佇む者

                               ― 節制 《Temperance》 ―


静かなる流れ
たゆたうことなく


過去から現在へ
現在から未来へ


今 ここに存在すること


おおいなる時空(とき)の中の
それはほんのひとこま


その一瞬に
何を見て
何を聞き


どう触れて行くのか


人は
生まれつづけ
消えつづけ


何を残して行くのか


命あるものは
その儚さゆえに美しく


より輝かしくあるために
魂を鍛えんとする


願うものは何なのか
在るべき場所はみつけたか
本当の価値を知りえたのか


弱き者は
知恵の迷宮にて
堂々巡りに陥る


清らなる流れよ


メビウスの輪にも似た
この迷いを
気づかぬうちに積りたる
心の曇りを


鏡を磨くごとく
洗い流せ


辿りつく真実が
どうか
わたしを失望させぬよう


生の歓びを
静かに感受できるよう


とどまらぬ時の河に
つま先を浸しながら


わたしは
水音に耳を傾ける


さらさらと
かすかなささやき


まなざしを汚すなかれ
こころの闇に溺れるなかれ


清浄なる光のもと
ゆるやかに微笑みて
佇まんことを