夢翔ける



凍てつく冬の向こうに
陽射しの春が
必ず来ると信じるなら


人は
ただ無心に
耐えることができるのだろうか


それがどれほど
おぼろげな明日だとしても


巡ることを
願わずにいられないのなら


この胸に仄めく熾火(おきび)は
決して熱を無くさない


いつかきっと
いつか


そう誓いながら
平穏で不毛な日々を漂い


ゆるゆると
虚ろな眠りに甘んじた


季節は数えきれないほど
周りの色を変えながら


それを眺めやる
私の居場所を変えてはくれない


いつまで待てばよい?
何を待てば?


答えを出すのは
自分なのか
天なのか


わからぬまま
それでも
あきらめることを
良しとせず


道を示す兆しを探し
世の動きをみつめた年月


見果てぬ夢、と
笑うのは誰だろう


まるで
現(うつつ)には存在しない
幻の霊獣を恋うように


私は
手を伸ばし続ける


届くはずだ


望みを
螺旋の如く
高みへ向わせ


足もとに忍び寄る
絶望など
何度でも踏み砕いてみせる


届かぬはずはない


きっとこの指先は
龍の抱く宝珠に
触れられる、と


そして


折り重ねられて行く
光と闇の帳(とばり)


数限りなく繰り返された
自問と達観の後


唐突に
その時は至り


驚くほどあっけなく
運命は
我が扉を叩く


穏やかな邂逅(かいこう)
胸を満たす確信


訪れし御方の
背の向こうに
道は
繋がった


長き混迷も焦燥も
門出の清風に霧散し


まさに
待ち焦がれた春
私は旅立つ


目覚めよ
我が心に宿る龍


白銀の鱗
黄金のたてがみ


凛とその眼を開き
遥か天上を見据えよ


蓄えし力のすべて
たわむこと知らぬ
大いなる志しを携えて


今こそ
翔け行かん
果てなき空へ


(壁紙素材)