お母さん

「必ず、オレがおまえを元の身体に戻してやるから!オレを信じろ!」
 幾度となく、エドワードがアルフォンスに語った言葉。
「うん。信じているよ、兄さん」
 その時は兄さんも一緒だよ、という言葉を添えて。必ず、そう答えてくれる弟に。
 エドワードは、こっそりと顔を歪める。
 信じろ、だなんて、一体、どうして言えるのか。
 母親を錬成しようとして。失敗して。弟を一度は失って。それを歪な形で無理矢理引き戻した。
 そんなことをした人間の、一体何を信じろというのか。
 自分なら、ふざけるな、と怒鳴るだろう、と、エドワードは自嘲する。
 優しすぎる弟は。こんな酷い仕打ちに耐えて。「信じているから」と笑ってくれる。
 その優しさに泣きたくなる。

 ああ、お母さん。

 エドワードは、母親に語り掛ける。

 貴方が、あの大切な弟を、産んでくれた。
 貴方が、あの弟を、あんなに優しく育ててくれた。

 ああ、お母さん。
 貴方にそっくりな、あの優しい弟が、自分を許して笑ってくれるように。貴方も、オレの犯した罪を、許してくれますか。
 ああ、優しかったお母さん。
 あなたにあんな仕打ちをしたオレを。貴方は。

 エドワードは歯を食いしばる。
 愚かな罪を犯した自分は、前に進むしかないのだ、と。エドワードは真っ直ぐに顔を上げ。この道を、進むしかないのだと。何度も心に呟いた。

 

<あとがき >
2004.7.29作。
エドの独白ポエム。相変わらず、暗いですー。アルにしても、エドにしても。やはり、身体を取り戻すまでは、幸せにはなれないと思っているので。
でも、今のままでも、ささやかな幸せがあるのだということ。それを、何か形にしてみたいなー、と思ったりもします。
昔読んだ同人誌で、印象的だった台詞。「つまらない日常かもしれない。だけど人間って、日常がないと生きていけないよな!」
うん。そんな感じで。苦しい、辛い。そんな日常を、何年も続けていたら。あの子たちは、壊れていると思うから。完璧な幸せなんかじゃなくても。笑いあえる日常を。
書いてみたいなぁ、と思います。
2004.8.18.up


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