流水花

              

なぜ
女は自分の望む場所に
咲くことができないのでしょう


人の手によって連れ去られ
根をおろした場所に咲く


それが宿命(さだめ)なら


愛する人に
夢をゆだねることなど
叶わないと言うなら


       いっそ心など          
硝子の河に流してしまおう


あの方に傾いて行くこの想いを
冷たい流れの底に
永遠に封じ込めてしまえたら
これほどつらくないのに


わかっています


女は誰もが
たどり着いた岸辺で
頼りなげに揺れる花


誰かの手が
いとおしんで守ってくれるとは
かぎらないから


どんな場所にでも
しなやかに馴染み
より美しい花を
咲かせるしかないのでしょう


お母様
あなたもそうだったのですか?
                        

なにものにも囚われず
神の声を聞いていたあなたでさえ
運命は容赦しなかった


それでもあなたは
すべてを乗り越え
やわらかいほほ笑みを身につけた


わたしにも
できるのでしょうか


あの方を忘れられる日が
くるのでしょうか


わたしは
こんなにも揺れ惑ったまま
流されようとしている


自ら散ることすら許されない
哀しい花なのです