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ウィンリィがハーブティーを持って部屋に入ってくる。
部屋の中にはアルフォンスが座っていた。
「はい、どうぞ。これお勧めなのよー」
ウィンリィが笑いながら言う。
「ありがとう」
カップを受け取りながら。
アルフォンスは、無理に笑顔を作った。
「…今日は出掛けないの?」
アルフォンスが聞く。
「うん?今日はやっちゃいたい作業があるからね」
と、ウィンリィは腕まくりのポーズをする。機械鎧の作業をするのだろう。
「そっか。…ねぇ、ウィンリィは結婚…とか考えてないの?」
ためらいがちにアルフォンスが問うた。
「突然なによ」
ウィンリィが笑う。
「あ、もしかして私にプロポーズ?」
冗談めかして言う。
「ち、違うよ!」
アルフォンスは慌てて否定した。
「あはは。冗談よ。結婚かー。アルもそんな年齢になったのねぇー」
感慨深げにウィンリィが言う。
「だから、違うってば!」
アルフォンスが顔を赤くして否定する。
「あたしは当然、考えてるわよー。ばっちゃんも歳だしさ。早く孫の顔を見せてあげたいじゃない?それに、あたしも人生一緒にやっていくパートナーが欲しいしね」
ウィンリィの答えに。
「…ヘンリーとか、どうなの?いいんじゃない?」
と、アルフォンスは言った。その途端、ウィンリィは、あははは、と笑った。
「ヘンリー?嫌よぉ。全然好みじゃないもん!」
いっそ明るく言い切られて。ヘンリーも立場がないだろう、とアルフォンスは思う。
「アルだってわかってるくせに。ああいう男はあたし向きじゃないって」
「…でも、ヘンリーは医者の卵で次男だし。将来のことを考えても、悪い相手じゃないと思うけど」
アルフォンスは、そう言ってみるが。
「そりゃあ、条件としては悪くないわよ?でも、ヘンリーって頼りないのよね」
ウィンリィの言うことはアルフォンスにもわかった。
「やっぱり、イイトコのおぼっちゃんで、しかも次男坊だからかな?」
ウィンリィは首を傾げる。
そう、ヘンリーは、その育ちの良さのせいか、どこか浮世離れしている。跡継ぎである兄は喰えない人物だと聞いているから、きっと兄には帝王学を学ばせているのだろう。
つまりは、次男のヘンリーは、優秀な医者になること以外は期待されていないということだ。
アルフォンスは、ちょっと気の毒だな、と思う。けれど、それも彼の人生なのだと思い直す。
「あたしはさー、やっぱり一緒に生きていくひとは、一緒に戦ってくれるようなひとがいいな」
ウィンリィが呟いた。
「…そっか」
仕方なく、アルフォンスは相槌を打つ。
「でも、なんでヘンリーなの?」
笑いながら聞かれて、アルフォンスはドキリとする。ウィンリィとヘンリーが結婚すれば、エドワードがヘンリーを諦めてくれるかもしれない、などと考えていたことは、もちろん言える筈もない。
「もしかして、エドがヘンリーを気に入っているから?」
ウィンリィの言葉に、アルフォンスは一瞬、凍りついた。
「あいつが誰かを気に入るなんて、珍しいもんね。あたしと結婚して隣に住むようになれば、いつでも会えるから、とか思った?」
自分が予想もしなかった言葉に、アルフォンスは言葉を詰まらせる。
そうか。ウィンリィとヘンリーが結婚するとは、そういうことか。
もしもそうなったら、エドワードは自分の好きなひとが誰かと家庭を築くのを、すぐ側で見ていなければならないことになる。それは、どんなにか辛いことだろう。
そう思って、アルフォンスは自分の浅はかさに歯噛みしたくなった。
「ね、今だから言うけどさ」
ウィンリィが、内緒話をするように声を潜めた。
「あたし、実はエドのこと好きだったのよね」
衝撃的な告白に、アルフォンスは再び固まった。
「もう諦めたけど」
ウィンリィが笑う。
「え、ど、どうして…?」
アルフォンスが、やっとそれだけ言うと。
「…エドは、家庭を持つつもりがなさそうだから」
ウィンリィは簡潔にそう答えた。
「アルの身体を取り戻して帰ってきてからのエドは、なんだか、もう人生を終えたひとのようだと思った。もうエドは、自分の人生は終わったなんて思っているんじゃないのかしら。
エドも、もっと外に出て行けばいいのよ。たくさん友達を作って、たくさんガールフレンドを作って。そして、恋人を作って。家庭を築いて」
「………」
「そんな相手に巡り会えたらいいと思う。あたしじゃ無理みたいだから。エドに、もう一度人生を与えられる誰かが、現れてくれたらいいと思っているの」
アルフォンスは、ウィンリィの家を出て。帰り道の途中で、ぼんやりと考え込んでいた。
ウィンリィの言ったことは衝撃的だった。
エドワードが恋人を作り、家庭を作る。それは、当たり前の未来。エドワードの幸せを誰よりも願っている自分も。当然、それを望んでいる筈だ、とアルフォンスは思う。
それなのに。
ウィンリィの言葉を聞いてアルフォンスが思ったことといえば。とても、彼女に言えることではなかった。
エドワードに幸せになって欲しい。
けれど、その隣には。自分がいるのでなければ、嫌だ。
エドワードの隣に他の人間が居るなんて、考えるのも嫌だ。そんな自分に気が付いて。アルフォンスは呆然とした。
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