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アニばら観察日記


アニばら、本格的な開花の時がやって来ました。
これぞレボリュ~ション!【18禁】の札を引っ提げ、物語は加速します。
くっー・・・振り落とされんなよ~っ!!



第19話 「さよなら、妹よ!」



かっ~・・・とうとうやって参りました。いよいよ、いよいよ~・・・アニばらはここからが本領発揮、対象年齢がグッと上がった【18歳未満お断り】な世界へと突入していきます。

19話、これは紛れも無くアニばらの『ターニング・ポイント』です。

と言うところで、ひとつ初心に帰って・・・ベルばらってどんなお話でしょうか?
池田理代子先生がお描きになった少女マンガの金字塔、ベルサイユのばらとは何をテーマに描かれたお話ですか?「王妃マリーアントワネットの生涯」「フランス革命」「女性の自立」「男装の麗人オスカルとその恋人アンドレの身分を越えた世紀の愛情物語」ですか?
ベルばらの魅力はとても一言で表現できるものではありませんが・・・少なくとも先に挙げた中に原作の本筋にあたる部分があるんだと思います。

では、アニばらとは・・・?
そういったベルばらの本筋、王道、あまりにも有名な場面からは一本も二本も逸れた横道にこそ、アニメ・ベルサイユのばらの魅力は溢れているように思います。
時にメインキャラを差し置いて、原作読んだだけならエキストラにも満たないような人物あるいはまったくの創作キャラに、アニばらはとてつもない役割を与え、画面いっぱい妖しく激しく動かします。そして、新しく命を吹き込まれた彼らは目を見張るような存在感でもって、物語をがっしりと支ていくのです。その結果、アニばらは原作に忠実または従順な従来のアニメ化作品ではなくなりました。故にアニばらは原作原理主義のお局様方から叩かれ続け、、場合によってはマジで弾圧されそうな場面もあったと聞きます。しかし、原作があるからアニばらが生まれたのだし、アニばらがあるから原作があるのです。世間的にはまったく同じタイトルを持ち、内容的にはこれ程までに美味しく突っつき合う事ができる・・・このように活発かつ素晴らしい相互作用をもった作品を、私はベルばら以外に知りません。

真剣に観れば観ただけ・・・アニばらで相当量の脳トレが出来ますし、大量のアドレナリンを放出できます。そして原作原理主義の石頭と永遠に続く甘美なる軋轢・・・・・これはも~・・ベルばら世界を活性化している大きな要因のひとつだと私は思うのです。
ちなみに~・・・あまり広げ過ぎてもアレなのでヅカばら&パチンコ等の媒体は一切合財割愛してお送りしております・・・ヅカがお好きな方、すみませんねぇ・・・私、ヅカばらならネッシー様のフェルゼンが永遠の№ワンだと思っております。


というわけで、第19話・・・この度、新しく出崎統監督がチーフ・ディレクターとしてアニばらのマウンドに登板する事になりました。

この人・・・やってくれるよ~~~・・・(嬉泣)・・・
2009年上半期にハマッたものの上位に『Genji~源氏物語千年紀』がありまして、出崎監督の不屈のヲタ道っぷりを堪能させて戴きました。
が、彼、一部では『原作クラッシャー』と呼ばれてるらしいです。
原作クラッシャーーー・・・笑&納得。
彼の破壊活動ぶりには流石の寵姫デュバリー夫人も、そりゃ裸足で逃げ出すわな・・・という、伝説的破壊魔によるアニばら後半部。しかし、まだ物語は辛うじて前半の19話です。

19話・・・凄い出来映えですよね。アニばらファンにとって19話、続く20話は・・・一足お先にやって来た『大革命』です!!まさにアニばら・レボリューションっっ!!出崎のアニバリズムが早くも炸裂っ!もう昨日までのアニばらではありません・・・心を研ぎ澄ませて下さい・・・鬼の出崎フィルターを通して、水分たっぷりのアニばらは更に見事な蒸留水へと磨きあげられ、これから凄まじい変貌を遂げてイキます。
皆様、どうか目をこらして・・・アニばら世界を見つめていて下さいねー・・!

