<ホーン導入と選ぶ時のポイント>
 ★ホーンを導入・選択時の参考に、少しでもなればと思い書いてみました。

■能書き「経験からのお話・・・」が不要の方は下記項目の中段位にある【.ホーンを選ぶ時の最低限知っておく三項目】からお読み下さい。

 
「その前に「経験からのお話しをチョビット・・・」

ホーンを導入する時は、マルチスピーカー(2Way以上の3Way、4Way・・・)になるわけですが、このマルチスピーカーを鳴らすには、一般的にはネットワーク(コイルとコンデンサーと抵抗の組合せ)を用いて鳴らします。又、ネットワーク式を用いた場合でも、それぞれのネットワークの低域側と高域側を分離して別々に2台のアンプで鳴らすバイアンプ駆動方式が有ります。一般的には1台のアンプで鳴らすシングルアンプ方式が主流です。

●それ以外ではチャンネルデバイダーを使い帯域毎に1台のアンプで左右のユニット1組を受け持つ(分割帯域毎のパワーアンプを用いたマルチアンプ駆動方式があります。尚、各ユニット1個に対し1台のモノラルアンプを使う究極のマルチアンプ駆動もあります。(又、チャンデバとネットワークの併用方式もあります)

●どの方法で鳴らすかは好みの音質で選択してかまわないと思いますが、同じスピカーでも方式によってかなり、鳴り方が変わってきます。特に、ホーンを用いたスピーカーでは、良好な音質を得るためには、基本に則した調整が不可欠です。どの方式でも調整しだいで大きく音質の差として現れてきます。ホーンを導入しますと特に調整はシビアになります。(趣味ですから好みの音が出て自分で満足できているのであれば、どの方法でもかまわないと思います)

●マルチスピーカーでホーンスピーカーを導入しますと、構造上他のユニットとダイアフラムの位置関係で音源位置が大きくズレてしまいます。音の出てくるスタート位置が異なりますのでクロス付近の位相ズレが音に現れてきます。このような位相ズレをここでは、”物理的位相ズレ”と称します。これらの物理的な位置ズレから物理的位相ズレを合わせる事は一般家庭では、設置するスペースやスピーカーの形状等の制約上、現実としてけっこう大変だと思います。

※周波数単位の”Hz”(ヘルツ))は一秒間に何回振動しているかで現す「数値」です。一般的に音のスピードは空気中で20度Cの場合、周波数に関係なく一秒間に約340m(34,000cm)進みます。100Hzの周波数とは一秒間に約340m進み、その間100回振動している事を現します。つまり100Hzでは波(振動)の一回分の振動(一周期、又は”1λ”(ラムダ)と言います)の長さは、340m/100Hzとなり一周期の波長は340cm(3.4m)になります。

※1000Hz(1kHz)の場合、340m/1000Hzで 一周期の波長は34cmです。一周期の半分を1/2λと言いますが、一周期(1λ)は360°なので1/2λの位相は半分の180度ずれた位置になります。その波長は34cmの半分ですので17cmの位置が180度ズレた位置という事になります。このそれぞれのユニットの位置は
クロス周波数における波長とそれぞれのユニット位置と位相とが密接に関係してきますので大変重要になります。

※例えば、クロス周波数が1000Hzの場合、ウーハーやミッドバスの様に下側を受け持つ
コーン型ユニット位置を基準にしホーンドライバーのダイヤフラム位置が同じ位置であれば物理的位相ズレは無くなります。しかし、ネットワークで-12dB/octでクロスさせますと出てくる信号は下側と上側を受持つユニット間では信号が180度のズレが生じます。この、電気信号が通過するフィルター(ネットワークやチャンデバ等)により位相がズレる位相の事を電気的位相ズレと称します。

※ネットワーク等のフィルターで下側も-12dB/oct・上側も-12dB/octでクロスさせますと下側は90°遅れ、上側は90°進みますのでトータル180度の位相ズレが生じるわけです。これは、基準(同相:位相ズレがない)に対し真逆ですのでスピーカーケーブルの+・−端子を逆に接続し信号自体を180度反転させるる必要があります。逆相接続することで理論上トータルの位相は同じになります。(あくまでも、理論上です)

※上記理由から-12dB/octで、ドライバーのダイヤフラム位置を下帯域を受け持つユニットの取り付け位置より34cm(1周期分)後方に設置した場合、物理的位相は同相ですが、電気的位相が逆相接続になります。1/2λの17cmズレている場合は物理的位相が180度ずれますので、-12dB/octの電気的位相が180度ズレですから、物理的位相も180度(1/2λ分:17cm)ズレと相殺され全体として同相になりますのでスピーカーケーブルは正相接続で理論上、信号としての位相ズレは、無い事になります。

※さらに厳密な調整をしたい・・・となると位相以外にも重要な事があります。それは、インパルス応答と言うものです。それはクロス付近では、低い方を受け持つユニットと高い方を受け持つユニットの両方にオーバーラップした音楽信号が入力されます。フィルターを掛けていますの多少信号は減衰していますがけっこう耳で聴こえるレベルです。

※位相が合っていても、音源位置がズレた状態だと、同じタイミングで出力された音は音源位置の差分だけズレてリスニングポイントに届くことになります。通常の音楽信号では位相を合わせれば殆どOKなのですが、パルシブな音(太鼓の音、破裂音、ガラスの割れる音等や)では、何μsecか遅れて同じ音が届きますので大げさに言うとエコーがかった様になります。(気にしなければ問題ないと思います)

※厳密には・・・の話ですので、普段でも間接音(壁や床等からの反射音)など遅れて届く音が混ざっていますので気にならない程度です。あくまでも厳密には・・・なのですが、これを厳密に合わせたい場合はデジタルチャンデバの機能の一つであるタイムアライメント(それぞれの分割周波数帯域を受け持つユニットの信号発信タイミングを遅らせる機能)で調整する以外、現時点では見つかりません。

ホーンスピーカーでは、最初のセッティングで間違うと出てくる音に違和感を覚え、変な音に聴こえてしまいます。一般的なネットワークを用いた普及品スピーカーに比べても、妙に違った音がし、情報量や音質・音色も劣って聴こえてしまう事が多々有ります。これは、まさに位相ズレが起きている症状です。特定の周波数で位相干渉が起き音を強めあったり弱めあったりする現象が著しく発生した事による現象です。したがいまして、この段階で、「ホーンスピーカーはこんなレベルなんだぁー・・・ダメじゃん・・・」と決して決め付けてはいけません。

ホーンスピーカー自体の責任では無く、貴方のセッティングや調整が間違っているのです。主に、クロス周波数の選定、クロスポイントの減衰率選択、位相合わせ等、基本的なセッティングのどこかが、又、全てが狂っているのです。(過去に、何をどう調整してもうまくいかず大変癖のある周波数特性を持った粗悪なホーンやドライバー自体も有りることはありました・・・)

