水彩画



君の肩に
風を見ていた


季節のうつろいを
すいっと軽やかに超えて


新しい陽射しの中へ
とん、と背中を押してくれる


枝々に憩う木の葉たちが
鮮やかに色づくより早く


このこころの方が
君の投げる微笑みに
染まってしまいそうで
薄紅に


だから


君を包むように
淡く吹く風は


きっと
わたしのため息に違いない


君の肩に
雨を見ていた


名残の暑さを
ひんやり静かに冷まして


渇きに慣れた大地を
潤いで目覚めさせてくれる


開きかけた秋の花たちが
銀の雫で飾られるより早く


このまなざしの方が
君の差し伸べる手に
揺れ落ちてしまいそうで
水色に


だから


君に馴染むように
あえかに降る雨は


きっと
わたしの涙に違いない


足を止めて
振りかえって


目を閉じて
つかまえて


風よりもやわらかく
雨よりもしなやかに


ひたひたと満ちてくる
この想いのすべてを


幾重もの薄衣(うすぎぬ)のように
こころにまとって
君の前に立ってみたいと


願って
微笑みかえせば


頷いて
指先に触れれば


ほら


君の鼓動に
辿り着ける


秋の吐息の中で
透き通る空の下で


君と見る世界は今


滲むような
水彩画になる


(壁紙 PIPOさん)
『吹く風と草花と』