|
「もう行く時間だな」
「そうだね。…ねぇ、兄さんもこの家を出て行くの?ボクが出て行くんだから、兄さんはここに残ったっていいのに」
「…リゼンブールには思い出が多すぎるから」
「…そっか。ねぇ、どうしてボク達、離れ離れにならなくちゃならないんだろうね」
エドワードが寂しそうに笑った。
「オレがおまえを好きになったからだろ」
「ボクが兄さんを好きになったからかな」
お互いに見つめあう。
「…ウィンリィ、泣いてたね。ばっちゃんは険しい顔をしてた。師匠は悲しそうに怒ったし、シグさんは難しい顔をして黙り込んでた」
「ああ。誰もオレ達の関係を、受け入れてはくれない」
「だからボク達は別れるんだね」
「そうだ。オレ達は一緒にいたらいけないんだ」
「…兄さんのことを好きにならなければよかった。そうしたら、ずっと一緒に居られたかも知れないのに」
「ただの兄弟なら、やっぱり離れ離れだろ」
「じゃあ、次に生まれてくる時は、兄弟じゃなく、他人として出会いたい」
「無理だと思うな。今までもこれからも。次の世でも、ずっと。オレとお前は兄弟なんじゃないかな」
「…じゃあ、永遠に、ボクと兄さんはこのままなの」
「そうだな」
「そっか…。仕方ないね」
「ああ。仕方ない」
「もう時間だ。じゃあ、行くね。兄さん、身体には気をつけて。無理をしちゃ駄目だよ」
「お前も元気で。…ちゃんと幸せになるんだぞ」
アルフォンスは少し辛そうに笑った。
「さようなら。兄さん」
「さようなら。アル」
アルフォンスの遠ざかる後姿が消えるまで。エドワードは見つめ続けていた。彼自身もこの故郷を出て行く時間が、近付いていた。
|