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ぎりぎりの思いで帰って来た。帰って来れる保証なんてなかった。それでも、それにオレは賭けた。本当に、ぎりぎりの賭けだったのだ。
帰って来たオレを迎えたのは、懐かしい人々。そして、記憶の中よりも成長した、けれどまだ子どもの姿のアル。オレの弟。
嬉しかった。アルが身体を取り戻していた。それを確認したくて、オレは帰って来たようなものだったから。
けれど、記憶をなくしている、というあいつは。
オレのことを。
兄だとは、認識しなかった。
それでもいい。アルが生きていてくれて、身体を取り戻してくれていた。それだけで。
コンコン、とドアがノックされる。
アルが、ぴょこんと頭を覗かせる。
その顔を見ただけで、オレは嬉しくて。いつも、目一杯微笑んでしまう。
「どうした?アル」
嬉しくて。愛しくて。その気持ちのままに、優しく問い掛けると。
「エドワードさん。ウィンリィが食事の準備が出来たって呼んでます」
アルの口からはそんな言葉が出て。思わず、オレは表情を曇らせる。
「エドワードさん…?」
不安げに、アルが呼び掛けてくる。そうだ。不安なのは、オレじゃない。アルの方なのだ。
オレは、精一杯の笑顔を作り、
「わかった。今行くよ」
と、立ち上がった。
アルフォンスの身体を取り戻せた。生きてオレがここに帰って来た。それは、とても幸せなことだ。これ以上は望めない。
だけれど。
胸が痛むんだ、アルフォンス。
おまえが、まるで知らない人間に対するような態度で、オレに近付く時。
どうしてなんだ、とおまえに詰め寄りたくなる。
おまえは悪くない。それなのに。
どうして覚えていないんだ、と。おまえを責めてしまいそうになる。
おまえが、オレに…兄、エドワードに会うために、錬金術の修行をしていたと聞いて。死ぬほど嬉しかった。オレ達の心は繋がっていたんだ、と思った。
今、こうしてオレ達は再会したのに。
もしかして、おまえはまだ、「兄」を探しているのかな。
もう、どこにもいない、おまえの知る「エドワード」を。
叶うことなら。
オレが。
その「エドワード」になりたい。
おまえの探す「兄」に。
それともこれが。オレの…オレ達の支払った代価だったのだろうか。
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