●以降はマルチアンプ駆動をを主体に述べたいと思います。コイル+コンデンサー+抵抗を用いたネットワーク方式がダメという訳ではありません。好みの理想の音質を得ようとすると、どの方式でもそれなりの努力と苦労を強いられると思います。又、更に良い音を出す為にはパーツ類に多額の資金投入の覚悟が必要になるはずです。

●ホーンを使ったスピーカをネットワーク式で帯域をカットした場合、ユニットのインピーダンス変化で周波数分割(減衰率も含む)では理論上と実際とではズレが生じます。それは周波数変化と共に、ユニット自体のの8Ωや6Ωとかの基準になるインピーダンスが変動し理論(計算上)通りにはならず、位相ズレや位相回転等の問題が発生しホーンスピーカーではそれが顕著に音として現れてしまいます。
そのまま安易に導入しますと十中八九うまく鳴りません・・・と言うのが経験から得た実感です。

●ネットワーク式の調整で良い音を出すには、有る程度、定数値の異なるコイルとコンデンサーやメーカー及び銘柄別(固有の音色が存在する)に異なる数種類のパーツを用意しておく必要があります。それは、銘柄やメーカーの違うタイプを何種類も準備しておいて、とっかえひっかえしながら、実際に実装して耳で確認し試行錯誤しながら仕上げて行くしかありません。それでも・・・良くて”ベター”までがギリギリレベルではないでしょうか。

●ネットワーク用のコイルもコンデンサーも良質な物は、高価で数種類も用意しますと、中古のチャンデバや追加パワーアンプが容易に買えてしまいます。(最近のデジタルアンプは安くて高性能です)

●各スピーカーユニットの位置関係の物理的位相ズレやフィルターの電気的位相ズレ等とホーンの特性や原理原則が分かってくると大変対処し易くなります。意外とネットワークを選択した場合においてもそれなりにスムースに調整が進みます。実際、私も最初のホーンを導入した頃は、ネットワークで調整していました。

●最初は、なかなか理想の音には近づけず、とりあえず「こんなもかなぁ・・・」程度の音質までは近づけられましたが、それ以上の向上を試すにはネットワーク用のパーツ代にお金が掛かり過ぎてしまいネットワークによる音質追求をあきらめました。・・これ以上物量を投入しても「無理かモー・・・」って感じがしました。

●しかし、まだなんとなく食い足りない音質に不満を覚えながら聴いていたのでは、「しょうがないんだ…」と自分をいさめても不満は益々つのるばかりで次第に聴くのもやるせない気持ちになり、「もっと調整できれば良くなるハズ・・・」と思っていました。

●現状の音に我慢しきれず、ユニットのインピーダンスに左右されず、簡単にクロス周波数や出力レベル等が簡単に選べて調整ができる方法としてチャンデバを購入しマルチアンプ駆動式に切り替えました。するとモヤモヤしていた不満がどんどん解決していくではありませんか。、聴きながら微調整を行い、一度セッティングが決まりだすと自分としては、ユニットごとの音圧等の微調整は必要ですが今まで聴いたことの無い素晴しいサウンドが聴こえてきます。

●今まで、自分なりの理想の音質に近づけようと、アクセサリー類やケーブル類、端子類、そして高音質の電子パーツやアンプ等、散々とっかえひっかえし物量を投入し、努力と苦労をしてきました、あのしこたま散財してきた、あの音は、いったいなんだったのだろう・・・デス。

●霞が取れて遠くまで見わたせる澄み切った青空の下にいる様な気分です。授業料を払ったと思えば無駄だったとは思いませんが遠回りしてしまったものです。オーディオへの勉強料と思えばこんな費用は安い物ですネ・・・と、言いたいのですが嘘です、凄くショックでメチャクチャ損した気分!(>_<)

●バランスの良い安定した鳴り方をする良質なシングルスピーカーは別ですが、マルチスピーカーにおいて、既製のネットワークで満足できている内は問題ないのでしょうが、一度でもチャンデバを用いたマルチアンプ駆動方式のオーディオシステムを聴くともう、それ以前の状態に戻れなくなってしまいます。
(・・・本当デスヨ!)
ましてや中高音部にホーンとドライバーを導入しますと、あの解像度が高く情報量の豊かな音色は・・・・モゥ〜ダメダメ・・・です。


 <ホーン導入前の心構え>

ホーンには様々な形状や材質の物が存在します。しかし、どの様なホーンでもホーンの音道(音が通過する道でホーンの出口も含みます)に障害物のあるホーンは、本来のドライバーの性能を発揮させる事はできません。

JBLの蜂の巣ホーンやJBL4343等のジャバラ状のデュフューザーを付けたホーンがありますが、これは、ストレートショートホーンの欠点(指向性が悪い・キツイ直接音が出る等)をカバーする為、当時、天才エンジニアが苦肉の策として考案されたものです。指向性や仮想音源位置が開口付近に近づくと共に、指向性が改善される為、デュフューザーを外して聴いた時より聴き易くなるので「良い音がする」・・・と、当時としては画期的な手法で素晴らしいものでした。しかいこれは、厳密には耳を騙して聴いているに過ぎないのです。(これでも満足して聴いているのであれば構わないと思います)

今では、PCのお陰でホーン解析技術の進歩と共にホーンの前に障害物を付ける様なホーンは一切、見なくなりました。蜂の巣ホーンやデュフューザー付きのホーンに使われている同じドライバーを障害物のないALTEC等のセクトラルホーンに付け替えて聴いてみると、その違いが理解できると思います。ホーンに限らず音道部分には障害物はない方が良いのです。ドライバーから出た音は歪が少ないダイレクトな音を障害物により、歪を増加させ、更に音の情報さえも欠落させてしまいます。

又、先に帰しました形状や材質はホーンの特性や音質の個性を決める重要なポイントです。その分、
実際に導入してみないと自分の好みの音色が出るかどうか、自分として良いのか悪いのか等、判断が付け難いのが実情だと思います。オーディオは、見た目も重要です。しかし、一番重要なのは出てくる音質です。使用するドライバーを生かすも殺すも組み合わせるホーンと使い方(セッティング含む)、によって決まります。

基本を踏襲し、仕上がりも美しく、信頼できる老舗のホーンメーカも多々存在します。ただ、これらのメーカー製ホーンは、特にウッドホーンはコンピュータ制御によるNCルーター(中古でも1台数千万円するそうです)を用いて1台毎に作られているため、量産が難しく大変コスト高となり、一般には、とてもとても・・・高価です。「試しに導入してみようかな?・・・」なぁんて、とても、金欠オーディオマニアには対応できるレベルではございません。(中古でもかなり高額で取引されています。しか中には、中華製等で形だけは良いが特性がいい加減なホーンは結構安く売られていますが・・・)

ドライバー製造メーカーから出されているホーンは、その自社ドライバーの特性や特徴を活かす様に作られています。又、メーカー製であるがゆえに、やはりそれなりに高価です。(チョッと、高額過ぎだと思いますが・・・)又、そのメーカーのドライバーの特徴を活かす為、個性が割と強く、物理的に接続可能なドライバーとホーンを組んでそこから出る音質が自分の好みに合うか・・・と、言うと「有名ブランドだから良い」と言う訳でもなく、そう単純なものではないと感じています。(金属ホーンでは特に感じます)

