1,000HIT THANKS!

 アルフォンスとエドワードは、あるホテルの廊下を歩いていた。
「なんで、こんな窮屈なものを着なきゃならないんだよ」
 エドワードが不満げに、自分のネクタイに指を掛けて、緩めようとする。
「駄目だよ、兄さん。失礼がないように、きちんとしていて」
 アルフォンスが、ネクタイを緩める兄の手を止めると、きゅっ、と締め直した。
「オレがこんな堅苦しいの嫌いなの、知ってるだろー?だいたい、今日は何のパーティなんだよ…」
 エドワードはぶつぶつと不満を漏らす。
「あ、会場、ここだよ」
 アルフォンスが立ち止まった扉の前には。
『御礼・1,000HIT祝賀パーティ』
と、書かれた案内板が出ていた。
「?これがオレ達に何か関係あるのか?」
 首を傾げるエドワードに。「いいから」と、アルフォンスは笑みを浮かべて、兄の背を押しながら、扉を開けた。

 そこは、綺麗に飾り付けられた、立派な会場で。けれど、まだ誰もいなかった。
「おっ!旨そうな料理があるじゃん!」
 エドワードは、窓際に並ぶテーブルの上の料理に目を輝かせる。
「兄さん」
 そちらへ向かおうとする兄の襟を、アルフォンスが後ろから指で引っ掛ける。
「なんだよ、アル!」
 エドワードが不満げに振り返ると。アルフォンスは、はぁ、とため息を吐いた。
「意地汚いマネしないの。まだゲストが来てないだろ」
「ゲスト?」
「そう。ボク達、今日はホスト役なんだから、きちんとしてて?」
「えっ!オレ達、客じゃなくて、主催の方!?」
 エドワードが驚いて声をあげる。
「そういうこと」
 アルフォンスがそう告げた時。不意に、音楽が流れ始めた。
「ワルツだ」
 アルフォンスが呟く。
「兄さん、踊ろうか?」
「へっ!?」
 アルフォンスは、ぐいっ、とエドワードの腕と腰を引き寄せる。
「ここ、ダンスフロアなんだよ」
 なるほど、だからテーブルが窓際に置かれ、部屋の中央が広く空けられていたのか、と納得しながら。
「ちょ、ちょっと待てって、アル!オレ、ワルツなんて踊れな…」
 エドワードは、慌ててアルフォンスを制止した。
「大丈夫。すぐに慣れるよ」
「うわわっ」
 アルフォンスに、腕と背中を支えられて。エドワードは、ぐるり、と回転する感覚に慌てる。足元が覚束なくて、転びそうになっていたエドワードだが。アルフォンスのリードが上手いので、やがてリズムに合わせて踊れるようになっていた。
(アルのヤツ、なんでこんなに上手いんだ?)
 疑問に思いながら、アルフォンスに合わせて踊っていたその時。
「おい、アル」
 急にエドワードが動きを止めようとする。
「わわっ。兄さん、急に立ち止まらないで。危ないだろ」
 文句を言いながら、身体の動きを止めたアルフォンスに。
「あれ、ゲストなんじゃねーか?」
 エドワードは、部屋の隅に立って、自分たちを見ている貴方を指差した。
「…そうだね」
 答えるアルフォンスの声は、どこか不機嫌さを含んでいた。
「呑気に踊ってないで、もてなさないと。えーと、何すりゃいいんだ?」
 エドワードは考え込んで。
「あ、おまえが彼女と一緒に踊ってあげればいいんだよ」
「…なんでボク?」
 不満そうなアルフォンスの声。
「オレはリード出来ねーよ。おまえなら上手いじゃん」
 きょとん、と答えるエドワードに。
「ダンスはもういいよ。兄さん、食事がしたかったんでしょ?テーブルに行こう」
 乱暴に、アルフォンスがエドワードの腕を引っ張った。
「おい、アル!痛いって」
 アルフォンスに抗議の声を上げながら。エドワードは、貴方を見る。
「ほら、そんなところに突っ立ってないで、来いよ。一緒にメシ食おうぜ」
 そんな声を掛けられて。貴方は、ふたりのうしろに続く。

