バルコ強制捜査の概要

 広島県警の流川・薬研堀等飲食街特別対策推進本部は、去る平成18年5月14日午前2時ごろ、流川で長年、広島市民や在広外国人に愛されてきた「エル・バルコ及びバルコ・トロピカル」に強制捜査に入り、同日午前2時40分ごろ、経営者であるいずれもペルー国籍の広島市中区宝町、会社役員ニシヤマ・デル・カスティジョ・ロサリオ・ヒデコさん(38)、南区丹那町、同ニシヤマ・デル・カスティジョ・リチャード・アキヒトさん(37)の両容疑者を風営法違反(無許可営業)の疑いで現行犯逮捕し、二人は、現在、広島県警に勾留され、取調べを受けています。
 
 違反の内容は、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(風営法)第2条第1項第3号「ナイトクラブその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業」の許可を得ずに営業していた疑いとなっています。ただ、深夜酒類提供飲食店の届出はしており、午前0時〜日の出前の営業は可能でした。

 現在、国では、犯罪対策閣僚会議で「安全・安心なまちづくり全国展開プラン」を平成17年6月に策定し、全国主要都市10都市で、犯罪対策等の取り組みのモデル展開をしています。広島県警においても、この国のプランを踏まえて、平成16年7月に設置した警察本部「広島県警察組織犯罪・風俗総合対策本部」及び広島東署「流川・薬研堀等盛り場組織犯罪・風俗特別対策推進本部」について、平成17年9月、組織体制を強化しました。広島県警での風俗営業店に対する行政処分(取消・停止)は、平成16年1年間で94件と、東京都に次いで全国第2位となっています。

 もちろん、安全・安心なまちづくりの推進は、すべての国民が望んでおり、違法性風俗店、暴力団関与、不法就労等の取締りの強化は、必要なことです。私たちも新聞報道等で、数多くの違法性風俗店の摘発の記事を見てきました。
 しかしながら、彼ら二人は数多くの方々の信頼を得て、長年にわたり店を営業しており、違法性風俗店、暴力団関与、不法就労等の事例はなく、今回のように逮捕すべき悪質な事案ではないと考えています。
 
 彼ら二人は、日系ペルー人をはじめとする在広外国人が、異郷の地にあって仕事の疲れを癒し、同郷の者で集うため、また、日本人とも交流するため、これまでの広島にはなかった主としてラテン音楽を中心とした場所を、私財を投入してオープンさせました。もともと彼ら二人は多くの日系ペルー人と同様、工場で働いていました。
 多くの在広外国人やラテン音楽好きの日本人が、このような店を望んでいたこともあり、徐々に人気の場所となっていきました。また、世界的にもサルサ・ラテン音楽が大ブレイクしたこともあり、ますます多くの人が訪れるようになっていきました。
 
 ラテン音楽は基本的にはダンス音楽です。通常日本では見かけることがありませんが、彼らにとって、ラテン音楽が流れ出すと老若男女皆が楽しく踊るというのが、ごく自然な事です。今では日本人の間でラテンダンスの楽しさが広まってきており、日本人も自然と体を動かしたくなるものです。
 国際平和文化都市ひろしまには、世界各国から観光客やビジネスマンが訪れます。日本人でもそうですが、宿泊した場合は、夜に安心して飲食ができるところを探します。彼らは、ホテルで聞いたり、英語版情報紙を見て、「エル・バルコやバルコ・トロピカル」にやって来て、飲んで楽しんで帰ります。また、プロ野球選手やプロサッカー選手、海外ミュージシャンも、よく店に来ています。

 一方、未成年者の入店を禁じるため、特に外国人には身分証明書の提示を求めたり、トラブルを未然に防ぐために、警備会社にガードマンの派遣を依頼し、厳正に対応してきました。
 さまざまな外国人も日本人も来て、お酒も飲む中で、安心して楽しめるスポットを長年続けていくことは、大変なことです。彼ら二人は、様々な課題を乗り越え、大きなトラブルもなく経営してきました。それは彼ら二人の人格の良さであり、誠実さである所以です。

 彼ら二人は、広島で多くの人たちに愛され、市民及び在広外国人のあいだの健全な交流に大きな功績を果たしてきました。その功は、多くの人々が認めるところで あり、賞賛されるべきものであっても、何らの罪状をもってしても非難されるようなものではありません。

 「エル・バルコ及びバルコ・トロピカル」は、全国的にもラテン音楽やダンス愛好者にとっても有名で、東京・大阪からも多くの方々訪れる人気のスポットでもあります。今回の事件は、全国的にも知れるところとなり、大きな反響を呼んでいます。

平成18年5月23日