で、第19話。観てすぐ「絵が変わったな」と思うと思います。格段に美しくなったと思いませんか・・・?【出崎の変】まだまだ序章に過ぎませんが、気合いの程はハッキリと画面上に見てとれます。目の描写が細かくなりましたね。ここから先は数話ごとにキャラクターの容貌に変化がありますので、ここは【出崎編・第一章】のお顔です。当時ここまで美しいアニメはなかった・・・アニばらが間違いなく最高だ・・・と、命をかけてもいいくらいに19話は美しいのです

出崎監督はご自分の登板と共に各ポジションの指揮官を変えています。
19話はまだ前半の雰囲気も残しながらの背景作りですが、美術監督が窪田忠雄、川井憲両氏から水谷利春氏に交代していますので、アニばらが別世界へと移行していくのは自然なことかもしれません。


はい、イントロはシャルロットちゃん。この人のどアップから出崎編はスタートです。
思えば今回の「さよなら、妹よ!」、出崎監督でなかったら・・・オスカル様不在だけど飛ばすのはちょっと難しい、お涙頂戴なだけの退屈エピソードで後味の悪さだけが残ったかもしれません。それくらいにこのあたりの展開は微妙です。クリエイターの手腕ひとつで面白くなるか詰まらなくなるか・・・出崎氏は見事に魅せました。ちょっと・・・この後の展開が空恐ろしくなる程のアニばらワールドがここにはあります。
「さよなら、妹よ!」これを母の犠牲になる可哀相な女の子の話で終わらせなかった出崎氏よ!あなたの中で、関わり始めたばかりのベルばらは、一体どんな姿をしていたのでしょうか・・・?

19話の見どころは二人の少女を取り巻く環境の対比とリアル背景です。

揺れ動く二人の少女。共にオスカル様に恋をする、ロザリーとシャルロットは同じ母から生まれた姉妹でもあるのです。そして、残酷な現実を突きつけられ苦悩する両者の姿が交錯するように描かれます。が・・・

私が一番注目して戴きたいところはやはりオスカル様です。
オスカル様の目に映る少女たちの葛藤や絶望、それに対して自分が何をしてやれるのか?また何をしないでおくべきなのか?
19話は『アニメのオスカル様』のひととなりを、とても繊細かつシビアに表現していて、『アニメオスカル入門の巻』と言っても過言ではない。そのくらいによく出来たオスカル様のご配慮物語でもあるのです。

まずAパートから・・・湧き上がる闘志を乗馬にぶつけ、驚く程の進歩を見せるロザリー、その光景をを眺め「知らぬ間に随分と腕をあげたな・・・」と呟くオスカル様・・・彼女はとても寂しいお顔をしてらっしゃいます。傍らにいるアンドレも同様ですが、彼らはロザリーを突き動かすものが負のエネルギーである事に心を痛めているわけで、それによっての上達が喜ばしいはずがありません・・・。

アニメ世界でロザリーを擁護するのはオスカル様とアンドレ、常に二人で・・・という印象を受けますが、彼らは決して過保護な関わり方はせず、むしろ『見守ることが精一杯』という状態なのです。助けが必要な時はすぐに手を差し伸べられるよう傍には居ますが、今はその時ではない・・・言外にどうしようもない【無力さ】すらを漂わせながら、言葉少なく確認し合うオスカル様とアンドレ。そのうしろ姿がなんともいいわ~・・止め絵も含めて、このあたりから滲み出るアニばらの哀愁はとんでもなく味わい深かったりするわけです。

そして!オスカル様の白ブラウスに黄緑色の普段着姿ですが・・・この場面が見納めとなります。第1話から、軍服以外は大抵これをお召しになっておられました。アンドレは薄茶の同様のスタイルで・・・二人は馬に跨り、二人にしか分からぬ空気で会話をする。アニばらのこのムード・・・ああ・・・オスカル様とアンドレは、つくづく一心同体なんだな・・・と思う瞬間なのです。
で、この場面・・・コミックス・アニメ版で確認しようと思ったら丸々飛ばされててですね~・・改めてこの作りはよくないなぁと思った次第です。馬が出る場面はカットしちゃいかん言うてるだろが!!編集者よ、見どころを分かれ(怒)。

