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ひっそりとした田舎町。リゼンブールによく似たその村にエドワードとアルフォンスが住み着いてから、数ヶ月が過ぎていた。
生身の身体を取り戻したアルフォンスを隠すように、エドワードはこの村へとやってきた。
今、アルフォンスは眠っている。
エドワードはその寝顔を見守っていた。
抵抗力の弱いアルフォンスは、頻繁に体調を崩した。今も熱を出して寝込んでいるのだ。
そんなアルフォンスを見守りながら、エドワードは思い出す。昔、やはりこんな風に熱を出して寝込んだアルフォンスの看病をした時のことを。
それは、母親が死んで、ふたりきりで生活をしていた頃のことだった。
突然、アルフォンスが高熱を出して倒れた。
ピナコに診察してもらい、「大丈夫。すぐに熱は下がるよ」と言われても、エドワードは不安で仕方なかった。
苦しそうに、浅い呼吸を繰り返すアルフォンス。
エドワードはその姿に恐怖した。
母親のように、アルフォンスがいなくなってしまうのではないかと思い、心配でとても傍を離れることなど出来なかった。
不意に。
アルフォンスが苦しげに呻いた。涙を零しながら身を捩る。
「…あさ…お…かあさ…ん…おかあ…さ……」
アルフォンスの口から漏れたその言葉に、エドワードは身体を震わせた。
とっさに、アルフォンスの手を握り締める。
「…大丈夫だ。大丈夫だからな、アル…」
大丈夫?なにが?なにが大丈夫なんだ?
母さんは、もういないのに。
あの優しい手は、もうないのに。
「…っ」
ボロボロとエドワードは涙を零した。
ぎゅう、と握る手に力を込める。
悲しくて、苦しくて、辛くて。どうしようもなくて、ただ泣き続けた。
やがて泣き疲れて眠っていたエドワードを起こしたのは。
「…兄ちゃ…?」
掠れた、アルフォンスの声だった。
「アル!」
エドワードは慌てて身を起こし、アルフォンスの顔を覗き込む。
「大丈夫か?苦しくないか?」
尋ねながら自分の額をアルフォンスの額にそっと触れ合わせる。
「…熱は下がったみたいだな。よかった…」
安心して、エドワードは涙目で笑った。
そのエドワードを見上げて。アルフォンスも、ふんわりと笑った。
一生、その笑顔を忘れることはないだろうとエドワードは思う。
眠るアルフォンスの呼吸は随分と穏やかになっていた。
もう大丈夫かな?とエドワードはアルフォンスの額にそっと手を置く。
「…兄さん…?」
ふっと、眠っていたアルフォンスの瞳が開く。
「わりぃ。起こしたか?」
エドワードが優しく覗き込む。
「ううん。兄さんの手、気持ちいい…」
そう言うアルフォンスに、エドワードは微笑む。
「…どうしたの?何を笑っているの?兄さん」
アルフォンスの問いに。
「アルの目が覚めて嬉しいからだよ」
と、エドワードは答える。
すると、アルフォンスも微笑んで。
「うん。ボクも嬉しい。目が覚めて一番に見えるのが兄さんの姿で」
そう、言うのだった。
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