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アルとエドは、小高い丘の上で寛いでいた。
ふたりが身体を取り戻して、一年の歳月が過ぎようとしていた。今、日々は平穏に落ち着いて。リゼンプールによく似た、この場所で。ささやかな日常が過ぎていく。それは、ふたりにとって、存在全てを掛けてでも手に入れたかった、未来だった。
それが、今。現実にここに、ある。
アルフォンスは、遠い景色を眺めながら、淡く微笑んだ。木陰に並んで座っていた筈のエドワードは、何時の間にか横になり、静かな寝息をたてている。
穏やかな、昼下がり。明るい太陽の下で、木漏れ日がふたりの上でちらちらと揺らぐ。
アルフォンスは、自分を撫ぜていく風を身体に感じた。ふっ、と目を瞑る。心地よい、初夏の風の感触。目を閉じてもまぶたに映る木漏れ日の光。暖かい空気。草の香り。身体に触れる土と草の感触。木の上でさえずる小鳥の声。
ああ、とアルフォンスは吐息を漏らす。そして、静かに目を開けた。
自分の命を、愛しいと思った。全ての命を、愛しいと思った。そして、それらの存在する、この、世界を。限りなく、愛しいと思った。世界を構成する全て。それらが皆、愛しくて。その存在が愛しくて。
気付けば、アルフォンスは泣いていた。ただ、静かに涙が頬を流れ落ちる。
傍らで、エドワードが身体を起こす気配がした。それすらも、自然の一部。この世界を構成する流動。
「…今、全は一、一は全な気分」
穏やかに、エドワードが言った。
「…うん」
泣きながら、アルフォンスは、にっこりと微笑んだ。
今、自分たちは全の中に身を置いていて。その中で、互いはひとつのものだった。ふたりだけではない。この世界の全ての命。全てのものと。その、存在を共有している。だから。エドワードは、アルフォンスが感じている感覚を、共有しているのだろう。
全ては、繋がっている。この世界に、孤立したものなど、何もない。
子どもの頃に、あの島で悟ったものと、今感じているものとは、似て非なるものだった。あの時、自分たちは、世界の成立ちのほんの一部分を知ったに過ぎなかったのだと、今ではふたりともわかっている。
「アル。…このまま、オレ、解けていきそう」
少しおどけたようなエドワードの言葉に。アルフォンスは笑った。
「うん。このまま、世界に拡散していきそうだね」
鎧である時。アルフォンスは、自分を異質な存在だと感じていた。けれど、今は。自分も世界の正しい流れの中に戻って来た。それが、嬉しくて。
「兄さん。ボクは…」
語るアルフォンスの言葉は、風にさらわれた。けれど、ふたりは、互いを見つめて。幸せそうに笑いあった。
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