いろいろとストーリーは前後しますが、オスカル様、アンドレの魅力を続けていきたいと思います。

アニメのアンドレ、あちこちに顔が利きます。
特に今回のコネは特筆に値するもので、『王立図書館に(オスカル様の知らない)知り合いがいる』というのです。こーゆーところ、こだわりのある視聴者は絶対に見逃しません。独立した男を感じさせてアンドレよ、カッコいいんではないかひ?
長く記憶に留めておきたいアニメならではの大きなセールスポイントなのですね。

で、アンドレ、知り合いに頼んで、今度はホントに徹夜して調べあげたようです(やりゃ~できんじゃん)。
が・・・つかんだ情報を大声でオスカル様に伝えてしまう前のめり&迂闊ぶりときたら~・・・はい、毎度のことながら困ったものです。あの子にはまだ聞かせたくないって言ってるのに・・・開けっぴろげな二人は隠し事が出来ません。吹き抜けの素晴らしい音響効果も加わって、しっかりロザリーに伝わりました。あの後、多少気まずかったでしょうがね、二人(O&A)でひとしきり「びっくりしたなぁーもぉ!」とやってるうちに、意外に冷静なロザリーちゃん登場!で、「全部聞こえました、オスカル様」。
ま、どの道伝えなければならない事なので、結果オ~ライ・・・思えばアニばらの情報伝播方法のうち『立ち聞き』というのはかなり多いですよね。。。

で、今頃になりましたが・・・今日のヒロイン・・・シャルロットちゃん!なんと彼女は11歳なのです。え!?そんな若かったの?ちゅうか単なる子供です。
ド・ギーシュ公爵のような明らかに尋常ではない趣味嗜好の持ち主が「国王の信頼も厚い」というのは理解に苦しみますが・・・(だってローアンが絶対NGなアントワネット様が、犯罪的ロリコンは許すんですか?)場合によっては信頼も金で買うという事なのでしょうか・・・?とにかく宮廷で噂になる程の弩変態に、娘を生贄として差し出そうとするポリ夫人の救い難さは半端ありません。
シャルロットちゃんよ・・・弩変態にとっては目の前で気絶し、ダラリとなるカラダは生唾ものなのです。自力では逃げも隠れもできない幼女を弄んで、飽きたら棄てるという・・・極悪非道な行為を愉しむド・ギーシュ公爵。彼のシャトーでの晩餐会を見れば、奴は恐らく同様の趣味を持つ金持ちを集め、幼女への猥褻行為等を組織的に行っている様子です。晩餐会というより・・・あれはド・ギーシュ公爵主催の変態サークル。哀れな犠牲者はその都度こうして見世物にされるのでしょう。シャルロットちゃん、自分が今後どういう扱いを受けるのか・・・ハッキリ分かっちゃったんでしょうね。待ち受ける未来は地獄です。絶望感の中で既に半死半生の彼女が「助けて・・・」と、心で叫んだのはオスカル様のお名前。
オスカル様・・・もちろん助けてやりたかったと思います・・・しかし、これまた絶望的に、割り込めない事というのがあるわけで。いっそのことロザリーがポリを撃ち殺す→目撃者が居ないという事で殺人を隠蔽→婚約は破談になりシャルロットは解放→大団円♪なんちゅうシナリオはどうか?と思わなくもないですが、それではドラマになりません。

ポリニャック夫人、アニばら内でただ憎々しいだけなのはこの女のみです。
復讐の鬼と化したロザリーに、背中を向け「私は死にたくない!撃たないで!撃たないで!!」と言う彼女の情けなさ・・・その姿はもはや哀れですらあり、ロザリーは母の仇を撃ち殺すことが出来ません。

そして、そこまでやらせてやるオスカル様・・・これ程の優しさがありましょうか?