ホーンのカタログ(仕様)上に記載されている数値等は、有る程度、意味を理解している必要が有ります。更にホーンの材質や形状からくる音質的特徴等、数値だけでは分かりにくい音色や解像度を含めた傾向についても、予めある程度知っておくとホーンやドライバーを選ぶときに大変役に立つと思います。


ホーンを使ったスピーカーと一般的なコーン型スピーカー(紙・アルミやその他、金属・ドームタイプ含む)だけで構成されたスピーカーでは、当然、奏でる音質傾向が必然的に異なってきます。これ自体、良いとか、悪いとかではなく、音質の傾向が、ご自身の好みに合うかどうかと言う事です。

ホーンを使ったスピーカーは、一般的なコーン紙を用いたスピーカーと比べますと、誰もが感じると思いますが、開放的で音が前に飛び出す傾向にあります。かと言って、奥行きや広がりが無くなる訳ではなく、良く調整されていれば、三次元的に(前後、左右、上下)に広がって生々しい音色に聴こえます。

一般的なコーン紙系のスピーカーしか聴いたことがない場合、好みに合えば、そのスピーカーで十分に満足できると思いますが、しかしホーンを使った音を聴いてしまうと、それに比べて躍動感の少ない平面的な平たい音に聴こえてしまう事に気づく事があります。漠然と、食い足りなさを感じながら聴いているのではないでしょうか。

優れたユニットやエンクロージャーを使ったハイクラスの高級スピーカー等は、トータルで、何十回・何百回と試行錯誤と設計変更が繰り返し行われてから市場にでてきます。よってそれなりに情報量や再現性等等、とても優秀ですが、云百万円(云千万円もある)もしてベラボウに高価です。ホーンを導入したスピーカーでは、それらハイクラスと比較しても同等のレベルに意外と安く構築できます。ましてや、開放的で生々しさを加えた音質は、マルチアンプ駆動+ホーンスピーカーの方が優れていると感じます。


尚、オーディオは趣味の世界ですので、見てくれが「美しい」に越したことはありませんが、形状や仕上がりだけの見た目だけで判断しますと、後悔する結果になりかねません。(費用対効果も重要です)


<ホーンとドライバーの再生可能周波数の関係

ドライバーユニットについて留意することがあります。それは、ドライバーのスロート(インチ径)のサイズにより実際の再生可能周波数(特に低域方向)がある程度制限されてしまうと言う事です。スロート径が小さい⇒ダイヤフラムの径が小さい(5cm前後)その為、高域再生には有利なのですが低域再生には不利になります。低い周波数はエネルギーも大変高く推奨以下の低域再生はドライバーのダイヤフラムやボイスコイルに負担がかかってしまいます。

1インチスロートのドライバーの場合、ドライバーのカタログ等で仕様に周波数帯域が500Hz〜18,000Hz(又は20,000Hz)と記載されている場合であっても、ボイスコイルの耐入力、ダイヤフラム自体の径の大きさやエッジの柔軟性等により、実際に使用できる最低再生周波数(安定して聴ける周波数)は、たいていの場合、カタログ数値より良くて1.3倍、普通1.5倍くらいした約650Hz〜750Hz位の周波数からが、ユニットとしてまともに使える周波数になります。

これはドライバーの低域側の再生に対しては、余裕を持った使い方(少し高目から使う)が質の良い低域が出せると言う事です。良心的なメーカーのドライバー仕様を見ますと、ドライバー自体の耐久性や耐入力等を考慮しており、再生周波数500Hz
記載(限界周波数を表示)されていても低域側のクロス周波数は”800Hzを推奨”等と記載されています。又、減衰率(は最低でも”-12dboct”以上を推奨と、しています。(特に普段から音量を大きくして聴かれる方は”-6dB”は禁物です)

1インチタイプはダイヤフラムも小径(5cm前後)であると先に記しましたが、径が小さいと低い周波数では空気のロード(負荷)がかかり難く、音楽信号の一瞬の非常に短い時間であれば耐えられると思いますが、連続状態ですと、車で例えますと長時間の”空吹かし”と同じでエンジンが焼けてしまいます。それと同じでボイスコイルが発熱したり異常振幅(ストローク)によりダイアヤフラムやエッジを痛め、音が歪みし易くなります。

先にも記しましたが、低域の音楽信号はエネルギーが大変高くボイスコイルが焼けたり断線し易くなります。まれに、500Hzを再生できる大口径ダイヤフラムや柔軟なエッジを採用し、低域側の再生が比較的楽に出せる設計の1インチドライバーも希少ですが存在します。しかし逆に、その分、高域再生は超不得意になります。

次にホーン側で考えますと、実際に使いたい周波数が、中低域の”500Hz”の場合、ホーンのカットOFF周波数は最低でも250Hz以下のホーンが必要になります。理想はカットOFF周波数が200Hz〜220Hz程度のホーンを選択する事が望ましいです。又、カットOFF周波数が100HZ等、低い分には問題ないのですが、その分ホーンのサイズ(長さ)が極端に大きなり設置に問題が生じます。

又、カットOFF周波数が低いホーンでの高域再生は、ホーン内部で反射が起き、高域再生に乱れが生じ繊細な再生が困難になります。尚、充実した中低域を出したいドライバーにはダイヤフラムの径が大きく耐入力のあるサイズ(直径8cm以上)の1.5インチや2インチスロートの大型ドライバーが理想です。

ホーン + ドライバー導入時に良質な再生音をさせる、基本原則をまとめておきます

 1:.1インチドライバーは再生可能周波数がカタログ上500Hzであっても「約750Hz/-12dboct以上」
   で使う。
  (低域はドライバーに負担がかかるので寿命を長く使いたいのなら余裕を持った使い方が重要)
  (ホーンのカットOFF周波数は、約320Hz以下のホーンを選択するのが望ましい)

 2.:再生周波数が約500Hz/-12dboctから使いたい場合は、ダイヤフラムの径がなるべく大きな
   ドライバーを使う。
   (ただし、高域再生は能率低下や歪が多くなるので、広帯域の使用は避ける)

 3.:安定して500Hz位から再生たい場合は1.5インチや2インチ以上のドライバーを使う。
  (2インチタイプのドライバーでも最低再生可能周波数は500Hz程度が限界)
  (ホーンはカットOFF周波数は、220Hz位、あるいは、それ以下の大型ホーンを選択)

 4.:一般的に1インチスロートタイプのホーンやドライバーでは500Hzからの再生は、難しい。
  (500Hz以下でも出せるドライバーやホーンもありますが高域は不得意)
  (ツイーター等を追加しの高域を補う必要がある)


