連  理

                        ― 中大兄皇子に捧ぐ ―


わたしの持つ
宿命のすべてを
貴方の手にゆだねましょう


わたしの存在が
貴方の盾となるなら


どんな場所へも立ちましょう
誰のもとへでも行きましょう


たとえ
人形のように
飾られているだけでも


それが貴方を守る術となるなら
虚しさになど負けない


けれど


どうか
覚えていて


わたしのこころは
この想いだけは
誰にも操らせはしない


誰にも触れさせはしない


わたしを戒める鎖が
重ければ重いほど


こころには
軽やかな羽が生えて


ただひたむきに
貴方のもとへ
飛んで行くでしょう


禁を破ることなど
怖れはしない


神の罰も
人のそしりも


わたしが囚われている
焼けつくような想いに比べたら
何ほどのものでもない


ふたつの枝が
互いの手を求めて
空を目指すように


魂はいつでも
貴方のかたわらで
微笑んでいるから


抜け殻のわたしの涙など
どうか気にとめないで


望んだ路を揺るがず歩く
そんな貴方をみつめることが
わたしの誇り


いつか
遥かな雲の上で


誰にも憚らず
手をとりあい


ふたり
ひとつの枝になりましょう




※ 連理  ・・・ 根が別々の二本の木の枝や
幹が繋がり木目が一つになったもの