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「疾風の末脚」。彼が菊花賞で使った上がり33.8秒と言う脚はあまりにも驚異的なものだった。 菊花賞はご 存じの通り、牡馬3冠の最後の一冠であり、距離3000Mと天皇賞・春に次ぐ長距離GTである。 それほどの 短距離をこの馬はマイル戦ほどの上がりを使って勝ったのである。 彼は3歳の時点で500KGを越す胴長の雄大な馬体を誇っていた。そしてその体から繰り出される末脚は、 デビ ュー戦の段階で古馬のような鋭さを秘めているものだった。しかし、この時点では彼をも凌ぐ名血の馬がいた のである。 その名をロイヤルタッチ。悲願のダービー馬、ウイニングチケットの弟である。 彼はこの馬と競走馬 生命の中で幾度のぶつかり合う事となった。彼が走った8レース中5レースにロイヤルタッチは出走して来てい る。 彼がロイヤルタッチと初めてぶつかったのは師走の大阪であった。レース結果をいえば、見事な完敗。 こ の時点では、完成度の違いは明らかだった。しかし、これからの数ヶ月後にはこの差はほとんどなくなってしま った。 2ヶ月後のきさらぎ賞は首差まで追い詰めたのである。その姿はGTに向けて着実に付けているように思 えるものであった。 クラシック第一段を飾る皐月賞。しかしそこには、前哨戦である弥生賞を完勝したダンスインザダークの姿はな かった。 発熱で皐月賞を回避したのである。まさかの初戦リタイアであった。 その悔しさを晴らすべく、プリンシ バルSを圧勝した彼はダービーへと駒を進める。 鞍上の武豊が八大競走の中で唯一勝っていないレースへと。 ゲートが開き、彼は絶好の位置につけた。 直線半ば早くも先頭に躍り出て万全の状態に思えた。 もうライバル・ロイヤルタ ッチも皐月賞馬・イシノサンデーも届きそうにない位置にいた。 だが、悪夢が一瞬にして彼を襲った。残り50M先にあった ものは幻想だったのだろうか。 彼の手に中には何も入ってはいなかったのである。まさしくそれは運の差としか 思えないものであった。 向かえた秋の大舞台、菊花賞。ダービーの栄冠をすんでの所で逃した武豊はこの馬の末脚に全てを賭けてい た。 最後の直線入り口でもまだ彼らは馬群の後方だった。 宿敵ロイヤルタッチ、フサイチコンコルド は、すでに抜け出し栄冠に向かって凌ぎを削っていた。 その状況からはとても勝てるなどと思う人はいなかった だろう。だが、そこからが彼らの実力の証明だった。 鞍上の武豊が見事に馬群をさばき、ダンスインザダーク はそれに応えた。 そして伝説となった末脚でライバル2頭を風のように抜き去ってゴール。それはまさに「ゴボ ウ抜き」。 最後の一冠で彼は、別次元の競馬をし、完全な勝利を収めてターフを去って行った。 |
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