天使の特別

 金色の髪の毛に、金色の瞳。白い肌。
 誰もがボク達を、最も天使らしい容姿だ、と言う。
 けれど、ボクの兄のエドワードは、その中身も、最も天使らしい天使だと思う。
 平等に全てのものを愛する。神を敬愛し、天界の住人を愛し、地上の生き物を愛する。
 時には、地上の人間が愚かな罪を犯した時、厳しい罰を与え。悔い改めれば、慈愛の微笑みでもって、彼らを赦す。
 その微笑みを見て。ボクは、胸苦しさを感じる。それは、天使にあってはならない感情だと、自分でもわかっている。
 ボクは、嫉妬しているのだ。兄が、その微笑みと、愛情を向ける全てのものに。
 全てを平等に愛さなければならない天使でありながら、ボクは、自分の兄をこの世の何よりも愛する。
 兄がこのことを知ったなら、軽蔑するだろう。断罪されるのかも知れない。なにせ兄は、神に全てを捧げている存在なのだから…。

「何、考え込んでいるんだよ?アル」
 ひょい、と眩しい金色の瞳が、ボクの顔を覗き込んだ。
「わっ!兄さん。帰ってたの?」
 ボクは驚いて、軽く仰け反った。ボクはお勤めを終えて、家のソファで寛いでいるうちに、いつの間にか思考の渦に沈み込んでいたらしい。
「おまえ、最近変だよな。何か悩みでもあるのかよ」
 兄さんが、眉間に皺を寄せる。
「悩み事があるんなら、オレに相談しろよ」
 ん?と、心配げに、兄さんが更に覗き込んでくる。
 ボクは慌てて、顔を逸らせながら。
「な、悩みなんかないよ」
と、否定してみる。けれど、兄さんは疑り深い目で、じっとボクを見ている。ああ、そんな顔、慈愛の天使らしくないよ?
 ボクは、ふと気付いた疑問を口にした。
「兄さんは、全ての存在を平等に愛しているよね?」
「おう。天使だからな」
「でも、神様だけは特別なんだ」
 天使にとって神は、絶対の存在。
 けれど、予想に反して、兄さんは首を横に振った。
「いや?オレにとっては、神も同じ愛情の対象に過ぎない。特別なんかじゃなく、他の全てのものと同じだけ愛している」
 兄さんの言葉に、ボクはびっくりする。初めて知った。
「そうなんだ…。兄さんは、本当に平等な天使なんだね…」
 正直に、賛嘆の意味でボクは言った。
 けれど。
 兄さんは、またもや、頷かなかった。複雑な表情を浮かべ。
「?」
 そんな兄さんを不思議顔で見るボクを見て、苦笑した。
「そうでもない。オレにはおまえが特別だから。おまえを一番、特別に愛している」
 思いがけない言葉に。ボクは言われたことが理解できなくて、固まった。
「おまえはオレの弟だからな。他の何よりも、愛しいよ」
 そう言って、兄さんは笑う。
「兄さん…」
 ボクはその時。兄さんの弟として生まれてきたことに、感謝した。
「ボクも、兄さんだけを特別に愛してる」
 そう告げると。兄さんは、ボクが焦がれて止まない、あの微笑みをくれた。

 

<あとがき >
2004.11.16作。「アルエド天使祭り2」さんに投稿したもの。初の天使ものですねー。「天使ならでは」な設定で書きたかったのですが、どうでしょう。
ああでも、以前に「兄さんは天使みたい」な話を書いたことが…。あれは暗めの話でしたけどね。(多分、オフラインのみで発表している小説だと思う) 。私の天使に対するイメージって…(笑)。←あまりいいものではないらしい。
うん、私は人間が好きです。汚い部分を抱えている存在が好きです。

2004.11.29.up