第2話

 

 

「もうすぐ食事だから、エドを呼んできて」って、ロゼさんに言われた。
 ボクは、そのひとの部屋に足を向ける。
 エド。
 エドワード・エルリック。
 ボクの兄さん。…だというひと。

 コンコン、とノックして。
 返事を確認して、ドアを開けた。そっと頭を覗かせる。
 そのひとは、デスクで本を読んでいて。ボクの顔を見ると、途端に満面の笑みを浮かべた。
 ボクは、その笑顔に見惚れてしまう。
 だって、本当に綺麗なんだ。
「どうした?アル」
 柔らかな声音で聞かれて、我に返った。
「あ、食事の準備が出来たって、ロゼさんが…」
 おどおどと言うボク。
 だって、仕方ないじゃないか。このひとの前だと、ボクはどうしても緊張してしまうんだから。
 だって、こんなに綺麗なひとを目の前にして。自分の心臓の音が耳元で聞こえているみたいにうるさい。
「そっか。呼びに来てくれたんだ。サンキュ」
 微笑んで、彼が立ち上がる。と、足元の本の山に躓いて、よろめいた。
「危ない!エドワードさん!」
 ボクは、咄嗟に両腕で抱きとめる。
 このひとは、ボクよりうんと年上なのに、ボクよりも多少、背が低い。そのうえ華奢だから、すっぽりとボクの腕に収まった。
 彼の髪の毛からいい匂いがして。ボクはクラクラする。
「大丈夫ですか?」
 彼の顔を覗き込むと。
 酷く、辛そうな顔をしていた。
「アル、おまえにとって、やっぱりオレは…」
 彼は言い差して。
「わりぃ!大丈夫だ」
と、ぱっ、と身体を離した。
 ああ、また彼にあんな顔をさせてしまった。
 わかっているのに。
 どうしても、呼べない。
 目の前の、この美しく、愛しいひとを。

「兄さん」だなんて。

 

<あとがき >
2005.1.21の日記より。
第1話が思いがけず好評だったので、続きを錬成。
「エドワードさん」と「敬語遣い」が私的ポイント(笑)。
2005.5.16.up