ぽつんと
置き去られた鳥かご


ここから見える空は
私に自由をもたらしはしない


飛べないことの哀しさを
私に詠わせるために
あんなにも美しく
果てしなく広がっているのだろうか


私の翼はもうひ弱ではない


風を得れば
どこまでも羽ばたき
人々の希望を担うことができる


だからこそ


わかるのだ
私の自由は望まれていない


私を鳥かごから解き放つ手は
そのまま
私の運命を握りつぶすのだろう


こうして
空に焦がれつつ
哀しみの歌だけを詠うのか


誇りすらも投げ捨て
ひれ伏すくらいなら


いっそ
運命に逆らい
自ら死地に飛び込もうか


呪縛を振り切り
鳥かごから逃れ


力のかぎり
翼をはためかせ


空よ


一度だけでも
私を受け止めよ


私は絶望などしない


たとえ
光の梯子がはずされ
足元の望みが費えても


静かに微笑み
最後の歌を詠おう


人の命などはかないもの


でも
残された歌は
私の思いを抱いて
いつか人に伝えられ
誰かの胸に宿るだろう


私の生の証し


夢見た空や
吹き抜けた風や
この手が触れたすべて
この心に去来したすべて


そんな歌を詠うために


哀しみだけではない歌を
残すために


私は羽ばたく
幻の白い翼で