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うららかな日差しの中。川べりの土手に、アルフォンスは座っていた。柔らかな光に包まれて、明るく美しい景色だった。きっと、気温も暖かいのだろうと思う。吹く風も、春の優しい風なのだろう。アルフォンスは、ぼんやりとそんなことを思っていた。自分にはそう推察することしか出来ない。慣れたつもりでも、寂しく思う心は、やはりどこかに存在している。
「アル〜!そこか?」
兄エドワードの声に、アルフォンスは振り返った。
「兄さん。ここだよ」
アルフォンスの姿を視界に捉えたのか、エドワードが土手を滑り降りてくる。
「宿、取れたぞ。ついでにメシも買ってきた」
エドワードが手に持った袋を見せる。アルフォンスが座っているため、その袋は彼の目の前でぶらぶらと揺れた。
「どこかで、ちゃんとした食事をしてくればよかったのに。ファーストフードなんかで済ましちゃ駄目だよ」
アルフォンスが咎めるように言う。
「ファーストフードじゃねーもん。惣菜屋で買ってきた」
エドワードは屈託なくそう言うと、太陽を見上げて、眩しそうに手を翳した。
「それにしてもいい天気だよな。まだちょっと肌寒いけど」
「そうなの?」
視覚でしか物事を捉えられないアルフォンスが、首を傾げる。
「ああ、風が吹くとな…」
「じゃあ、早く宿に行こう?風邪をひいたら大変だ」
慌ててアルフォンスが、エドワードの肩を掴む。
「ば〜かっ。おまえは大袈裟なんだよ。っつーか、おまえ、あったかいな?」
エドワードが、自分の肩に置かれたアルフォンスの手に、自分のてのひらを重ねる。
「えっ?そう?」
「うん、太陽の熱であったまったんだな。気持ちい〜」
エドワードがアルフォンスの手を持ち上げ、自分の頬に当てる。
アルフォンスの手を暖かいと感じるのなら、彼の頬はそれよりも冷たいのだろう。アルフォンスは心配になって、もう片方の手もエドワードの頬に当てた。そうすると、両手で彼の頬を包んでいる状態になる。さすがに嫌がるかな?とアルフォンスは思ったが、予想に反して、エドワードは大人しくされるがままになっていた。やがて。
「頬はあったまった」
エドワードはそう言って、アルフォンスの手を外した。が。
「何か一部分だけがあったまると、他のトコがかえって寒いな」
と、顔を顰めた。そうして何を思ったのか、手に持った袋を地面に置くと、アルフォンスの胸に飛び込んできたのだ。
「に、兄さんっ!?」
アルフォンスは、どうしたのかと慌てる。
「動くな。気持ちいーんだから」
言われて、アルフォンスはピタリと身体の動きを止める。どうやら、エドワードはアルフォンスの身体で暖を取るつもりらしかった。アルフォンスは困ったように、そっとエドワードを窺い見る。
「兄さん、そんなに寒いんだったら、やっぱり宿に行ったほうがいいよ」
心配してそう告げると。
「ば〜かっ」
先程と同じ返事がかえってきた。そして。
「オレは今、春を満喫してるんだよ」
穏やかな声。
「…?どういう意味?」
アルフォンスが首を傾げると。エドワードが彼を見上げて笑った。
「おまえの身体から、春の太陽のにおいがすんだよ」
そんな筈はないと思う。血の通わないアルフォンスの身体のにおいは、ただただ、鉄と油のにおいばかりの筈。
けれど。兄がそういうのなら。
「そっか…」
そう言って、自分も微笑み返すしかなかった。実際に笑えるわけではないが、声の雰囲気で、エドワードは理解しただろう。
アルフォンスは、両腕でそっと、自分の胸の中にいる兄を抱きしめた。自分のこの身体に「春」が宿っているのだと、言ってくれたその人を。
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