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こしろさんへ感謝をこめて

   夢    路



夜毎 眠りにつくたび
わたしは異界へと迷い込む


それは渦巻く霧の林であり
あるいは青く揺れる水底であり
漆黒の闇に煌く星屑の間であり


果てなき広がりの中に
ひとり浮遊する心地よさ


わたしは眠りのうちに
さらに目を閉じる


これは
いずこへ続く道なのか


ここから
戻ることができるのか


わからぬまま
いつしか心は
深く沈み行こうとする


いいではないか
戻れずとも


精霊のごとく
永久(とこしえ)の時をさ迷い続け
この世の陰陽を見下ろせばよいと


冷ややかな思いに
陥らんとする時


ふいに
わたしを呼ぶ声


闇にたゆたう心を
暖かな手がつなぎ止める


人としてのわたしの名を
力強く響かせる声


人としてのわたしの存在を
知らしめてくれる手


おまえは
いったい誰なのだろう


遥か昔から
知っているようななつかしさ


おまえと共に在ることが
わたしの宿命を変えるのならば
確かめずばなるまい


だが目を開ければ
気配は幻と消え


わたしはただ
冴え冴えとした気を取り戻して
眠りの辻に立っている


不思議なほどのやすらかさ


ここからならば
帰りつける


夢のかけらを拾いつつ
浅い眠りに浸ればよい


わたしはまた
人としての朝を迎えることができる


そして
目覚めるたびに思うのだ


もう夢路に惑う夜を
怖れることはない


どんな異界へと落ちようとも
わたしを引き戻してくれる
おまえがいるのだから


おまえがわたしを呼ぶ限り
わたしは人として
この世の理に添って生きるだろう


それはなんと
楽しいことではないか


そしていつか
わたしの辿る夢路の話をしたならば


おまえは笑って
こともなげに言うのかもしれない


ああ、私も同じ夢を見たよと