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カフェの賑わう時間帯は、モーニングサービスタイム、ランチサービスタイム、そして、学校帰り、仕事帰りの客がやって来るアフタヌーンティータイムとある。
今は午後4時。学校帰りの少女達で賑わっている時間帯である。
エドワードが空いたテーブルの片付けをして戻ってくると、カウンターにケーキセットがふたつ、準備されていた。
彼がそれを運ぼうと手を伸ばすと。
「これはボクが運ぶよ」
と、いつの間に隣に来たのか、アルフォンスがエドワードの手を止めた。
「兄さんはそっちを運んでよ」
指し示されたのは一客のコーヒーカップ。
「わかった」
答えて、エドワードはトレーを慎重に持ち上げた。
エドワードが、ゆっくりとコーヒーを零さないように運んで行くのを確認して。アルフォンスは、自分もケーキセットを手に取った。
ケーキセットは人気メニューだが、頼むのは圧倒的に女性が多い。そんなところにエドワードを遣ると、また捕まってしまうのは目に見えている。
その点、コーヒー1人分なら男性客である可能性が高いし、女性であっても、ひとりなら騒ぐ可能性は低い。
アルフォンスが、ケーキセットを供して戻ろうと踵を返した時。
「美しい手だ…」
そんな声が聞こえてきた。
嫌な予感がして、声のする方を見ると。
黒髪の男が、エドワードの右手を握っている。コーヒーカップを置いた手を捕られたのだろう。
「あ、あの…」
エドワードは困惑しており、腰が引けている。
「美しいひと…名前を教えて貰えないだろうか?」
今にも、その手の甲に口付けしそうな男に。アルフォンスは、大股で近付いていた。
「お客様。この者が何か粗相をいたしましたでしょうか?」
もう、決まり文句になってしまった台詞を言う。おじぎは30℃。
20代後半か、30代だろうか。その男は、男の色気をぷんぷんと漂わせ、切れ長の目でアルフォンスを見た。
「いや、そういうわけではないよ。あまりにも彼が美しいものだからね。この手を離し難くなってしまった」
その気障な台詞に、アルフォンスは内心で舌を出す。それはエドワードも同様だろう。よく見ると、微かに震えている。もしかしたら鳥肌を立てているのかもしれない、とアルフォンスは思った。
「おや、震えているね。美しいひと。どうすればその震えを止められるのかな?」
男は言いながら、エドワードの手を撫ぜる。エドワードの身体が、びくん!と硬直するのがわかった。
それを見て、アルフォンスは身を乗り出し。
「お客様、失礼ですが手をお離しください。彼には次の仕事がございますので」
と、やんわりと、握られた手を解くように手を伸ばした。
「ああ…そうかい。残念だ。君、仕事はいつ終わるのかね?食事でも一緒にどうかな。いい店を知っている。迎えに来よう」
男がそう言うのに対して。
「申し訳ございません。本日は予定が入っております」
と、アルフォンスが柔らかな笑顔で答えた。
「君には聞いていないよ」
男も、見惚れるような笑顔で答える。
「彼は、今日は私と食事をする予定になっておりますので。それでは失礼いたします」
アルフォンスは話を一方的に切り上げ。エドワードの手を取り返した。
「もう、兄さん。何やってるの」
エドワードの腕を引っ張って行きながら。アルフォンスが小声で言う。不機嫌な様子を隠そうともしない。
「や、だって、あいつがいきなり…!」
エドワードが言い訳をしようとするが。
「もういいから。あそこの空いたテーブル。片付けてきて」
アルフォンスは、そう畳み掛けた。
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