ドライバーの低域側のクロス周波数での減衰率は最低でも”-12db/oct”を選択しできれば”-18db/octや-24db/oct以上”が望ましいです。(アナログ式は位相回転に注意が必要)

-6db/octは、オーバーラップする周波数帯域が多く繋がりが良い様に聴こえますが、セッティングや調整のしかたにもよりますが相互に干渉し過ぎて歪み感のある音や、うるさい音になり易いです。又、-6db/octでは、かなり低い周波数帯域の高エネルギーまで、ドライバーに入力されてしまい、「音が歪む」で済めばよいのですが、大きめの音量では場合によっては高価で大事なドライバーを破損させたりします。

★例えば、中高音用ドライバで”1000Hz”以上を”-6dB/oct”で受け持たせた場合、1/4fの周波数(250Hz)の信号までもがドライバーに高いレベルで入力されてしまいます。試しにドライバーに耳を近付けて聴いてみて下さい。かなり低い周波数の音までも聴こえてくるはずです。この信号はウーファー領域の信号で、大変エネルギーの高い信号です。・・・ドライバーが焼けてしまうかも・・・です。


 <本題>

★家庭でホーンスピーカーを導入する場合を前提に以下を記していきます。
★私、個人が過去に失敗や感動した経験(実験・試聴・測定等を含む)試行錯誤した結果、感じ取った事柄が主です。感性は、人其々ですので人によっては、それは違う・・・と言うご意見もおありかと思います。
感じ方や解釈が違っている場合も有るかと思いますので「参考意見」程度と・・・ご理解下さい。


【.ホーンを選ぶ時の最低限知っておく三項目】


1.カットOFF周波数  2.周波数特性図  3.材質

○ホーンで仕様書やカタログに上記「3項目」が公表されている製品から選択される事をお薦めします。
高級なオーディオの部類に入り、高価と言われるホーンスピーカと長く付き合って行くには、最低限の項目を知っておくことがなによりです。

○知っていれば、活用(応用)しだいで自分好みの音質を出せるようになります。又、”何か変”と感じた場合でも工夫や対処が容易になり修正し易くなります。


 【.ホーンのカットOFF周波数とは

1.カットOFF周波数

◎ホーンの仕様にはカットOFF周波数が必ず記載されていると思いますが、このカットOFF周波数はホーンを設計する時に何Hzからロード(ドライバーのダイヤフラムに掛かる空気抵抗による負荷)が掛かるか、一番最初に決めなければならない基本項目です。(カットOFFの記載が無いホーンはホーンの形をしているだけでいい加減な物が多いです)

◎ロードが掛かるとは、簡単に言いますと、ダイアフラムが振動し、ある周波数からホーン内の空気が負荷としてダイアフラムの振動(動き)に抵抗となり空気を振動させる事を言います。

◎フルサイズのホーンが基本ですが、カットOFF::300Hzで作られたホーンは空気のロード(負荷)が300Hzから掛かり始め徐々に音圧が上昇し、約2倍の周波数で音圧はMAXになります。この時の音圧はドライバー自体の持っている性能の音圧とほぼ同じになります。

◎カットOFF:300Hzといっても計算上の数値ですので空気自体に含まれる不純物(気圧、温度、湿度、埃等)で変化し、自然界が相手の為、どんなに正確で精密に作られたホーンであっても実測しますと、ロードの掛かる周波数に多少の誤差は必ず生じてしまいます。

◎ドライバーのダイヤフラムにホーンロードが十分掛からない周波数から使用しますと、エンジンの空ぶかし(無負荷でアクセルを踏む)と同じで、エンジンに悪い影響を与えてしまうのと同様に、ドライバーユニットのエッジやダイヤフラムを傷めたり、ドライバーユニット自体をダメにしてしまいます。

◎カットOFF周波数から見て、100%のロードが掛かかる周波数は、カットOFF周波数の約2倍と言われております。、実際に聴いた感じでは満足できる使用可能周波数は、低域再生能力のないドライバーは除きますが、フルサイズのホーンの場合、先に記した通り最低でもカットOFF周波数の2倍の周波数が最低条件であって、それより更に10%〜30%増やした周波数から使用した方が安定した音色を出します。

◎、1インチスロートユニットのダイヤフラムやボイスコイル・エッジに負担をかけず、余裕のある使い方としては、カットOFF周波数の約2.4倍以上(減衰率-12db/oct以上推奨)の周波数位から使うのが望ましくドライブユニットの余裕を考慮し、更に1.2倍した周波数から使うのが望ましいです。

◎カットOFF:250Hzの場合なら一般論では2倍の約500Hzから使用可能となりますが、実際には約600Hz以上からが安定したホーンロードがかかります。カットOFF:250Hzのホーンと1インチスロートのドライブユニットを組み合わせる場合では、カタログ上500Hzから可能なドライバーでもドライバー自体の余裕を考慮し
、約720Hz以上とします。

カットOFF:300Hzなら一般論では2倍の約600Hzからとなりますが、実際には約720Hz以上からが使える周波数になります。又、1インチスロートタイプではドライブユニットの余裕を考慮し、約860Hz以上となります。


◎フルサイズホーンとは、ロードの効果がなくなる、ホーンカーブ開口先端部で内側カーブの接線が上下間で90度角になる位置まで先端を伸ばしたホーンのことで、これ以上ホーン長を伸ばしてもホーンとしての意味(効果)が全く無くなるぎりぎりの長さで作られたホーンのことです。(全長が長くなり全てが大型化します)

※ホーンは、上下にカーブを伴った扇状のフィンと左右の側板で構成されていますが、この上下のカーブ先端位置の上側の先端部内側の接線と、下側の先端部内側の接線の交差する点の角度が90度になるところまで伸ばして作られた長さのホーンをフルサイズホーンと言います。(スロート部から開口部先端までの長さです)

※ホーンのサイズは内側のカーブの開き率で変わり、ホーンカーブの上下先端部の接線が交わった角度が90度になる位置(フルサイズ)でホーンの長さは必然的に決まりますが、これは、音楽信号に合わせてダイアフラムが空気のロード(負荷)を掛け空気振動として自然空間に抵抗無く放出される状態です。

※自然空間に空気の音圧が自然に放出されない状態ですとホーンの終端部と自然空間域の境で抵抗が生じ反射がおきます。するとスムーズにホーンから音が出難くなります。フルサイズホーンに比べショートホーンではこの反射によって低域側では多少のピークディップが見られます。ただし、使用する周波数を上げることで問題なくホーンの使用が可能になります。

※楽器のトランペット等ではダイヤフラムは唇で、スロートはマウスピースの数mmの穴から唇の振動を空気に伝えピストンでホーンの長さを可変して音域を変えています。ラッパの様な楽器のようにスロートが小径でフルサイズとなりますと数mの長さが必要になり、取り回しの関係上とぐろを巻いた形になります。ホーン型の管楽器は全て先端部を急激に大きく広げ(指数関数の広がり)、自然空間へスムーズに音が放出できるようにしています。

