電話曼珠沙華      三椒
   青き野の小さきたいまつ曼珠沙華      橋丁
   曼珠沙華手折りて狐のかんざしに      波路
   あの赤の何とも危うき曼珠沙華        六
   鮮やかな色ゆえ触れし曼珠沙華      かめ女
   降る雨にぬれて悲しい曼珠沙華     こうかい
   あぜ歩く祖父母とともに彼岸花       泰子
   まんじゅしゃげ毒々しさも自己主張     団地
 
 


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