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アニばらワイド劇場


第20話「フェルゼン名残りの輪舞」 ~恋心Ⅱ~





また雨か・・・・・

最近は何かと言うとすぐに雨が降る。
大気の乾く暇もない。常に湿り気を帯びた空気はひたすら重く、立ち止まらず生きようともがく人間たちの上に大きく圧し掛かる。

また・・・雨か・・・・・・。

ぼんやり眺めている間にも、雨足は早くなり気温も急激に低下してきたようだ。やむ気配はない。今夜中、きっと降り続けるだろう。


オスカルはどうしたかな・・・?このままじゃびしょ濡れになっちまう。風邪でも引いたら大変だ。
パリへ向かったな・・・恐らく、フェルゼンのところだ・・・。

このままじゃあいつ・・・びしょ濡れになっちまうから・・・・・行こう。


         
      



天空と地上から、容赦なく叩きつける大粒の雨に打たれて、オスカルは駆けていた。

なんて今の自分に似つかわしい天気なのだろう・・・やまなければいい。このままずっと・・・雨の中、何処かへ消えてしまいたい・・・!





「オスカール!!この雨は体に毒だぜー!!」


激しい雨音と馬の蹄の音に混ざって、確かにアンドレの声がした。


顔を上げたオスカルの目に外套を持った男の姿がすぐに飛び込む。
二人の距離は瞬く間に縮まり、すれ違う一瞬の間にくるりと馬の向きを変えたアンドレと、気が付けば至近距離で並走する形になっていた。


アンドレはどうして私の居所が分かったのだろうか・・・?


並んで馬を走らせるアンドレは寂しいような嬉しいような・・・なんだかとても不思議な顔をして、ずぶ濡れの私を見つめている。

そう言えば・・・彼は私を探すということをしない。
探すのではなく・・・彼はいつも真っ直ぐにやって来る。
私のところへ・・・・・。

今もそうだ。彼は・・・何処を探しまわったという様子はなく、私の名を叫び私のところへ、一直線に駆け寄り・・・もう隣にいる。


アンドレ、どうして私の居所が分かった・・・?
・・・どうして、私の心が分かった・・・?
おまえは・・・いつから気付いていた?




片手で外套を広げ、上半身を乗り出し、男は女の肩を優しく抱き締めるようにして、細い肩をふわりと包んだ。

女は手が伸ばされた瞬間、体を男の側に寄せるようにしながら前傾し、かぶされた外套の襟元をおさえる。

一瞬二人の手が触れ合って、雨に濡れて冷たくなった肌の感触が伝わり合った。

そして体が離れて、なお一層・・・伝わり合うものの中で二人は微笑み合った。

冷たかった肌の感触は心の中で暖められ、溢れたものがオスカルの頬を静かに伝い落ちる。それと同時にオスカルは顔を伏せ、慌てて何度も何度も瞬きをする。




なぁ、オスカル・・・、伝い落ちたのは・・・雨粒だろう?



どんなに見上げてみても、星ひとつ見えない夜空が何日も続いている。
目印になるものは何もない。苦しいだけの水の粒が絶え間なく降り続いて、このままじゃみんなみんな・・・びしょ濡れだ・・・。




オスカル・・・伝い落ちたのは・・・・・雨粒だろう・・・?





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