霧 幻
流れる
流れる
しめやかな霧が
紗をかけるように
漂う
漂う
密になり
まばらになり
沈黙する樹々は
やすやすと
そのふところに
抱かれ
なんて
なめらかに
かすんで行く 緑
沈んで行く 梢
ここには
まるで
太陽も月も
存在しないがごとく
ただ
蒼白く淡い空間に
時は
ゆるく忍び入る
そのおぼろげな
水の気配
形のない扉の向こう側
そっと瞳を凝らし
耳をそばだてて
うかがえば
まぼろしの森は
ひそやかに存在し
さわさわと
わたしを手招く
霧の匂いに
つつまれて