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夜も更けた研究室で。エドワードは頭を乱暴にかきむしった。
「あー!もう!なんで今日に限ってこんな仕事が来るんだよ!」
ここはエドワードの職場で。錬金術は元より、あらゆる科学の最先端を研究している国に所属する機関である。
本来ならエドワードは今日、定刻で上がる筈だったのだが、その定刻間際に急ぎの仕事がまわってきた。
その為の不機嫌である。
周りには、同じく居残っている者が数人いた。彼らはエドワードの様子に苦笑を浮かべつつ、手を休めずに仕事を続けている。
エドワードも、文句を言いながらも、一刻でも早く仕事が終わるように、手は休めずに動かしていた。
「よっしゃ!完成!」
エドワードが喜びの声を上げたのは、あと30分で日付が変わる時刻。
「じゃ、すんません、お先です!」
エドワードはまだ居残っている面々にそう声を掛けると、慌しく机の上を片付け、上着を掴んで部屋を飛び出した。
廊下をばたばたと走りながら、時計を睨む。
「間に合うか…?」
夜間入り口から外に飛び出し、厳つい門へと走る。職員専用の出入り口の鍵を開け、扉を開けると。
「兄さん!」
そこに、アルフォンスがいた。
「アル!?」
エドワードは驚きに目を見開く。
「お疲れ様」
にっこりと微笑むアルフォンスに。
「おまえ、どうしてこんなところに…」
エドワードが問い掛ける。
「兄さんの帰りが遅いから、迎えに来ちゃった」
そう言って、アルフォンスははにかんだように笑った。
「ごめん。今日は早く帰るって言ったのに、急な仕事が入っちまって…」
エドワードは申し訳なさそうに言う。
「うん。そうなんだろうなってわかってたから、いいよ」
「本当にごめん。寒かっただろ?」
すなまそうに言うエドワードに。
「兄さんこそ、寒いでしょ?冷え込んできたから、マフラー持ってきたんだ」
アルフォンスは手に持ったマフラーをふわりとエドワードの首に巻いた。
「あったけぇ…。サンキュ、アル」
にっこりと笑うエドワードに。
「じゃ、帰ろっか?兄さん」
アルフォンスが手を差し出した。
「おう」
エドワードもその手をとる。
「アル、いつから待ってた?」
歩きながらエドワードが問う。
「んー。内緒」
アルフォンスが笑う。
「ずっと待ってたんだろ、バカ」
「バカは酷いな」
「顔、赤くなってんぞ。寒いんだろ」
「平気だよ」
「風邪ひいたらどうすんだよ」
「…兄さん」
「なんだよ」
すっ、とアルフォンスがエドワードを見た。
「ハッピーニューイヤー。兄さん」
「えっ?」
慌ててエドワードが時計を見ると。時計の針は午前0時を指していた。
「あっ…!ハッピーニューイヤー、アル!」
エドワードもアルフォンスを見上げて言う。
「一番に兄さんに言いたかったから、待ってた。ごめんね」
照れくさそうにアルフォンスが言うのに。
「…オレも。一番にアルに言いたくて。日付が変わる前に家に帰ろうって頑張ったんだ」
エドワードも、小さく言う。
「ありがとう、兄さん」
アルフォンスは嬉しそうに、顔をくしゃくしゃにして笑った。
「今年もよろしくな、アルフォンス。側にいろよ?」
エドワードはそう言うと、伸び上がってアルフォンスに顔を近付けた。
それにアルフォンスは少し驚いて。それから、ゆったりと微笑んだ。
「うん、兄さん。側にいるよ。ずっと」
アルフォンスもエドワードに顔を寄せて。
ふたりの額をくっつけた。
へへっ、とエドワードが笑う。
「やっぱ、アル、冷てぇ。早く帰ってあったまろ?」
エドワードの提案に。
「うん」
アルフォンスも笑って。
ふたりは帰り道を再び歩き始めた。
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