ヘッダーイメージ 本文へジャンプ

アニばらワイド劇場


第4話「バラと酒とたくらみと・・・」 ~傍観者~




たとえば、ただの傍観者でいられたら・・・オスカルは悩まずにいられただろうか?

ベルサイユはおよそ『生きていくこと』とは無関係な価値観に支配された異空間である。
貴族たちは決して一様ではない。同列である事にひたすら安堵感を覚える者。少しでも権力に秀でようと躍起になる者。騙され利用され消えていく者。

陰謀の陰で無残に殺された者たちの目には、最期の瞬間・・・栄華の中の暗闇が垣間見えただろうか?

マリー・アントワネットを王太子妃に迎え、いっそう華やぎを増したベルサイユが上辺の幸福感に沸き立っていたのも束の間、宮廷を二分する権力争いは日に日に勢いを増し、今では国王自らが争いに介入して来る始末だ。
愛人対孫の嫁・・・こんな事でようやく結ばれたフランスとオーストリアの同盟が破れかねないなんて、まったくどうかしている。国政を司ると言う感覚がベルサイユには明らかに欠けているのではないか?
二人の女の勢力争いに今や完全に巻き込まれた形のオスカルは、王室批判とも言えるこんな話を俺にしながら表情を曇らせる。犠牲者が出てしまった今となっては「何を大袈裟な・・・!」とも言ってられない状況か・・・。

「アンドレ、おまえのおかげで母上だけは・・・最悪の事態を免れた」と弱々しいながらも久し振りに笑顔を見せたオスカルだが、あの毒ワインの一件で、あいつは常に自分が危機に対して切迫した状態である事を知った。守るべき王太子妃は、その純粋過ぎる高貴さゆえに国を危機に晒し、その侍女に召抱えられた奥様にはいわれなき危険が及ぶ。常に近衛隊長として、王族の側近として、判断を迫られるオスカルはどんなにか複雑だろう。

「宮廷全体の治安を考えるならば、安易に国王の愛人を断罪するわけにはいかない。」とおまえは言う。
対峙するべき敵は依然として闇の中だ・・・・・

ひたすら権力に執着しようとする成り上がり者の心と、生まれながらの王位継承者の持つ険しいまでのプライド。
いずれも邪な影に利用されるならば・・・もはやそこに優劣などはあるまい。
・・・外敵ならば、排除する術はあろう。だが、ひとの心に棲むそれは・・・。


身分のない者なら、ただ生きる事に専念すればいい。
・・・貴族とは不自由な者だな・・・

傍観者でいるしかない俺。この目にはオスカル・・・何が正しいのか、割り切れない思いの中で悩む一握りの貴族たちの姿も映ってるよ。
・・・おまえは貴族なのだという認識が俺の中で徐々に強くなる一方で、何故かおまえだけが貴族じゃない。当たり前の貴族であったなら簡単にやり過ごせるであろう出来事がおまえの上には重く圧し掛かる・・・・

平民の俺だから。一層見える事があるのかもしれないな・・・。


アニばらワイド劇場TOPへ戻る


フッターイメージ