 アルフォンスとエドワードが並んで座り、貴方は向かいに座っている。
 エドワードは、ゲストをもてなす、という義務を忘れたかのように、食事に夢中になっていた。
「兄さん、口の周り汚れてる。もっと綺麗に食べなよ」
 アルフォンスが呆れたように言う。その気になれば、完璧なマナーで食事をしてみせることも出来るのに、普段は子どものような食べ方をするエドワードに、アルフォンスは微笑ましさを感じる。
「ほら、兄さん。こっち向いて」
 ぐいっ、と顎を引き寄せる。
「んん?」
 急に顔の向きを変えられて、エドワードから無防備な声が漏れた。
 アルフォンスは、指でエドワードの口の周りを拭っていく。そして。
「はい、綺麗に食べてね」
 そのまま、その指をエドワードの口に押し込んだ。
「!?んっっ」
 突然、口内に入ってきたものに、エドワードは驚いて、硬直する。そんな彼に構わずに、アルフォンスは自分の指をエドワードの舌や歯に擦り付け、汚れを拭ってしまう。そして、指を引き抜いた。
「…っっ!おまえ、いきなり何するんだよ…!」
 エドワードが真っ赤な顔で叫ぶ。それから、伏せ目がちに、ちらり、と貴方を横目で見た。
「何って、兄さんが綺麗に食べないから。全部綺麗に食べれるように、手伝ったんだけど」
 アルフォンスは悪びれた風もない。
「だ、だからってなぁ、く、口に指を突っ込むヤツがあるか…!」
 エドワードが、ますます顔を赤らめながら、言い募る。
「自分の食べたものは、自分で責任持たないと」
 アルフォンスは、そんなエドワードに頓着せずに、言葉を返す。
「う…」
 エドワードは、言葉に詰まってしまう。
「お、おまえ、少しは考えろよ。ひ、人前でこんなこと…恥ずかしいだろ…!」
 エドワードが、やっと本音を言った。彼は、ゲストの前でされたことに、羞恥を感じているのだ。もちろん、アルフォンスはそのことに、初めから気付いている。
「なんだぁ、兄さん。そんなこと、恥ずかしがってたの?今更、こんなことぐらい、気にしなくてもいいのに」
 しれっと言うアルフォンスに。
「い、今更とか言うなぁっっっ」
 エドワードは立ちあがって叫んだ。

 しきりに恥ずかしがって、怒っているエドワードを。アルフォンスは愛しそうに見つめる。
「ねぇ、もう充分じゃないのかな」
 突然、アルフォンスの言った言葉に。
「え?」
と、エドワードは、まだ赤い顔を上げて、彼を見る。
 しかし、その言葉の掛けられた先は、エドワードではなく。
 ゲストの貴方にだった。
「これ以上、かわいい兄さんを他人に見せるの、ボクは嫌なんだよね」
 いつものアルフォンスらしくない、物言いに。エドワードの方が慌てる。
「何言ってんだ、アル?まだ、何ももてなしてないじゃんか」
「もう充分だよ」
 エドワードの言葉に、アルフォンスは、きっぱりと答えて。
「ボクは、最初のダンスを見せるだけで、充分だと思ってたんだから」
と、告げる。
「は…?」
 意味が掴めないように、エドワードは呆けた。
「兄さんはわからなくて、いいよ。じゃあ、今日のパーティは、これで終わりということで」
 表面だけは、にこやかに。そして、逆らい難いオーラを出すアルフォンスに。貴方は、会場を後にする。
 扉が閉まる瞬間。

「兄さん、窮屈な服なんて、早く脱ぎたいって言ってたよね?」
「え…っ、アル!何するんだよ…っ」
 しゅるり、と、おそらくは、ネクタイが解かれる音がした。その音を最後に。無常にも、会場の扉は閉まったのだった。


*アルフォンスは鎧でも、生身でも、お好きな方でお読みください*


1,000HIT THANKS!
 Presented by 「天使も呆れるッ!」
         管理人:七野原 紗恵
         URL: http://www.ne.jp/asahi/s/sae/angelic/index.html

 

<あとがき >
2004.8.11作。
1,000HIT御礼小説でした。
なんかもう、すみません…!いろいろと。お礼だから、少しはえっちくしなくちゃ!と思って頑張ってみたのですが(頑張る方向性が間違ってる)、ただ、アルが黒いだけの話になってしまいました。
アルは、兄さんが、ゲストの貴方を気に掛けるのが、気に喰わないだけなのですー。
それで不機嫌なのです。それでわざと見せ付けたりしているのです。ジェラシー全開…。
とはいえ、これ以上のことに及ぶのを見られるのを嫌って、パーティは強制終了。相変わらず、中途半端なシロモノで申し訳ない…。
2004.8.14.up

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