◎左右の指向性は開口角の取り方で広くも狭くもできます。左右上下の指向性を上げる(開口を広くする)と音のトータルの能率は低下します。劇場やホールでは隅々まで音が伝わらなければならない為、指向性が重要で開口部を広くし、ホーンスピーカーの数を増やした設置が必要になります。

◎遠くに音が届く為には、音圧(音量)を稼ぐ必要がありドライバーを複数使用しています。よっぽど広い部屋は別ですが、一般の家で使うホーンはステレオなら、そこまで指向性を(特に左右の指向性)は必要なく、リスニングポジションもある程度限定した場所で聴きますので壁の反射等を考えますと、広くても左右90度位がベストと考えます。

※ちなみに、上下左右共にホーンカーブのあるホーンを「バイラジアルホーン」と言います。
上下のみ、ホーンカーブが有り、左右が直線のホーンを「ラジアルホーン」と言います。

※同じカットOFF周波数で作られたホーンでは、バイラジアルホーンの方が左右上下にホーンカーブが有るので指向特性的に良い様な気もしますが、実際に測定しますとラジアルホーン(上下にだけカーブを設け左右は直線状のタイプ)もバイラジアルホーンも周波数特性を比べますと特性的に殆ど差は生じません。

※ロードを掛ける上下のカーブは基本設計の基準になるので比較的シビアに製作する必要がありますが、自然界自体、アナログで且つ”約”で通用するアバウトな世界ですので、ホーン全体(オーディオ全体)としてはそれ程厳密にに考える必要はありません。

◎ホーンの形状は様々ありますが、音離れを重視するか、周波数特性を重視するかで形状を選択できます。ホーンの基本はスロート部から1cm長くなるにつれ広がる開口率によって特性が決まります。自然な特性を示すカーブは、大きく別けて2タイプあります。根元にフィンの有る指数関数タイプ(デフレクシャルホーン)とフィンのいらない自然対数タイプ(ラジアルホーン)が一般的です。

※ホーンの先端部のエッジ部分にRを設け(角を丸くする)るだけでも高域方向は、実際に聴くと音離れが良くなった様に感じます。ただ、見てくれによる気分の差ぐらいだと思っています。低い周波数では音離れ等の差は無くなります。

■スロート径1インチでカットOFE:300Hzのホーン曲線(白丸)の上半分のみ表示してあります■
ホーン曲線(白丸)の上下の接線(直線)が交差した角度が90度になる点がフルサイズの長さです。
上の図では、全長約46cm前後でフルサイズになります。(±3%以内は誤差の範囲です)



◎これ以上ホーンを長くしてもホーンとしてロード効果がなくなり、おのずとホーンの長さ決まります。やたらに長くすれば良いと言う訳ではなく、ホーンカーブの広がり係数で決まります。

◎ホーンの長さはカーブの広がり係数(計算式:エクスポーネンシャル・ハイパボリック・カテノダル・直線的なコニカル)により同じカットOFF 周波数でもホーンの長さが異なってきます。

◎又、これらの計算式を独自に開発したホーン(近年のJBLスピーカーに導入されているホーン)や複合的に組み合わせたホーンに、マンタレーホーン・CDホーン・ツインベッセル等があります。
(フルサイズより短くしたものは、全てショートホーンと言います)

◎フルサイズホーンより短いショートホーンはカットOFF周波数が同じでもロードが安定して100%掛かる周波数に達するまでに、ホーン先端部から反射が起き、その反射波によりピークディップ(凸凹)が起き、荒れた感じの周波数特性になります。

◎ショートホーンの場合、ショートのサイズ(スロート部から開口部先端までの長さ)にもよりますが、フルサイズと比較してカットOFF周波数の約2.5倍〜5倍の周波数から使うのが望ましいです。短ければ短いほど、より高域よりの周波数から使う必要があり、低域方向に無理して使うとマトモナ音になりません。

◎ホーンの周波数特性図等をみてロードが掛かり始めてMAXの100%掛かかり、安定し始めた周波数から約2倍程度、高域側にずらした周波数から使用する事をお勧めします。余裕を持たせた周波数から使用すると安定した音色を出してきます。(100%に達する周波数が約400Hzなら、約800Hz以上から使う))

◎フルサイズホーン(大型になるため高額)かショートホーンかの特性はカットOFF周波数(ロードが掛かり始める周波数)から100%ロードが掛かり安定する周波数になるまでの間に特性的な差がでます。なるべくドライバーの使用可能帯域に近い低い周波数から使いたい場合は、フルサイズホーンを選択するか、カットOFF周波数がより低いホーンを選択する・・・になります。

◎カットOFF周波数が高目の約500Hz〜上で設計されたホーンは、先の説明にあります様に、たとえフルサイズホーンであっても安定した領域を使うには、経験上、1,200Hz以上からしか使い物にならないと思っています。但し、カットする周波数域の減衰率を-36db/octとか-48db/oct等、急激にLowカットにすればより多少低い周波数からでも使用できるかもしれませんが、原則、カットOFF周波数の2倍程度から使うのが基本です。。

[参考例]
ショートホーンでカットOFF周波数が300Hzの場合でロードが100%掛かる周波数が約2倍の600Hzとした場合、そこから更に40%上(カットOFF周波数の2.4倍)の約750Hzや800Hzから使うと良い結果がでます。

★実際に使用する周波数帯域においてはドライバーの性能とカットOFF周波数とホーンサイズ(長さ)とホーンの材質とが密接に関係しており、それらの要素でホーンの音色や音質が決定されます。


■ホーンのカットOFF周波数を小さく(下げて)して行きますと、理論上、ホーンサイズは反比例して、どんどん長く、幅や高さが極端に大きくなってります。その分重量も増加します。削り出しウッドホーンで製作する場合、ストレートタイプになる為、実用的なサイズを考慮しますと低い方へのカットOFF周波数は「約300Hz」前後が限界です。(低域を出す為に、カットOFFを十Hz単位で下げただけで、理論上のサイズは極端に長く大きくなっていきます)

カットOFF周波数は「約300Hz」前後が限界と記しましたが、これは、一般的な削り出しによるウッドホーンでの実質的な製作可能サイズと言う意味です。削り出しタイプのウッドホーンでは、カットOFF周波数が「280Hz」と言う市販のホーン(2インチモデル)も見かけます。使用可能周波数は約500Hz以上と有りましたが、500Hzからの使い方ではホーンもドライバーも限界ギリギリの使い方なので、やはり、ドライバーに優しい使い方としては650Hz以上がベターだと思います。

■カットOFF周波数を上記より下げて製作するには削り出しタイプのウッドホーンでも不可能では有りませんが据付時のスペースにおいて現実的ではありません。使用したい周波数が500Hz以下にしたい場合、低い周波数でも充分にホーンロードが掛かる設計の板(金属や合板・プラ)を使い四方を囲い、全長が長くなるのを折り曲げ式にしたカールホーン等の方式で製作する必要があります。


 【.ホーンの周波数特性図とは

2周波数特性図(グラフ)

