日教組第41次 全国学校事務研究集会(佐賀集会) 
      基 調 報 告
                         
                                   日教組事務研推進委員会

 日教組全国学校事務研究集会は.全国の事務職員の情熱こささえられ、40年の歩み
を続けてきました。これまでの多くの成果と経験の上に立ち、引き続き日教組事務職員
部運動が全国の学校事務職員のかなめとして前進するために、以下の諸提起を行います。

T.全国事務研―ふたつの役割

 全国事務研は,参加する事務職員一人一人にとって、自らの力量を高め、知見を新たに
し.知識と理解を深める学習の場です。 
日教組の組織する学校事務職員は.全国47都道府県3300市町村の役40000の公立学
校に勤務をしています。学校と学校事務は,多くの課題をかかえており、事務職員は少ない
人数の中で、さまざまな課題に対処しています。全国事務研は、全国の事務教員が一堂に
会して、討議と交流を深める基調な機会として、日々の実践と深く結びつき、学校と教育・
学校事務にとって大きな役割を直接に果たすことができます。
 全国事務研は,各県・各地域の事務職員組織の貴重な経験交流の場です。
 各県・地域の経験を交流しあい.成果を交換しあうことで、学校事務職員運動のいっそうの
発展をめざします。日教組事務職員部は、また、各県・各地域の情報センターとしての役割
を持っています。多くの英知を集め,運動のいっそうの前進をめざします。
 学校と学校事務・学校事務職員のおかれている情勢こ、向き合う課題はかってないほど
複雑困難の度を増しています。これまでの成果に加え、こうした諸課題にも、全国事務研
は積極的な役割を果たすことが必要です。

U.40年の歩みの中から
 大広間にたくさんの輪ができた

 
 全国事務研は1980年,東京で第1次の会合が開かれました。「標準定数法」の施行から間
もなく、なお草創の時期にあった学校事務職員制度のひとつひとつの積み上げがここから
始まりました。多くの学者・研究者をもまじえた熱い論義がその始まりでした。
 日教組事務職員部はこうした研究成果をふまえ,専門委員会を設置し,「学校事務職員
の任務と賃金」から論議を重ね,日教組の第1次・第2次学校事務労働の基本的な考え方」へ
とつなげてきました。産休代替法の成立に自信を深め、学校事務をめぐる論議と実践の、ひ
とつの転機のシンボルとなりました。全国事務研での論議はその論議はそのなかで重要な
役割を果たしました。  
        
 「子どもの学習権を保障する学校事務の創造を」

 この集会メインテーマは第16次集会ではじめて掲げられ,今日に引き継がれています。
第 次集会から,今日のように全国各ブロックでの開催となり、多くのレポーートが寄
せられ.分科会構成も現在のような姿となりました。全国各県から、さまざまな実践が
報告されるなかで.私たちは,学校事務が「企画力・調整力・創造力」をもつことの重
要性を認識しあってきました。
 また.70年代の「地方財政危機」や80年代の「臨調・行革路線」に対抗する上でも,
教育財政に対する具体的な要求運動と,その過程で私たちが身につた調査・分析の力は
学校現場で.そして地域で,実践に大きく役立ちました。

 「みなさん、この1年間の運動は、実践は、そして研究はどうでありましたか」

 かって,全国事務研はこの言葉とともに始まりました。人確法の制定による教員との
賃金格差のひろがりは.全国事務研の論議を沸騰させました。独自給料表、11級制導入
国3等級=8級格付けに対する取り組みとその到達点などの賃金問題は全国事務研のひと
つの主要なテーマでした。1971年・1992年のニつのピークを持つ事務職員の定数配置の
問題,また.産休・産休代替法,育児休業制度の実践、週休二日制などの諸権利確立の
取り組みについても.活発な意見交換がなされてきました。

 そして、義務教育費国庫負担制度

1984年.大蔵省の「教壇に立つ・立たない」などという論理をたてに始まった国庫負担
制度改悪の攻撃は,十六年たった今日も.今なお続いています。日教組は組織の総力を
挙げてこの策動に立ち向かってきました。全国事務研では.数多くの取り組みの報告が
行われ 取り組みの強化に一定の役割を果たしてきました。
 また.人事任用制度については.1993年「全国人事委員会連合会・研究報告」が出さ
れ 厳しい事務職員の置かれている実状を改めて認識させました。

