白藤
なだらかな 山間の路
深い緑の葉陰に
ぽっかりと 浮かび上がる
遠目にも彩な 白い一群れ
あれは 何?
目をこらして 近付けば
重たげに 首を垂れた
たわわな 花房
自分のものではない枝に
からみついたまま
美しい?
たよりなく 風を受けながら
ひそやかに でも艶然と
蝶のような花びらを 揺らす
そう 美しい
豊かでありながら
どこか はかなく見えるのは
その 清雅な白のせい?
また かすかに 房が揺れる
今度は 自嘲するように
誰かの腕がないと
生きていけないと
思ってるんでしょう?
そうやって 咲くように
運命づけられた花
誰のせいでもなく
ひとりでも
咲いてみたいけど
一陣の 強い風になぶられて
花は かぶりをふった
その細い蔓を 別の枝に
まきつけたまま
はらり はらり
抗うことも できぬまま
小さな花弁が
こぼれ落ちて行く
ひとりで散るのは
寂しすぎるから
かすかな ため息の
気配とともに
花はうつむく
美しいよ とても
たとえ どんな形で咲こうとも
その 頬は きっと
なにものにも 染まらない
立ち去る前に もう一度
思い惹かれて 振り向くと
緑の葉陰に
哀しいほど きわやかな
白があった