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あなたは恋人のどんな仕草に色気を感じますか?
アルフォンスとエドワードは日向を避けて、ある店に腰を落ち着けていた。
「あちー。もう喉カラカラだぜ」
エドワードは上着の前を全開にし、下に着ているタンクトップの胸元をバタバタと扇いで風を入れている。
(ああ、そんなにしたら鎖骨も胸も見えちゃうよ)
エドワードよりも随分と視点の高いアルフォンスからは、広く開けられた襟口から、エドワードの胸が随分と奥まで見えてしまう。
エドワードは機械鎧を隠す為に上着を脱がないから、きっちりと着込んでいるエドワードが、実はこんなに無防備であられもない姿を晒していると知っているのはアルフォンスだけだ。そのことに、アルフォンスは少しの優越感を感じる。
(恋人のどんな仕草に色気を感じるかって、昨日、食堂で隣に座った人達が話してたなー)
アルフォンスはそんなことをぼんやりと思い出す。
(…兄さんはボクの恋人じゃないけど。でも、ボクは兄さんのどんな仕草にも色気を感じるよ)
アルフォンスはエドワードの姿に視線を捉えられたまま。自分に表情がないことに感謝した。きっと、今の自分の表情を見たら、エドワードは気持ち悪がると思うから。
「お待たせしました」
そこに、エドワードの注文していたアイスコーヒーが運ばれてきた。
「おっ来た来た」
エドワードは嬉しそうにストローを袋から出してグラスへと入れる。
氷が、カランと鳴った。
「シロップ入れるんでしょう?」
アルフォンスはアイスコーヒーに添えられたシロップの容器に手を伸ばす。
「おう、たっぷりな!」
エドワードの注文に応じて並々と入れる。こんな飲み物を飲むぐらいならジュースでも飲んだ方がいいと思うのだが、何故かエドワードは夏にはアイスコーヒーを飲みたがる。アルフォンスが不思議に思って訊いた時には、「夏限定ってのがいいんだよ」と笑っていた。
シロップを入れたアイスコーヒーをストローでカラカラとかき回し、エドワードはおもむろにストローを口に銜えた。
「………」
何度見ても、その姿は扇情的だとアルフォンスは思う。エドワードのふっくらとした唇が、ストローを銜えて僅かに開かれている。それから、コーヒーを吸い上げる為に、唇がすぼめられる。まるでキスをねだっているようだ、などとアルフォンスは思う。
ストローから口を離して唇を舐める様子も堪らない、と、アルフォンスはアイスコーヒーを飲むエドワードの姿を凝視した。
「…なんだ?」
アルフォンスの視線に気が付いたのか、ストローを銜えようとしていたエドワードがアルフォンスに問い掛けてくる。問い掛けておいて、そのままストローを銜える。
アルフォンスの方が身長が高いから、アイスコーヒーを飲みながらアルフォンスを見上げるエドワードの目つきは、自然と上目遣いになる。
その様が、可愛いし、色っぽいとアルフォンスは心の底から思った。
「おい?何じっと見てんだよ、アル」
やはりアルフォンスの視線に気付いていたらしいエドワードの言葉。
「なんでもないよ。一生懸命飲んでる兄さんって可愛いなって思っただけ」
「なっ…」
アルフォンスの予想通り、エドワードは真っ赤になる。それが可愛くて、アルフォンスは時々わざとこんなことを言うのだ。
「何が可愛いだ、バカアル!」
エドワードは手を振り上げて、アルフォンスを殴るフリをする。
「あはは。ごめんごめん」
アルフォンスも笑って謝ってみせる。
「…ったく」
エドワードはまだ赤い顔をしながら再びストローを銜えると、溶けた氷と交じり合って殆ど無色に近い残り僅かなアイスコーヒーを、音を立てて啜り上げた。
「兄さんてば、お行儀が悪いなぁー」
アルフォンスが窘めるが、エドワードは「うるせぇ」と言って、ストローから口を離した。
「行くぞ、アル」
エドワードは元気よく立ち上がる。
「うん」
アルフォンスもエドワードに習って立ち上がった。
前を歩くエドワードの背中を見ながら。その小さな背中も。途轍もなく色っぽいのだと、アルフォンスは思った。
抱きしめたいと、何度思ったか知れないぐらいに。
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