 地方分権・教育改革と学校・学校事務

 地方分権推進一括法の成立によって.「地方分権」は実行の段階にあります。教育に
関わっては.学校を含む地方教育行政のあり方として.第16期中央教育審議会答申が指
摘した諸事項--学校の自主性・自律性、指導・助言」のあり方・受け止め方 自己説明
責任と「学校評価」「学校協議会」「学校評議員」などをはじめとする地域住民の意向
の把握や反映のしかた,また.学枚運営組織のあり方,さらには「学校事務の共同実施」
や「教員以外の専門性を有する者の活用」など,学校に要求される課題は数多いものが
あります。
 学杖教育や地域コミュニテイの拠点としての学校のなかで.学絞事務が果たしている
役割と機能を明らかにしていくことが求められています。

 戦後50年をすでに見送り,21世紀を目前に,現在の公立学校に関係する諸制度がく
みたてられて40余年になります。私たちは.学絞と学校事務の置かれている現状をと
らえなおし.現場教職員のカを集め,新しい持代を拓くことが求められています。
 全国事務研・40年の歴史をふりかえりながら,新しい世紀に向かって,内に自らを
創りだし,外にその姿を明らかにする歩みを、いまふたたび確かなものとすることが
求められています。

V 学枚事務の未来をひらくために     

 いま、私たちは、子どもの、教職員の、そして地域・保護者・国民の、かってない
ほど多様化している要求とむきあっています。そして、公の行財政のしくみは中央・
地方を通じて大きな見直しがすすんでいます。多くの要求に応え、学校事務がゆたか
に発展していくことが、私たちの存在をゆたかにし、そのことが学校と学校教育をゆ
たかにしてゆく、との確信をもって、論議が深められることを期待します。
 そして、全国事務研での論議の深まりが、各県各地域の、またそれぞれの職場の実
践をゆたかにするものと思います。
 こうした観点から.以下のように今次集会の課題を整理しました。2日間の日程が
多くの実りをもたらすことを期待します。

@ 分権・自治,多様化と個性化 − あたらしい時代に応えるために
 今,学校のあり方が問われています。画一的な教育・偏差値教育から,生きる力を
育み.個性を生かす,ゆたかな教育の実現が求められています。分権・自治.教育の
多様化・個性化が強調されることは,学校の「当事者性」の発輝が求められているこ
とでもあります。
 地方分権一括法の成立を受けて.市町村教育委員会では.学校管理規則の見直しに
着手しています。具体的な学校事務の姿を自ら構想し・実践を深めることが求められ
ています。日教組事務職員部は,この間.中教審への意見反映を含め、これからの学
校事務のあり方について.多くの考え方を示してきました。今次集会でのいっそうの
論議の深まりを期待します。
A 学校財務のいっそうの発展を
 私たちは学校事務の中心的領域を「学校財務」とおさえ、具体的にこれをどう展開
しているのかについて、それぞれの職場や地域、また全国事務研のなかでも実践の交
流を行ってきました。学校現場での予算要求づくりや要求運動の実践からはじまり、
教育予算のしくみと構造・現状と問題点を浮き彫りにし、さらにトータルな地方行財
政・国家予算の問題をもその視野に入れての交流と検証に高めていくことが望まれて
います。その中で、学校教育費だけではない教育費の保護者負担をいかに軽減するか
ということも重要な課題となっています。
 また.教育内容の多様化・個性化,さらに「地域コミュニテイ」「生涯学習の場」と
しての学校が言われる中で.学校建設.施設・設備のありかたについて.いっそうの論
議と実践の交流が必要です。
B情報化社会への対応
 「高度情報化社会」の中で、学校をめぐっても膨大な量の情報が、かってないスピー
ドで流通しています。個人情報を多くかかえ、情報公開などの対応としては「地域にあ
る行政機関」として、学校現場では、原則をふまえた対応が求められています。
 地域の中の学校として,「説明責任」(アカウンタビリティ)がいわれています。情
報を積極的に発信することの意味と手だてが考えられなければなりません。
 「IT革命」という言葉に象徴されるように.発達した情報通信のしくみが,社会の
すみずみにまで及んでいます。コンピュータのネットワーーク化の進展の中、学校がど
のように対応すべきかの検討が必要となっています。「デジタルデパイド―情報格差」
の問題、また,セキュリテイ確保―情報の安全,プライバシー保護.健康問題などの検
討も必要です。
C地域の中の学校
 公立学校は、地域に直接責任を負った存在として、そして、「地域コミュニティの拠
点」「生涯学習の場」として地域の中にあります。中央集権的な教育行政から、「学校
自治」の再生をめざし、「地方分権」の内実をつくりあげていくためにも、実践と論議
が進められていくことが求められています。学校建築や施設・設備のありかた,「学校
協議会」「地域協議会」などの提起の具体化の論議も必要です。
D環境問題
 全地球的な環境問題が指摘される中で、学牧事務職員としてできること、考えに置
くことは何かも論議される必要があります。
E事務職員部運動の前進と確かな学校事務職員制度のために
 日教組事務職員部は,結成50周年を迎えようとしています。その歩みは.事務職員
制度のあゆみでもあるということができます。貸金・定数・諸権利など,これまでのと
りくみによって実現したもの,なお課題となっているものがあります。
 教職員定数のあり方について,文部省―調査研究協力者会議は.報告をまとめ,第7
次定数改善計画が策定されようとしています。今日の情勢の中で.事務職員の役割を明
らかにし,将来の展望を得るために,定数改善に取り組むことが重要な課題です。
 一方 公務員をめぐって.「能力主義的管理」とよばれる新たな労務管理の手法が提
起され.すでに.いくつかの県では実施がされています。
 多くの論議と実践の交流によって.中央・地方でのとりくみをさらに前進させること
が求められています。
 なお,第39次集会から「日教組事務職員部運動資料集」の内容を一部差し替えて発行
し「U」としました。分科会討議.また各県での学習資料として役立てていただきた
いと思います。
 また.日教組事務職員部は結成50周年を迎え,50周年記念誌を発行しました。貴重
な資料として運動の推進にあたって.また集会論議にあたって参照されることを期待
します。