ショックの真っ只中にいる人を、言葉では救えません。
引き金に手をかけたロザリー、ポリニャックの態度次第では撃ったかもしれない。そして、撃てばロザリーは再起不能です。どうする、ロザリー?撃つか?撃たぬのか?・・・オスカル様だってすんでのところでどっちに転ぶかなんて分からないと思うのです。それを止めずにじっと見守っていたのは凄い。彼女は凄い精神力の持ち主です。
・・・そしてオスカル様は崩れ落ちたロザリーに「撃てるはずがない。おまえのような優しい娘が、本当の母を撃てるはずがない・・・」と言ってやるんですよね。この一言がなければロザリーは決して救われません。「それでいいんだよ」と言ってあげたのです。ひとを肯定し支える一言、同時にそれは簡潔に無理なくポリ夫人に真実を伝える言葉でもあったのです。
オスカル様という人の偉大さを感じます。

ロザリーとシャルロット・・・同じ腹から生まれた姉妹でありながら、保護者に決定的な違いがありました。
オスカル様に見守られていたロザリー、貴女は何度も命拾いをしています。オスカル様へのご恩、決して忘れちゃいけませんよ。
ついでですが、BGMについてです。19話でしか聴けない曲がありますね・・・。未明に拳銃を持ち出そうとするロザリーと上記の場面でかかる曲がそれです。レトロチックでサスペンス風な旋律が出崎調のオリジナリティーをうまく表現していると思います。とにかく貴重な一曲ですから・・・御覧になる時はよく耳を澄ませてみて下さい。

*こちらのBGMのでどころが判明しました!!
大変貴重な情報になります故、ぜひ目次から『~FC2 BBS~』に飛んでいただき、あまがえる様の
MUSICバンク 2をご参照ください。他にもこちらは 驚きの宝庫です♪



長くなっておりますが19話、特筆しておくべき箇所がもうひとつあります。

それは【カエルの噴水】この気色悪い噴水はフランスのベルサイユ宮殿に実在します。


よくぞ、こーゆー使い方をしましたね!!たかが子供相手のアニメーション、誰も見てねえ背景なんて適当に描いちまえ!で、ホント適当に描いてしまうアニメーターもいると思うんです。

でもアニばらの背景屋さんは真剣です。実在という部分を大事にするのです。子供相手だからといってナメた真似はしません。こーゆー実在のものが出る場面を例えばフランスの人が観たら・・・驚き嬉しがると思います。日本産のアニメにベルサイユの、よりによってカエルの噴水。・・・クリエイターのヲタク魂に震えて欲しいな~!!


そんなこんなで話は尽きない19話ですが~・・そろそろ〆にいかなければ、長過ぎますよね、すいませんっ!
私的にはアニばらのターニング・ポイントとなる回に、ちょい役とはいえジェローデルが出ていて「良かったねぇ・・・」と思いました。このあたりになると、彼は隊長に対して失敬な発言をすることはありません。もう完全にオスカル様の実力を認め、彼は彼女に従順、熱心な崇拝者と化しています。

原作と違い、この健気かつ凡庸な彼っ!!いいわぁー・・・


最後になりましたが、シャルロットちゃん・・・ついに心が壊れました。発狂でございます。

本当に、この人生の終わり方はないですよね・・・あんた、どーやって塔に登ったのよ・・・?
突っ込むのもはばかられる程に・・・彼女の最後は哀しく、壮絶なまでに美しかったです。
オスカル様から奪った白いバラ、ドレスの翻り方からみて相当な風が吹いていたと思われますが・・・バラは吹き飛ばされることなく最期まで少女の傍にありました。せめてもの救いなのでしょう・・・これもまた相当ドラマチックな演出です。

遺体となった娘にに取りすがり泣きわめく母、こんな悲劇を目の当たりにしてまで頑なに突っ張ろうとするもう一人の娘。アニメのオスカル様にはシャルロットの死が予測できたかのような冷静かつ達観した雰囲気があります。当事者でないからこそ・・・オスカル様には悲劇の行き着く場所が読めていたのかもしれません。

作中、いろいろな人が死にますが・・・シャルロットのこのダイブは本当に見事でした。
彼女のしたことって自殺であって自殺でない。
だから、無事に天国へ辿り着いて欲しいです。天国で、オスカル様のような素敵な人を見つけて、幸せになって下さい。アーメン。・・・続く!!


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