◎ホーンの周波数特性は、使用するドライバーによって大きく左右されます。それらの周波数特性図でだいたいのホーンやドライバーの特性(特徴や癖)が見えてきます。
大きくピークディップ(凸凹して荒れた状態)がある周波数域やロードが掛かり始めるカットOFF周波数、及び安定して使える周波数帯域などこの周波数特性図から読み取ります。


■カットOFF:300Hzで作られた2/3サイズショートホーン + Fostex D252と組合せた周波数特性■
赤線位置が300Hz・↓左が450Hz・右が750Hzです。徐々にロードがかかり450HzでMAXになっていますが、実際に安定して使用できる周波数は、750Hzあたりです。上の周波数特性から、この組合せでは「800Hz〜8000Hz」ぐらいまで使い「、8000Hz」以上はツイーターを追加した方が好ましいと判断できます。


◎ホーン長が長いホーンでは逆に高域(10kHz以上)では、ホーン内部で反射が頻繁に起き、更に減衰する傾向か見られます。これは、周波数が高くなると波長(10kHz以上の1λはたった3.4cm以下です)が短い為、ホーン内の空間域(内寸)より短い波長の周波数はホーンの外まで長く続く為、出ようとする波と反射した波とが干渉し打ち消しあって減衰しホーンの外に出てこれなくなるものと思われます。

◎実際に導入してみないと判定が難いホーンは、この周波数特性を知ることで、ある程度自分のスピーカーシステムに組み入れたとき、どの周波数から使用すべきか、クロスをどうするか等、使いこなす為に容易に推測できます。

★適当なカーブ形状で作られたホーンや形状だけホーンのタイプは、ホーンサイズとホーンスロートサイズ、及び単に”○△□Hzから使用可能”としか明記されていないものが多く見られす。老舗メーカーはちゃんと公表しておりますが、形だけのホーンは仕様として重要なポイントは公表していない気がします。(これこそ、まさに、導入してみないと分からない・・・デス)
(詳細をメーカーに問い合わせすればいろいろ、資料が有るのかもしれませんが・・・?!)


 【.ホーンの材質について

■ホーンの基本は、ホーン自体の共振による振動と不要な振動(音圧に負けて響く振動)がない、あるいは、不要振動を吸収するダンプ性能が高い等、しっかりした作りであり、ホーンの設計が確かであれば、どのタイプを選択してもドライバーの性能を十分に引き出してくれると思います。同一設計で同一形状であっても材質の違いによる音色や音質の違いが、それぞれ個性として存在していると思います。

■ホーンは肉厚が薄い物、軽い物は不要振動を起こし易く、又低域用になればなるほど音のエネルギーが高いので振動し易くなり、ホーン自体のの不要振動を抑える為のデッドニング(共振・振動防止のダンプ処理)が重要になります。


3.材質(木製・樹脂製・金属製等)による音質傾向の違い

◎何で作られているか表記されていないホーンが市場で時々見かけます。ホーンは木目調(中は樹脂?)でやや小型の見た目、作りも悪くなく、価格もそれほど高い方ではなく、感覚としては、「どことなくいい音がしそう」な、そんな気がしてチョット欲しくなる作りの物を見かけましたが、しかし仕様にはホーンのサイズと適合ドライバーしか記載されておらず、出てくる音を想像すらできず迷った末、導入を止めた経験があります。
(おそらく、そのホーンは約1,500Hz以上〜なら使えたかも・・・)

◎あまりホーンの知識が無い状態ですと「安くて、見た目も良く、良く鳴りそう・・・」と思っただけで、とりあえずホーンが欲しいタイミングであれば、ネット通販だったら思わず安易に買ってしまったかもしれません。
見た目やアバウトな表記ではなく、ちゃんとした材質や特性が仕様として公表されている事が重要です。

◎プラ系はとても大変安価で小型〜中型の種類も多く(PA用に多く見かけます)、ホーン導入の入門やテスト的な使い方にはよいと思いますがオーディオを趣味とするオーディオ愛好家とし本格的に導入するには音質上、NGと考えます。

◎ご注意願いたいのは、プラ系のホーンの音色だけを聴いて「ホーンを導入しても、この程度か・・・?」と思ってはいけません。(プラ系のホーンの音色はもともとHiFiオーデイォオ向きに作られていないのです)

◎プラ系の中にABS樹脂製以外にFRP製(グラスファイバー)も含まれますが、特にFRP製のHIFIオーディオ用として、販売ざれているのをあまり見かけません。(PA用ならあるかもしれません)
樹脂製より丈夫で金属より軽く、叩いても繊維状の物が幾重にも重なっていますので鳴きは少ないと、聞きますが、圧力に弱そうなので重量のあるドライバーでは、ねじ止め部の破損がありそうな気がしています。

◎コンクリート系(歯科医で使うレジンコンクリート等含む)や金属系であれば、アルミダイキャストと鋳物の鋳鉄では重量も重く、鳴り方も違います。金属系は特に材質や構造の違いが音質に顕著に現れます。

◎木製ホーンでは、合板と集成材と無垢材ではこれも微妙に鳴り方が違います。木製は、大量生産に向いていないのでどれも高価な部類ですが、そこそこの重量と、木の持つ独特のスチフネス(内部損失)があるため、不要振動や共振が気になりません。むしろ、荒々しいタイプのドライバーでも、あばれを吸収し、なだめてくれます。

◎木で作られた楽器(弦楽器・木管楽器等)の様に温もりと潤いのある音質ですが、かと言って情報量が減ってしまうこともありません。長時間聴いていても疲れない、飽きることのない音色で、聴く人を包み込んでくれる音質です。ドライバーにもよりますが、良くできたウッドホーンはオールラウンドで素晴しいサウンドを出します。


1.金属系のホーン(アルミ・鉄・鋳物)

◎金属ホーンは、アルミダイキャスト・鋳物(鋳鉄)・金属板(鉄板・アルミ板等)で作られているものがあります。
主に金属系ではスロート部から開口先端部までの厚味が一定したホーンが多いのですが、デッドニング処理が十分でないと、共振による音が付加されたり、又は歪をもたらし特定域で強烈に響いた音を出します。
(平たく言いますと、良く言えば元気の良い音、悪く言えばキツイ音と感じる音です)

◎中高音用のホーンでも金属系は十分なデッドニング処理で良し悪しが決まります。
金管楽器のトランペット等は、材料に響いた時の音色が美しいとされる真鍮を使いこの共振と響きを積極的に利用して、あの独特な音色を出しています。
オーディオではホーンは様々な周波数やパルシブな音等様々な音が出てきますので、偏った音にしてしまう共振や不要振動は「百害あって一利なし」です。

◎デッドニングが十分でない場合、金属系の共振周波数は、うるさいと感じる耳障りな周波数域に有るので特にデッドニングが重要です。叩いて「カーンとかコーン」と鳴る物は響き易く歪っぽい音が出やすいです。
叩くと鳴る固有振動は防げませが、「カッとかコッ」と、響きの無い状態になるまでデッドニングする必要があると思います。

