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アルフォンスが朝食の準備をしていると、エドワードが起きてきた。
「メシ、何?」
眠たそうに目を擦っているエドワードに、アルフォンスは笑みを零した。
兄のエドワードは23歳、アルフォンスは22歳になった。それなのに、エドワードの可愛らしさは変わっていなくて。アルフォンスは、そんなエドワードを愛しいと思った。
アルフォンス自身は、その内面はともかく、外見は変わった。ひとの身体を取り戻し。歳相応の身体で暮らしている。エドワードに言わせると、「オレより背が高いのは手違い」だそうだ。手違いの割には、アルフォンスの方が頭1個分は高い。
「新発売のパンを買って来たんだけど、おまけをつけてくれたよ」
エドワードは、アルフォンスの手の中のものを見て、途端に顔を顰めた。
「…んだよ、その白濁色の液体は」
不機嫌にその壜を睨み付ける。
「違うよ、兄さん。これ牛乳じゃないよ。豆乳」
「豆乳?」
「そう、豆の乳と書いて豆乳。新発売のパンっていうのが、大豆を使ってて…」
「まぁーめーのーちーちーだぁーあぁ?テメェ、喧嘩売ってんのか。それとも遠回しな嫌味のつもりなのか、あぁ?」
アルフォンスの言葉を遮って、エドワードが凄んでくる。
「ちょっと、兄さん落ち着いて。誰も兄さんを豆って言ってるわけじゃないし、牛乳でもないし」
「豆っていうなぁあああー!!!乳は乳だろうがぁー!!!」
あやうくテーブルをひっくり返しそうになるエドワードを、慌ててアルフォンスが止める。
「落ち着いてってば。豆乳は豆を絞った物であって、牛乳とは何の関係もないんだよ?」
「そんな言葉にオレは騙されない…」
じっとりと、疑り深く。エドワードはアルフォンスを見る。
「もー、しょうがないなぁ。じゃあ、ボクが飲むよ」
ごくごくと喉を鳴らして、アルフォンスが美味しそうに壜の中身を飲み干す。それを見ていたエドワードは、何故か赤面してしまった。
「ん?何?兄さん」
「あ…いや、なんでもない…」
ふい、とエドワードの顔が逸らされる。それを見たアルフォンスは、にやりと、楽しげな笑みを浮かべた。そして、俯いてしまったエドワードの耳元に唇を寄せる。
「とってもおいしいよ?コレ…。たんぱく質豊富だし、兄さんも飲めばいいのに。…ちょっと青臭いかもしれないけど」
「!!!」
その台詞にエドワードは。今度は、はっきりと顔を朱に染めた。アルフォンスの台詞が、昨夜、ベッドの中で囁かれた台詞と重なってしまったのだ。
「ア…アル。オレは、いいから…。ちょ、離れろよ」
抱き寄せてくるアルフォンスの腕から逃れようと、エドワードが身じろぐ。
「兄さん、何を慌てているの?そんなに顔を赤くして…」
「べ、別に…!」
「飲ませてあげようか?豆乳…。ボクのをさ」
「なっ…!」
アルフォンスが、エドワードを背後から抱きしめ。ぴったりと身体を寄せてくる。
さすがに、こうはっきりと言われては。鈍いエドワードにも、アルフォンスの言っている意味がわかった。
「バカッ…おまえ、朝っぱらから、変なこと言うなよ…!」
「飲まないの?ボクの豆乳。…じゃあ、ボクが兄さんの豆乳を飲んじゃおうかな」
エドワードの耳たぶを舐めながら、アルフォンスが囁く。
エドワードは真っ赤になって、その右腕を振り上げた。
「ぜってぇ飲まねぇ!お前にも飲ませないからな!!!」
「えー…」
振り上げられたエドワードの右手を掴んで。アルフォンスは不満げな声を上げた。
「じゃあさ、兄さんを食べてもいい?」
懲りずに、頬に唇を寄せて言う。
「オレなんか食べるより、朝メシ食えよ…!」
エドワードが、照れ隠しに不機嫌な顔をして言う。
「でももう、朝ごはん冷めちゃったしね。兄さんはまだ、とってもあったかいから…」
ごそごそとアルフォンスの腕がエドワードのパジャマの前を探る。
「わっ!おまえなぁ、オレを食べ物と同列に語るな!それから変なところを触るな!」
エドワードがその手を押さえようとするが、アルフォンスの力に敵わない。
「だって、兄さんって本当にかわいくて、おいしそうなんだもの。ねえ、食べてもいいでしょう…?」
首筋を甘く舐め上げられて。
「んっ…!」
思わず、エドワードの口から声が漏れる。
「かわいい声…」
囁かれる声に、エドワードの背中を痺れが走った。慌てて身を捩る。
「駄目だって、アル…!こんな、朝から…。よ、夜になったら食わせてやるから…。だから、今はこれで我慢しとけ」
これ以上はないくらいに、エドワードは顔を赤くして。恥ずかしさに死にそうになりながら、そう言うと。
柔らかく、アルフォンスの頬に唇を押し付けた。
「…!!!」
アルフォンスが驚きに固まる。
「な?わかったか、ア…」
「兄さん、ボク、今日仕事休む!」
なんだか異様に興奮したアルフォンスを目にして。エドワードは驚く。
「はっ?おまえ何言ってんだ?今日は残業で遅くなるかもって言ってたじゃないか」
「そんなの、今日の分も明日すれば済むことだから!兄さんは何も気にしないで!」
アルフォンスは、がばっとエドワードを抱き上げる。
「はっ?えっ、えっ、何…っ?」
突然のことに、エドワードが声を上げる。
「兄さん、愛してるよ…。一生大切にする」
アルフォンスは熱くそう言うと、抱き上げたエドワードの額にキスを落とす。
「まったく、しょうがねぇなー、おまえは」
エドワードは苦笑して。
するり、とその両腕をアルフォンスの首に回した。
「オレも愛してるよ。アルフォンス。だから…おまえの好きにしろ」
蕩けるような微笑を浮かべてそう言うと。エドワードは、ちゅ、と音を立てて、アルフォンスの唇に口付けた。
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