― utage ―



終わらない宴はないのだと


知っていながら
誰もが浮かれて繰り出して行く


終わることなど
今は考えない、と


加速する高揚感に
ひととき酔いしれて


手を取り合い
肩を抱き合って
熱い輪の中にのめり込んで行く


弾ける歌声
地鳴りのような手拍子
踊り出す人の波


夜空には星をしりぞけ
轟音を上げながら
人々の目を奪う花火の競演


宴の中心は
まるで聖地のように
踏みこむことすら
許されないのだけれど


そこは
選ばれた人たちだけの
誉れある舞台なのだから


それでも


その周りに
数え切れないほど
幾重にも輪を描いて


銀河のように
ひしめきあって
煌きあって


人々は
宴の熱狂に浸る


こころを解き放して
からっぽになる愉悦を
思う存分味わう


目くるめく歓喜の渦の中
宴は最高潮に


灼熱の瞬間ほど
燃え尽きるまでは短く


待ち焦がれた日々のときめきは
火花を散らして
闇の合間に吸いこまれて行く


そして


いつしかそれは
容赦ない終焉へ


もうすぐ
この華やかな夜は明け


無情な朝日が
否応なく人々を
日常へと引き戻す


身体中の汗が冷えて
涙に変わらぬうちに


虚無感に追いつかれて
しまわぬうちにと


誰もが
答えを求めて空を仰ぐ


終わらない宴はない


ならば
終わらない夢は?


昇華しきれない
こころの熱を
どう繋いで行けば
夢の続きが見られるのか


強い想いで
真摯な祈りをこめて


さあ
探さなくては


新たなる陽が昇る


もう限られた酔いに
頼ってはいられない


次の宴は
手探りで辿り続ける
夢の先に待つのだから


踊り疲れた足を
見下ろす切なさを


歩き出す勇気に変えて
人々は家路へ向かうだろう


惜しみない拍手と共に
閑散とした舞台を
後にするだろう



万感をしめやかに
夜の底に沈めて