◎音の傾向は金属の響きを利用し遠くに音を届かせる必要があるホールや劇場で使われることが多いタイプです。(繊細な音をあまり必要としないところで使う用に考えられて作られたものと思います)
(大音量派に向いています)

◎家庭用に持ち込むには、やはりデッドニングがポイントだと思います。良くできた金属ホーンはこのデッドニング処理が最初からされています。構造は鉄板系ですが板と板の間にセメントや石膏・鉛等のダンプ材が充填されているホーンもあります。音楽ジャンルとしては、主観的意見ですがジャズやロック系に向いていると思います。デッドニングが十分にされて変な響きが無い場合は、クラッシックにも使えると思います。

◎まれに、コンクリート系のホーンも見かけますが、一般向けではないので、ここでは割愛します。


2.プラスチック系(ABS樹脂・FRP系)のホーン

◎金属より共振周波数が比較的低い帯域にありますのでキンキンした感じはないですが、作りに十分な厚みと強度が無いと、音圧に負けて共振と異なるホーン独特な振動(ビビリ)が加わり濁った音に感じます。

◎ペラペラな薄いプラでできたメガホンの音を想像してみて下さい。FRPもプラも板状の単一物が多く、樹脂を型に流し込んで作る方法はダイキャストと同じですが材質の違いで金属ほど共振はピーキーではありません。しかし、やはり共振は存在しますので場合によってはデッドニングが必要になます。叩いて「ボコーンとかボーン」と鳴る物は響き易く歪っぽい音が出やすいです。

◎金属系より軽く且つコストダウンと作り易さの為にFRPや樹脂系が出てきたものと思います。音の傾向は金属より共振域がかなり低目でですが軽い分、不要振動が起き易く金属と似た傾向で繊細さをあまり必要としないところで使うとよい様に思います。(大音量派に向いています)

◎家庭用に持ち込むには、質量を上げる処理と、やはりデッドニングがポイントだと思います。音楽ジャンルとしては、ボーカルがメインの曲やジャズ系に向いていると思います。(変な響きが無くデッドニングが十分に行われている場合は、クラッシックにも使えると思います)

◎金属に変わって出てきた材質で同じ形のホーンの場合、金属より軽く、見た目も滑らかで美しい仕上がりです。加工がし易く、いろいろなホーンカーブが容易に作れ、共振域も樹脂系と似て低目です。ただ、十分な厚味を持たせないと強度不足から不要振動が付加されやすくなります。このタイプは、一般市場では殆ど見かけません。オーダーメイドか、自作か分かりませがネットで見たことはあります。

◎音質傾向は聴いた事がないので分かりませんが、傾向として樹脂と金属の中間的な音質傾向かと、想像しています。構造的に家庭用持ち込むには、やはりデッドニングがポイントだと思います。


3.木製系のホーン(ウッドホーン)

◎木で作られたホーンは、量産がし難い分高価で、価格帯としては高級ホーンに属し材料とサイズと加工技術(人件費)によってピンきりの物が存在します。又、木の材料や作り方による音質の違いがあります。

◎ウッドホーンは、集成材や合板を積層しブロック状にして削り出したホーンが多くあります。理由は加工がし易く、材料が豊富で経年変化による、ヒビ、割れが発生しにくい面と、材料コストも無垢木より比較的安価に入手可能です。超高価な工作機械のNCルーター(コンピューター制御による削り出し)で製造される精密なホーンは設備投資分、それなりに高額になります。

◎硬い木は、重く(重い木は硬い)共振域が金属に近づく為、音質は金属系の傾向に近くなります。この傾向は無垢材の様に同一材質では、共振域の”Q”も大きくなり又、分散が無いため、硬くなればなるほど、金属系により近い傾向になるのだと思います。

◎硬い木でも、内部損失が金属より大きい為、不要振動は小さく、共振は心地よい響きになり易いため、金属系のホーンとは異なり、オールラウンドな音質になる様です。又、、金属系と違い肉厚が厚いので、デッドニングが不要(デッドニングしても効果が薄い)になり、そのまま使用できます。硬い木は加工も難しくコストが跳ね上がる要因になっています。

◎軽すぎる材質は不要振動が起き易く、柔らか過ぎる材質(振動を吸収し過ぎる)は、こもった音色で情報が減った様な傾向の音質になり易くなる様です。

◎ウッドホーン自体、適度な質量と適度な内部損失を持った材料から削り出せば共振し難く、振動し難い分、ドライバーユニットの持っている本来の性能を発揮させると共にドライバーのピークディップ等の癖を抑え美しい音質を出すベストな材料と思います。

「合板等で作られた板状のホーン」(カールホーンやセクトラルホーン)
◎合板等の板状の一枚板で作られたホーンは、樹脂系と似た傾向の音になります。板状の材料で作られたホーンは、不要振動が起き易いので木でも金属でも樹脂でも、十分なデッドニングが必要になります。(板と板の間に石膏を流し込んだ物もあります)

「削り出しウッドホーン(合板積層・集成材積層・無垢木材)」(俗に言うウッドホーン)
◎集成材や積層型(無垢材積層含む)削り出しタイプのウッドホーンの場合、後付けのデッドニングが難しく、材料選択時に適度な重さと内部損失のある材料で作ります。その方が不要な振動を吸収し、ホーン自体の振動も起き難くく、共振域も共振時のピーク”Q”も低く抑えられます。木目の方向や異なった材料を貼り合わせることによって強度が増し、経年変化も起きにくく共振を分散できます。

◎繋ぎ目の無い単一無垢木は、材木の木の種類によりますが、その木の独特な音色が存在します。無垢木を積層して削り出したホーンも存在しますが、単一無垢材と同じ傾向です。

◎無垢木の場合、木製の楽器と同じで何十年も寝かし、安定した材料を使う必要があります。その為、材料自体が高価で加工も難しく、高額になり一般向きではありません。(中途半端な無垢木は経年変化で反りやひび割れ等が出やいです)

◎木製ホーンは金属系ホーンと違い共振は比較的低い周波数に存在します。音質は、おだやかでピーキーではありません。かと言って、決して情報量が減るようなことはありません。

◎木製ホーンは経年変化防止(湿気は大敵)に必ず塗装を行う必要があります。「木は呼吸してる」と言いますが、
未塗装では、吸湿・乾燥を繰り返すうちに必ず反りやひび割れが起きます。

2.フルサイズホーンとショートホーンについて

◎フルサイズホーンは、先にも記していますが、ホーンの長さ(スロート開口部から先端迄)をこれ以上長く伸ばしてもホーンとしての効果が無くなる長さ迄作られたホーンを言います。それより短い長さのホーンは全てショートホーンと言います。

