金魚展タリタ・クムコンセプト


「タリタ・クム」とは聖書に残されたイエスの言葉、「少女よ、起きて歩きなさい」の意である。 この言葉により、一度死んだはずの少女が再び命を取り戻す。

”復活”、私たちの作品では、これを常にメインテーマとして創作活動を行い、 今、死の中にあるもの、忘れ去られてしまった、”あの記憶”を呼び起こすものでありたい と考えている。金魚が日本に伝わってきて、500年。室町、江戸時代を経て、産み出されてきた 多彩な金魚たち。それは、日本人のもつ美意識のあらわれでもあった。いかにして美しい金魚を つくりだそうか。金魚の色彩、ひれの形状。その生命体のはしはしに、 金魚に携わってきた人々の記憶がインプットされているのだ。

だが、その金魚たちが今、忘れ去られようとしている。それは同時に現代日本人の美意識 の危うさを示しているのではないだろうか?つまり、金魚をどうみるか、あるいはどうみるべきなのか? が分からなくなってしまった。現代社会に氾濫するあまりにも多くの情報や媒体により、 自身の眼をどちらに向けたらよいのか、混乱を起こしてしまっているのだ。

今、美術にしろ、経済にしろ、世界がこの国に注目している、というのに私たちは相変わらず、 眼を泳がせて、観るべきものをつかめずにいる。 そんなときは、しんとして泳ぐ金魚を観察し、500年を通して その生命体に蓄積された「わたしたちが持っていたであろう美意識」の記憶に 触れることで、私たちが眼をむけるべき新しい方向へと、そっと導かれていくはずだ。 静かにひらひらと、華麗に・・・。

今回の展示では、この金魚の過去の記憶をひとまず金魚が容れられた「墓場というモニュメント」で表し、 これからへと繋げていく意味で、金魚を身につけて、都市へ泳ぎでていく「金魚ファッション」、として掲示したい。

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