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その夜、アルフォンスは生身の身体を取り戻した。眩しい錬成光の中、その姿を目にして。エドワードは、食い入るように、その人物を見た。
柔らかそうなハニーブロンド。自分よりも甘い蜜色の瞳。優しい顔立ち。逞しい身体。
「…兄さん…?ボク…」
その声を聞いたとき。エドワードは駈け出した。大人びた、低い声。でも、その甘い声は。まちがいなく、アルフォンスのもの。
「アル!!」
「兄さん!」
エドワードが自分を呼ぶ声に、アルフォンスは嬉しそうに笑った。
そのまま抱き付こうとして。エドワードは足を止める。
「兄さん…?」
アルフォンスの問い掛けに、エドワードは苦笑して。
「ほら、ちょっと屈め」
と、自分よりも頭ひとつ分、大きなアルフォンスに命令した。
「?うん…」
訳もわからず屈むアルフォンスに。エドワードは、自分の赤いコートを脱いで、その肩にふんわりと着せ掛けた。そう、アルフォンスは裸だったのだ。そのことに、アルフォンスも気付いて、恥ずかしそうに笑った。
「兄さんのコート、小さいね」
照れ隠しに、そんなことを言う。
「でっかくなりやがって…」
アルフォンスを包むコートを両手で握り締めたまま、エドワードが言う。その声は、泣き出すのを堪えて、震えていた。
「うん、ボク、大きくなりたかったんだ。それに、強くなりたかった。…兄さんを守る為に」
その言葉に、エドワードの瞳から涙が溢れた。
その瞬間。アルフォンスは、まだ一度も触れていない兄の身体を引き寄せた。
「!?」
突然、腰を抱いて引き寄せられたかと思うと、エドワードはアルフォンスの裸の胸に顔を埋めていた。その温もりが、これが夢ではないのだと、知らしめて。
「…っく…っ」
堪えていた嗚咽が、その唇を割ってほとばしった。
「兄さん、ありがとう。兄さん、大好き。兄さん、愛してる。兄さん、兄さん…」
アルフォンスが、そんな言葉をエドワードの耳元で囁き続ける。エドワードは、胸が一杯になって。何も言えずに、泣き続けた。
やがて、エドワードの嗚咽が収まると。優しく背を抱いていたアルフォンスが。
「…ごめんね」
と、謝った。
「?何…」
何を謝られているのか、わからずに。エドワードは、アルフォンスの胸から顔を上げて、弟の顔を見上げた。
アルフォンスは、寂しそうに微笑んでいた。
「兄さんは、そんなに泣いてくれてるのに。ボクも、泣きたいくらい嬉しいのに。…ボク、涙が出ないみたいなんだ」
本当に悲しそうに、そう、告げられて。
「…バカ!」
エドワードは、また胸が詰まる思いで、アルフォンスの胸にしがみついた。
「そんなの、焦らなくったって、いいだろ!これから、いろんなことを、やっていけばいいんだ!」
兄の言葉に。アルフォンスは、淡く微笑んだ。
「うん、そうだね…」
「そうだよ!」
すん、と、また涙の出てきた顔を、エドワードはアルフォンスの胸に擦り付け。
はた、と自分の身体をアルフォンスの身体から引き剥がした。
「兄さん?」
エドワードがアルフォンスの胸に手を突っ張り、離れようとしても。アルフォンスの腕はエドワードの腰を抱いたままで。
「アル、ちょっと放せ」
そう言われて。アルフォンスは、切なそうに眉を顰めた。
エドワードの腰に回していた手を、背中へと移し。両腕を交差させて、エドワードのきゃしゃな両肩を抱きしめた。
「ちょっ…アルッ!?」
エドワードが悲鳴をあげる。それにも構わずに、アルフォンスはエドワードの身体を折らんばかりの強さで抱きしめた。
「アル…ッ、ちょ、力、緩めろ…苦し…っ」
エドワードが苦しそうに訴える。
「嫌だ!」
ますます力が強まって。エドワードは息を詰まらせた。
ひくっ、と引きつるエドワードの身体に、アルフォンスの身体がびくり、と揺れた。
途端に、その力が緩められる。けれど、まだエドワードの身体はアルフォンスの身体に密着したままだ。
「…っバカ、おまえ、鎧の時並みのバカ力だな…っ」
ぜーぜーと、エドワードが息を切らせて言う。
「…兄さんが、ボクから離れようとするから」
アルフォンスは、不服げに言った。
「おまえの服を取りに行こうとしたんだろ…」
エドワードがアルフォンスを見上げると。
真摯な瞳で見つめられた。
「嫌だよ。今は、少しでも兄さんと離れたくない」
「……っ」
その瞳に。その言葉に。エドワードは返す言葉を持たない。
「……っ、おまえの好きにしろよ…」
そう言うと、エドワードは身体の力を抜き、アルフォンスの胸へともたれ掛かった。
「兄さん…怒ったの…?」
恐る恐る問い掛けながら、その腕はエドワードを放さない。
そのことに、エドワードは苦笑する。
「…ばーか。こんな日に、そんなことで怒るかよ。好きにすればいい。アルフォンス。おまえの願いなら、なんだって聞いてやる…」
優しいエドワードの声と、微笑みに。アルフォンスは、胸が熱くなるのを感じた。
「…兄さん。なんだか、ボク、泣けるような気がしてきたよ…」
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