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母さんの人体錬成を行なうために、必死だったあの頃。オレは、研究に没頭していた。そしてそれは、弟のアルフォンスにしても同じだと思っていた。
オレの中で構築式が形を成してきた頃。
「やっと母さんを錬成できるな!」
そう笑ったオレに。アルフォンスは静かに笑って。
「…兄さんは、母さんが一番好きなんだね」
と、言った。
何を急に言い出すんだろう?と、オレは思った。そんなことは、今更確認されることではないと思ったから。
「当たり前だろう?」
オレは、首を傾げてアルフォンスを見た。アルフォンスは、そうだね、と口の中で呟いて。
「でもボクは、兄さんが一番好きだけど」
と、言った。
その時のオレは、ふうん、と答えただけだった。アルフォンスがオレのことを好きなことは知っていたし、母さんの練成の実現を前にして、他のことは大して気にならなかった。
あの時。
アルフォンスの声に含まれた音色に気付いていたら。
あの、寂しげな、悲しげな。諦めたような。縋るような。なんとも形容し難いあの声音。
それに気付いて、オレが、
「オレだってアルが一番好きだよ」
と、答えていたなら。
もしかして、アルフォンスはこう言うつもりだったのかも知れないと思う。
「一番大切なひとが側にいるのに、どうしてこんな研究を続けているの?」
一番大切なひとが側にいるのに、これ以上の何を望むのか。
その時のオレにはわかっていなかったのだ。本当に大切なひと。大切なこと。
死んだ人間のことばかりを考えて。今、生きている人間のことを考えていなかった。本当に大切にしなければならないひとのことを考えていなかった。
もちろん、アルフォンスのことを犠牲にするつもりなんか、毛頭無かった。けれど、結果的にそうなった。オレが、決して望んではならないものを望んだから。
本当に大切なのは、今、生きて側にいる、その存在だったのに。
アルフォンスさえいれば、オレ達ふたりが一緒なら、母さんの死も、きっと乗り越えていけたのに。
愚かなオレは、そんなことにも気付かないで。
賢い弟は、きっとそれに気付いていた。
一番好きだよ、と言ってくれた弟に。今ならオレも、同じ言葉を返せる。けれど、それは遅すぎたのだ。
あの日のおまえに、伝えたい。
あの時、オレが言わなければならなかった言葉を。
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