◎ホーンの広がり係数が同じでカットOFF周波数が同じであれば、長さに関係なくホーンカーブは同じ曲線になります。つまり、同一基準で設計しホーン効果の無くなる長さまで作られたホーンをフルサイズホーンと言いました。又、このホーンを基準に先端からスロート開口部に向かって切り詰めたのをショートホーンと言いましたが、
フルサイズホーンで、スロート側(ドライバーを取り付ける側)を切り詰めた場合は、ショートホーンでなく、この場合もフルサイズホーンと言います。

★円錐状のホーン(ラッパ形状)で例えますと、カットOFF周波数が300Hzで作られたフルサイズホーンを逆に先端側はそのままで、スロート開口部から徐々に切り詰めて行き、1.5インチのサイズになる所で切り詰めたホーンは、カットOFF周波数300Hzの1.5インチスロートのフルサイズホーンになり、2インチの位置で切り詰めた場合はカットOFF周波数300Hzの2インチスロートのフルサイズホーンになります。

◎カットOFF周波数が約4000Hzで作られたホーン(ツィーターのホーン等)は長さ数センチですがこれもフルサイズホーンと言います。高い周波数は一周期の波長が短い為、短いホーンでフルサイズにできます。

◎ホーンの広がり係数(1cm進む毎に開口面積がどれだけ増えていくかを決める数値)により同じ長さのホーンでもカットOFF周波数は変化します。広がり係数が大きい程、カットOFF周波数も高くなって行きます。

◎音離れを良くするため、広がり係数を複数(又はメーカー独自の計算式)用いて最近は開口面積が大きめで短めのホーンが増えてきていますが、やはり低域よりの再生は不得意の様です。それでも低域を出す為に、やはり大型化しています。


3.ホーンのフルサイズとショートサイズの音質について

◎フルサイズホーンはホーンとして理想の長さのホーンになる訳ですが、フルサイズと言うだけあって、カットOFF周波数が低くなるにつれて極端に大型化し長さも半端でない長さになります。そこで現実的な視点から考えられたのがショートホーンです。

◎JBL4343等の中高音に使われているストレートショートホーンはエンクロージャー(SP-BOX)に収まるサイズにし、左右の指向性を補う為、スラントプレートを用いたディフューザーを設けてあります。左右の指向性改善には効果がありますがホーン出口に障害物が有るので音圧も下がり歪みが多くなります。ハチの巣状のディフューザーも同様です。(当時のJBLとして指向性確保のための苦肉の策だった様です・・・今現在JBLは一切採用しておりません)

◎音質におけるフルサイズホーンとショートホーンでの大きな違いは再生される低域に質の違いが出てきます。
同じカットOFF周波数で作られたホーンはフルサイズでもショートサイズでもどちらも、カットOFF周波数域から同じ様にロードが掛かりはじめます。同様にカットOFF周波数の約2倍の周波数近辺でMAXに達しますが、安定したロードが得られているかどうかが、ホーン長による長さ(周波数の一周期分の波長と関係します)の差として出てきます。

◎フルサイズは自然l空間への放出がスムーズになる為、ロードが安定して掛かりMAX域になる迄の特性が滑らかでリニアに音圧が増加して行きます。

◎ショートサイズは多少の反射(ショートの度合いにより起き方が異なる)が起きる為、MAX域近辺に至る段階でフルサイズに比べてピークディップが生じ歪み易くなりますし、ドライバーに悪い影響を与えます。
(低域のロードが安定して掛かるまでの周波数ではホーン先端からの反射による干渉が起き、ピークディップを発生させていると言われています)

◎カットOFF周波数が300Hzで作られたホーンで例えますと、理論値でフルサイズではロードMAX(カットOFFの2倍)は約600Hz位から使用可能ですが理想は650Hz以上が望ましく、ショートではロードMAX(フルと同じカットOFFの2倍)迄に多少の暴れがある為、ロードにバラツキがでて理想は、約750Hz以上が望ましいです。(俗に言うホーン臭い音・・・エコーががかった風呂場の音みたいになります)

◎この違いが、フルとショートの違いですが、ショートの度合いにもより、極端に短いといくらカットOFF300Hzで作られたホーンと言ってもロードが安定する周波数は実際に計測してみないと判断できません。経験では約1/2程度の長さのホーンでは、カットOFF周波数の約3倍〜4倍の約1000Hz〜1500Hzの周波数からしか使い物になりません。

◎ホーンをショートにする事は、ある意味カットOFF周波数が上がるのと同じ理屈になります。JBL4344のショートホーン(JBL4343よりやや長い)は、フルサイズの1/3程度のショートサイズで、フルサイズまでホーン長を伸ばすと、カットOFFは300Hz前後のホーンになると推測しますが、JBLのカタログ上、ホーンのカットOFFは800Hzと記載されています。

◎ロードが安定して掛かった後は、同じ作りなら、フルも、ショートも同じ傾向の音色になります。ただし、高域まで広帯域に再生させるには、ホーンの長いフルサイズは若干不向きで、高い周波数(短い波長)はホーン内で干渉による高域の歪や減衰等の症状がで易くなります。

<導入時の参考例>
 @再生可能周波数:500Hzの1インチドライバーで約650Hz〜800Hz位から使いたい場合

◎低域を重視し650Hz近辺から使用するならカットOFF300Hzのフルサイズホーンを選択します。

◎中高域を重視し800Hz/-12dB近辺から使用するならカットOFF300Hzの2/3ショートホーンで十分です。


★低い周波数から使う場合はドライバーの推奨周波数と指定の減衰率を下回らない様に注意する必要があります。低い周波数はエネルギーが高く、ドライバーの能力を超える低い周波数や減衰率(-6dB/oct等)ではドライバを破損させてしまいます。

★いくらカットOFF周波数の低いホーンを用いてもドライバーの能力を越える使い方は厳禁です。又、いくらドライバーの低域再生能力が高くてもホーンのカットOFFが低くなければドライバーの性能を活かせません。


★ショートホーンでも極端に短いショートホーンではカットOFF周波数が低く設計されたホーンカーブであっても実質、カットOFFが高いホーンと同じになります。

★極端に短いショートホーンでは、低い周波数域での特性悪化しますので、カットOFFの約4倍〜5倍位の周波数からしか安定た使用ができません。

★最初から1500Hzとか1600Hz位から使うのであれば、最初から高目の周波数(カットOFF700Hz等)で設計されたホーンを選択した方が音質的に安定したロードが得られ、高域も良く伸びますのでトータルでバランスの取れた音色を出します。(カットOFFが高い方がサイズも小さくなります)

★弊社のショートホーンはフルサイズでは大きすぎる方(実は自分がそうでしたので・・・)を対象に、それでいて極力、安定した低域(約750Hz〜)も出せるサイズで尚且つ、広域をカバーできる理想のショートサイズを試行錯誤した結果、フルサイズの2/3の長さが一番バランスが取れて音色も遜色ない物になりました。なので弊社ではショートサイズホーンは全て2/3サイズで設計しております。(手前味噌ですいません)・・・(^◇^)



以上、経験から感じた事を記してみました。
読まれた方の参考になれば幸いです。