東  雲



薄雲の端々を
金色に彩りながら


今まさに
陽は登らんとす


悪しき夢は
霧が晴れるごとく
白々と光に浄化され
足元の露と姿を変える


淡い空の色に
うっすりと輝きが混じる時
もはや怨念の名残すら
留まることはできない


なんという清々しさ


夜毎私を待ち受ける
さまざまな呪詛との戦いも
過ぎ去れば夢寐のまぼろし


ほつれた髪を撫で付け
冴えた微笑みを取り戻して
歌のひとつも口ずさもう


書を読み
庭を眺め
心地よい微風に
うたた寝して


つらつら過ごしているうちに
いつものように
戻り橋を渡り
友が訪ねてくるだろう


極上の酒と美味なる肴を
さりげなく用意して
待たぬふりにて待つのも楽しきこと


暁のまぶしさにも似た
おおどかで純粋なる我が友よ


瑞雲を呼ぶ君の笛が
むしょうに聞きたくなる時がある


ああ
切なさもまた
人のこころの不可思議なのだ


儚き浮世なればこそ
つかの間のやすらぎに


ふわり酔いしれて
語り合おうではないか