W.集金テーマと全体会
 全体会講演は、講師を七田忠明さんに依頼し「卑弥呼の時代と吉野ヶ里」としました。
集会テーマは,引き続き「子どもの学習権を保障する学校事務の確立を」とし・サブテ
ーマは開催地佐賀県教組の提唱する「ミレニアム さがで語ろう 学校事務の未来を」
を掲げます。40年を超えた全国事務研の伝統に新たなページを加える、活発な集会討議
を期待します。

V.分科会について
 今次集会には.31本のレポートが寄せられました。
 第一分科会「組合運動のよりいっそうの理解のために」では,事務職員が当面す
る諸課題について.3人の共同研究者からの提起・レポートを受けます。日教組事務職員
部運動の歩みを振り返りつつ.国庫負担制度から.勤務時間制度をめぐる学校現場の実
状まで.視野をひろげ.学習と交流を深めます。
 第二分科会「学校事務の実践とその考え方」では.学校予算・文書管理規定・職の
指定・校務分掌・財務事務取扱要綱など.6本のレポートをもとに、学校事務職員の職の
確立に向けた取り組み・実践について各県交流と討議を進めます。
 第三分科会「学枚づくりと教育予算」では,保護者負担軽減のとりくみから.学校づ
くりへどう展開していったか,学校施設整備にむけたとりくみ,環境問題,学校事務の
共同実施と学校財務.などについて七本のレポートをもとに各県交流と討議を深めます。
また.地方財政危機への対応について討議を深めます。
 第四分科会「運動と組織の前進をめざして」では.賃金改善にむけたとりくみの到達
点と課題,組織拡大強化への具体的なとりくみ,定数の問題など.8本のレポートをも
とに各県の実状を交流しながら,論議を深めます。
 第五分料金「学校事務職員制度の確立をめざして」では,学校事務の共同実施、学
校管理規則の問題など,レポート及び日教組事務職員部常任委員会「学校事務の共同実
施の基本的な考え方(その二)」をもとに.分科会テーマに迫る各県交流と討議を進めま
す。また,文部省―教職員定数のあり方等に関する調査研究協力者会議報告について.
討讃を行います。
 第六分科会「高校の学校事務」では,各県の高校現場での身近で具体的な事例を通
して.高校の学校事務の諸問題について各県交流と討議を深めます。賃金・定数などの諸
課題.また地方分権による影響とその対応を討議の柱とします。