きふみ句会抄
               第10回
記念すべき10回大会で天を獲得したのが、波路さん。
で、会員紹介は当然「波路」さん

カメラマン児玉さんの奥さん。父も俳人とか。風光明媚な和歌山磯ノ浦に住居を構えるところから、「波路」の俳号。ご主人の撮影にアシスタントで同行、紀州の野山で俳句のネタを拾っては、きふみ会に出席。



第10回 きふみ会 1996・3・14 於/じだい屋風
 

天  車椅子押して無言の花見かな        波路

地  菜の花や地酒の封を切りにけり      ふた月

人  菜の花や苦き後悔せり上がる       うさぎ

   菜の花や太平洋は群青に        紀三井寺

   寒卵ぷりっと生命盛り上がり        団地

   うす紙をそっとまとわせひな納め      橋丁

   春一番やさしさなんぞ吹きとばせ    こうかい

   春服を着つつ炬燵にもぐり込み            けやき

   寒椿見にゆく旅は苦にならず         六

   待合わす煙草二本の日向ぼこ        三椒
 

   本棚に小さな雛や一人もの
   やわらかき若布到来海遠く 
   住専を考えあぐねて残り寒
   赤一点白壁に映ゆ椿かな
   ようやくに梅かがやけ父母の家
   春さむく塾に急げし受験生
   雪ほろろランドセルごと転びし児
   トンネルに演歌のひびく花見かな
   安眠の布団ゆるがす猫の恋
   さあ来たぞ春と一緒に海に出る
   雪やまず家は棲家となりにけり
   公園の小さき靴が青き踏む
   淡雪をこっそり残し実南天
   春風についひとりごと苦笑い
   恋猫のすがたくらまし命がけ
   めだたずにはしゃがず梅のごとしに
   禁煙でイライラつのるこの春は
   ミシミシと天井裏の猫の恋
   涅槃会や眠けと歩む神のもと
   塾の子も泣いている娘も暖房車
 

席題/春一番

天  吹き荒れてあとは優しき春一番       橋丁

   旗ざおを立てて進軍春一番       こうかい
   春一番少女は一途母となり        うさぎ
   春一番制服のすそひるがえり        波路
   春一番地獄で処女に会うような        六
   春一番舞うチラシに小犬じゃれ      けやき
   埋立地砂をふくんで春一番         三椒
   恋をして恋にこがれて春一番          
   パタパタとのぼり裏向く春一番         

きふみ会へ

Home