竹の秋



むせ返るほどの万緑
青々と山を覆い尽くす
生命力の只中で


ふと
枯れ色をまとう
一群れが目に留まる


まっすぐ天に伸びながらも
黄色く色褪せ始める
数知れぬ竹の葉


それは
風薫る季節の中の
ひそやかな竹の秋


落葉樹たちが
裸の枝を寂しげに晒す
そんな冬にさえ


しんと静かに
緑を保っていた竹林


凍るような雨に打たれても
雪の衣に埋められても


変わらぬ色のまま
耐えていた竹の葉たち


やがて春
あちらこちらで
やわらかな若葉が
萌え始め


さらに色濃く
たくましい緑に変わる中


まるで
秋の黄葉に
なぞらえるように


竹の葉たちは
枯れ行こうとしている


さやさやと
葉擦れの音を奏でていた
数多の竹は


ようよう
役目を終えたと言うように


ひととき
緑を手放そうとしている


溢れるほどの色彩の中で
どこか侘しくすら見える
朽葉色の竹林


ほどなく
はらはらと


風に流され
降りこぼれるであろう
竹の黄色葉たち


けれどおそらく
その眠りは短い


新しき竹の葉は
散る側から
命を持ち始め


夏の陽射しが強まる前に
緑美しく
本来の姿を取り戻すだろう


時はたゆみなく進み
自然は順序立って
再生の営みを繰り返す


枯れては生まれ
散っては芽生え


緑は
それぞれが
定められた暦の中で
大地を彩り続ける


人の手の及ばぬ
健気さを持って


だから
今はそっと
見守ろう


春から夏の
短い合間


空に俯く
枯れ色の箒にも似た


竹の秋の
佇まいを





※ 竹の秋・・・5月から6月、竹の葉が黄葉して落ちて行く現象を言う。



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