線香花火



その華奢なこよりの先に
火をつける時


なぜだろう
願い事をとなえるように
息をつめてしまう


ジジッと
上がってきた火は


見る間に
透き通った赤い玉になる


ほら
もう すぐだよ


無邪気なまなざしに
うながされ


シュッ シュッと
小さな星たちがはじけ出す


初めはかすかに


そして次々と
星はその輪を広げ


ひそやかにさざめき
重なっては消える


消えては生まれる


きれいだね
揺らさないで
そうっと そうっと


こよりは細く
たよりない


気がつくと心の中で
やはり祈っている


終わらないで
まだもう少し

 
みつめるその先


ぽとっ


つかの間の光が落ちる
ため息もこぼれる


ふと
目を上げれば満天の星


ちらちらと
銀砂を敷き詰めた天の川


夏の夜はいつも
そこはかとない懐かしさと
名残惜しさを紡ぎながら


さやさやと
過ぎて行くから


さあ
次の線香花火に
火を点そう  


もう一度
願い事をとなえるために  



<壁紙素材>