気まぐれ

 その日。エドワードとアルフォンスは、眼鏡屋に来ていた。頼んでおいたエドワードの眼鏡を取りに来たのだ。
「どうですか?」
「ああ、いいよ。サンキュ、おじさん」
 眼鏡の微調整を終えて、エドワードは眼鏡屋の店主に礼を言った。
「やっぱり、その眼鏡、兄さんによく似合ってる」
 傍から見ていたアルフォンスが、満足げに微笑んだ。
「んん?そうか?」
 エドワードは、照れたように少し頬を染めて。陳列してあるフレームに目をやった。
「お、このデザイン、良くないか?アルに似合いそう」
 華奢な作りのフレームを手に取る。
「ボク?」
 アルフォンスは、きょとん、とする。それに構わず、エドワードはその眼鏡をアルフォンスへと掛けさせた。
「…!」
「兄さん?どう?」
 アルフォンスが問い掛けるが。エドワードは黙り込んでいる。
「兄さん?」
 再び、促すと。
「あ、ええと…」
 何故か、エドワードは顔を赤くして俯いた。
「?やっぱり似合わない?」
 言いながら、アルフォンスが鏡を覗く。
「よくお似合いですよ」
 店主がその背後から言った。
「そうですか?見慣れないから変な感じですね」
 アルフォンスは笑うと、すっ、と眼鏡を外した。
「あ…」
 それを見て、エドワードが何か言いたそうに口を開く。
「ん?何?兄さん」
「いや、あの…その眼鏡、買わないのか?」
「ボク、眼鏡掛けるほど、目、悪くないよ?」
 アルフォンスの言葉に、「そうだけど…」と、エドワードが口の中で呟いた。それを見て。
「…じゃあ、このフレームだけでも、買ってみようかな?」
 アルフォンスがそう言うと。エドワードは複雑な表情をして。
「…い、いいんじゃねぇの」
と、呟いた。
 アルフォンスは、そんなエドワードに微笑を零すと。
「じゃあ、おじさん。この眼鏡、お願いします」
 そう言って、手に持った眼鏡を差し出した。

 眼鏡屋からの帰り道。
「ねぇ、兄さん?」
 アルフォンスは、すれ違うひとのいない田舎道で、エドワードに話し掛けた。
「ん?」
 エドワードが、アルフォンスを見上げる。
「実は、あの眼鏡、凄くボクに似合ってたんでしょ」
 アルフォンスがそう言うと。
「う…」
と、エドワードが唸った。
「やっぱりそうなんだ。何を拗ねてるの?」
 不機嫌そうに口を結ぶエドワードに。アルフォンスが不思議そうに首を傾げた。
「…ずるい」
「え?」
「…あんなに似合うなんて、なんか、ずるい…」
 呟かれた言葉に。アルフォンスは一瞬、絶句して。
「…あははっ!」
 思い切り笑い出した。
「な!何、笑ってやがる!」
 エドワードが顔を赤くして怒鳴る。
「兄さん、普段は眼鏡嫌いなくせにー!なんでそんなことで拗ねるのかな」
 可笑しい!と笑い続けるアルフォンスに。
「〜〜〜!!!」
 エドワードは顔を真っ赤にして。ずんずんと歩き始めた。
「あ、ちょっと待ってよ、兄さん!」
 まだ笑いを滲ませた声で、アルフォンスが追いかけて来る。
 ふん!と怒ってそっぽを向いているエドワードに。アルフォンスは、笑いながら言った。
「だって、ボク、兄さんの方が眼鏡似合っていると思うもん」

 

<あとがき >
2005.1.31作。別ヴァージョンでした。ラストのみ兄弟ほのぼのに変更。でも、もともと「ずるい」とエドが言い始める案もあったので、書けて満足です。
ストーリーの流れは基本的に同じだしね(爆)。
2005.1.31.up


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