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人魚姫は、人間の王子に恋をした。
けれど、王子が選んだのは別の姫君。
自分の思いも伝えられなかった人魚姫。
王子を殺すこともせずに。
静かに海の泡となった人魚姫。
ああ、ひとは、彼女を愚かな女と嗤うのだろうか?
殺すなんて、出来るわけがない。
だって、彼は素敵なひとで。
そんな彼の隣に立つのは、彼に相応しい女性でなければならない。
どうして、自分が立てるだろう?
どうして、自分の気持ちを伝えたり出来るだろう?
この、禁忌の身体で。
(ひとならざる人魚の身体。罪に穢れた鋼の身体)
愛しい彼の幸せを、どうして壊すことが出来るだろう?
ただ、自分は。
彼の幸せを祈るのみ。
初めから、伝えるつもりもない思い。
ただ、自分に許される時間があるのなら。
その間、彼を見つめていたかっただけ。
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