凛然と



時は乱世


男たちは己が勇を持って
あるいは知略を活かして
信ずるもの 欲するもののため
戦いぬいて行く


その先に待つものが
光であれ破滅であれ


持てる力を出しきれるのは
幸せなこと


ならば女は
何を頼りに 何のために
生きればよいと言うのでしょう


ただ男たちの思惑のまま
流され操られる人形?


美しく着飾り 胡弓を手に
なよなよと
宿命(さだめ)を嘆き歌を口ずさむ


絹にくるまれた牢獄のような部屋で
ただあてもない望みを
ため息ごと散らす日々


いいえ
そんな生き方
わたしはいや


女とて弓も引きます
剣も使えます


思うさま生きるための戦いを
最初からあきらめたくはない


誇りを傷つけられたなら
白刃を抜き放ち
ひるまずに立ち向かいましょう


たとえそれが
夫と決められた御方でも


大切かどうかは
この心が決める


もとよりわたしは
他国の花嫁


誰もが
天にひとりの君主を
夢みていることこそが
乱世の証し


明日の運命など
空の様より気まぐれなのだと
心得ています


けれど
わたしは俯いたりしない


あでやかな花嫁衣裳は
この身を固める鎧


付き従う女官たちは
忠実な兵士


花の変わりに
細身の剣を手に


雄々しく顔を上げて


わたしは
見知らぬ国へと嫁ぎます


わたしの夫となる御方が
どれほどの器か
この目で見定めさせていただきます


生まれ育った呉の国のため


そして
わたし自身のため


今こそ
勇敢な武将の心を持ちて


わたしは
わたしだけにできる
孤独な戦いに臨みましょう


(壁紙 PIPOさん)
『吹く風と草花と』