1999.7.8.9月                                                土屋正道

旅の思い            

上野駅 エースナンバー 廃止され

上京の頃 なつかしむ人

 南国の島

南国の 海に浮びて 空あおぐ

耳にとどくは 水かく音のみ

遊覧の 舟全速で 逆のぼる

マングロ一ブの 密林ぬって

水牛車 浅瀬渡りて 由布島へ

ハイビスカスが 咲く道進む

 彼岸

秋彼岸 雨の大宮 東北線

どこへ向うか ゲタの若者

収集の 時間早まる ゴミ出しに

間に合うように 早起きをする

 名月の寺

雲低い 平野を走る 新幹線

あきらめながら 月夜を思う

台風に まともに向う 飯室の

決死道場 菩堤の種まき

今日死ぬと 思えぬ甘え ぬけぬ我

せめて一時 必死の念仏

道友の待つ 比叡山 杉木立

思いはすでに 列車を離れる

ソコかしこ ヒモつきの人 多くなり

何やらせわし 携帯電話

山と湖 両脇に見る 湖西線

雲風にとぶ 嵐が近い

飯室谷 千年杉の こもれ日に

緑輝く こけのジュータン

こけむして 1000年よりそう 夫婦杉

根方は一つ 来世も一緒

湖の 湿った空気 育くんだ

緑の侵略 比叡の聖地

皇太子と および下さる わが息子

釈迦牟尼世尊と 仰ぎ育てん

 

 初彼岸

秋彼岸 老友の寺 訪ね来し

遺弟りりしく 遺影も笑う

孫娘 友つれ聖地 訪れぬ

祖父と念仏 仲秋の月

母の愛 涙ながらに 説く導師

慈悲の源 なむあみだぶつ

 秋風

君思い 夜空眺める 秋風は

あの日と変らず 我を置き行く

すずしさに ふと見あげれば 彼岸過ぎ

ビルの谷間に 月輝けり 

山向う 列車の旅の 父と子の

少ない会話 幸福の時